受給成功事例

請求困難なケース、不服申し立てにより受給に結びつけた事例を紹介いたします。すべて当事務所で私(髙橋)が取り扱い、受給決定を得た事例のうち、参考になる情報提供となります。新規裁定、額改定、再請求、支給停止事由消滅から、審査請求、再審査請求の難事例も含んでいます。圧倒的に多い精神疾患から、肢体、各種難病、内科疾患にいたるまでカバーしています

社会的治癒の援用問題(審査請求、再審査請求を経て原処分取消し2級受発)

県内60歳代。社会的治癒は、医学的に治癒しなくとも、長期の病歴経過中に寛解状態を経て、社会復帰を果たした後に再発した場合の手続において、古い初診日の医証記録が入手できなくなった場合に、再発初診日を認める取り扱いのことを言い、年金被保険者の受給権の保護を図る社会保険審査会判断です。したがって、保険者が受給権の否定のために援用してはならない趣旨のはずですが、今回の事案では、受診証明により古い初診日が入手できているにも関わらず、わざわざ未納の再発初診を使って不支給処分を下す、とんでもない裁定に遭いました。なぜ、国はこんなことをするのでしょうか?到底、受け入れ難く不服申し立て。2年がかりで2級の受給権を取り戻しています。いつものことですが、国は原処分の誤りによって請求人に多大な苦痛を与え、年金を支給してこなかったことについても利子もつけなければ謝罪もありません。

アルコール乱用の混在で認定不能(審査請求、再審査請求を経て原処分取消し)

県内60歳代。上記、社会的治癒と同一案件。障害認定基準ではアルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害についても、症状性を含む器質性精神障害として認定するものと規定し、当該障害と他の認定の対象となる精神疾患が併存するときは、併合認定の取り扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して「認定する」と定めている。つまり、複数の対象精神疾患の「混在」は分離認定することなく(出来るわけがない)、総合認定するところ、一方の影響があって認定できないとする詭弁的不作為で却下処分を出してきました。社会保険審査会では「主治医の意見書からもアルコールによる酩酊状態で認定できないような事情は見当たらない」と断罪、原処分は相当ではないと結論づけました。アルコール依存症はこれまでも2級以上で認定されてきているところですが、「混在」に関しては同様の却下処分となることが多く、この審査会の判断は参考になるものと思います。

給付制限に挑む②(禁止薬物・審査会公開審理前に処分変更、2級で受発)

故意の犯罪行為による障害の自己招致については、給付制限規定があり、その全部または一部を行わないこと、すなわち、年金を支給しない取り扱いがあります。たとえば、成人が覚せい剤を習慣的に使用して精神障害を来たし、なお、療養上の指示を聞き入れず使用するようなケースに障害年金を支給すべきか、ということです。このような場合には支給しない給付制限もやむなしと考えられると思います。いっぽう、未成年者等の好奇心からくる禁止薬物使用から精神障害をきたした場合はどうでしょうか?禁止薬物の摂取、吸引で将来、病気になっても障害年金をもらえなくなるかもしれない、などと学校教育で教えてくれたでしょうか?そして、このような未成年等の好奇心から禁止薬物に手を染め、精神障害を引き起こした可能性があるときにも、年金を支給しないという厳罰的給付制限が必要でしょうか?知らなくとも自己責任を持ち出す国です。薬物から立ち直ろう、社会復帰して自立した生活を取り戻したいと思う者には障害年金を与えない方がよいのか?このような問題意識から引き受けた案件があります。過去の自力請求は給付制限により不支給。しかし、薬物と精神疾患との相当因果関係を否定して受給権が発生した裁決も過去にあった(平成25年(厚)第48号)ため、請求傷病と薬物との因果関係はないこと、因果関係があったとしても受給権を発生させない厳罰的給付制限が行政裁量として適切ではないこと、この2点を主張して保険者は原処分の誤りを認め、受給権が2年前に遡って発生しています。この処分変更は令和3年2月10日、この後3月4日に厚労省から「年管管発 0304 第6号」通知が発出されています。すごいタイミングでした。

就労を理由とする不支給処分に物申す②(公開審理前に認定日3級で処分変更)

県外50歳代。精神疾患で相当期間遡って請求する場合、障害認定日以降請求時点までの間に厚生年金被保険者期間を有する場合があります。気分障害の場合、年金加入記録を見ますと軽快と再発と連動して就退職を繰り返す経過から、短期の厚生年金加入期間と国民年金加入期間を交互に繰り返す特徴的な被保険者期間となります。保険者はこの厚生年金加入期間の存在を症状が回復した等級不該当期間として捉え、障害認定日での受給権を発生させない(不支給)処分をしてくることがあります。年金記録上の厚生年金加入期間は会社に在籍していれば休職中でも欠勤していても障害者雇用でも継続するものであり、必ずしも軽度となった障害の状態を示すものではないことは明らかなのですが、遡及請求の受給権を奪われることがあるので注意が必要です。今回取り扱ったケースでは請求時点で2級になっていた方の遡及部分が過去の就労によって不支給になったことで、不服申し立ての支援をしました。就労の事実を以てただちに軽快したものと捉えてはならない、と障害認定基準では定めていますが、これを定めた保険者自ら禁じ手を使ってでも受給権を奪ってきたわけです。年金加入期間で障害の程度が分かるなら医師の診断書も要らないのではないでしょうか?そう感じるほど認定の事務は恣意的乱用が目立ちます。結局再審査請求までもつれ、処分変更となり遡及支給となりました。

給付制限に挑む①(交通事故に起因する高次脳機能障害)

県内60歳代。初診は昭和40年代の交通事故で無免許運転。親族による第3者申し立て。初診日が認められても給付制限(国年法70条)を受けるのではないかと思われたが、過去に同様の社会保険審査会裁決(H22国566号)があり、争点化しても認められる見込みで再審査請求の長期戦も覚悟していたが、新規裁定で認定された。

精神遅滞、老齢繰り上げ後の70歳以上で障害認定日請求(請求困難事例)

県内70歳代。繰り上げ後の老齢年金受給中のため障害年金の請求方法は障害認定日請求に限られている。平成3年頃よりうつ病の病歴があり、平成29年頃より主治医の交代で精神発達遅滞への診断名変更となる。精神遅滞となると発病・初診は出生日扱いとなるため、保険者は認定日請求するなら20歳(昭和40年代)の診断書を要求、実質的に請求不能の状態となって当職へ依頼される。主治医も診断名の変更はないため、代理人による意見書を整備した。趣旨としては、精神発達遅滞を背景に二次的にうつ病を発症しているものの、診断名が変わる前に投薬を受けた病歴の大半がうつ病であり、制度を知っていればうつ病での請求も可能で早期の受給が可能であったことを鑑みれば、診断名が変わったっことのみをもって請求不能なまでに制度上の請求制限を被ることは著しく公平性を欠いている点を申し立てた。こんなことでもらえなくなるのも気の毒ですよね。結果、精神発達遅滞の請求傷病で、うつ病の認定日より2級で受発し基礎は障害に裁定替えとなる。

納付要件を争う(審査請求・再審査請求を経て容認・5年遡及支給)

県内30歳代。自力請求に及んだが、納付要件を満たさず請求却下。納付要件は障害年金請求の入口にあたるため、通常このような問題は浮上してこない。受付けや相談の段階ではねられてしまうからだ。今回はじめて扱ったが、潜在的に不利益を被るケースはないだろうか。
言わずと知れた納付要件とは、初診日前日までに規定の年金保険料が納付されているか、免除等の認定を受けているかが、問われる。このケースは、被保険者期間わずかに2ヶ月。3分の2を満たすには100%納付が求められる。20歳直後の特殊な事情もあり、正規の納付ができなかったが、実質的に納付要件を満たしていた。厚労大臣が指定した期間につき納付する、この規定と、実質納付のどちらを採用するのか。期待していなかった一審目は、原則通りの判断しかできない社会保険審査官の決定で棄却。二審目。再度、実質納付を訴える。そう、初診日前に必要な保険料は実質納付されていたのに、法規定をタテに年金がもらえないのでは、何のための年金制度なのか。素朴な国民目線からの疑問を公開審理でぶつけた。保険者は退けて当然といった反論だったが、審査会は当方の意を十分に汲んだ裁決となり、原処分取消し、通常裁定から5年遡及支給決定を克ちとる。

法的にも一切の例外を認めていないとされ、参考となる裁決もなく、周囲の社労士にも受けて立った人を見なかった。事前情報では、圧倒的に不利で誰もうけない事案だと揶揄されたが、終わってみれば、極めて常識的な判断で決着。社会保険審査会の良心を信じて戦いたいと思います。

繰上げ老齢基礎年金受給者の糖尿病での請求(請求困難事例)

県内60歳代。60歳で厚生年金報酬比例部分を受給、61歳前に老齢基礎年金を繰り上げて受給していた人。老齢年金を繰り上げて受給しますと、障害年金は請求できないかのような案内が多く見受けられますが、誤りですから注意が必要です。事後重症請求など制限を受ける請求方法は確かにありますが、初診日に被保険者である人の本来請求(障害認定日請求)や、繰り上げ請求より前に障害年金の受給権が発生する本来請求であれば、将来の年金の増額ばかりでなく、繰上げ後であっても遡及した差額受給も可能となります。いっぽう糖尿病は、重篤な合併症が出現するまでは自覚症状が少なく、事後重症請求となることが多い疾患です。この方の場合、請求が認定日請求しかできないところへ、糖尿病という疾病の特性のために、事後重症しかできないジレンマ、相談機関の説明誤りなどで何度も請求意思を撥ね付けられていました。「まだ諦めないのか?」。相談機関からの心無いこんな一言も。古いカルテが処分され、医療機関では発病、初診日を不詳とした。記憶のみでは治療歴が混乱し、請求が立てられないため、残ったカルテで把握しうる治療歴をまとめ、代理人申し立てで、カルテ上判断しうる初診日で審査書類を整備。請求却下も覚悟していましたが、結果、障害基礎2級で受給権が発生し、しかも請求時診断書で額改定が行われ1級に。5年分遡り差額の発生と将来の1級年金をもたらし、65歳以後の組合せ年金も大幅増額となり、糖尿病で2級を目指すのが困難な認定日請求で、これ以上ない結果を導くこととなりました。

額改定請求で据え置かれた等級を争う(審査請求・処分変更)

県内50歳代。障害年金を受給してる人は、障害の程度が増進したときには年金の増額(等級)改定をすることができます。難病の治療の結果として肢体障害の出現した方で、下肢障害がもともと3級相当でしたが明らかに増進したため、改定請求しましたが、等級を据え置いたばかりでなく永久認定(今後の増額改定を認めない)とする処分に。診断書上は筋力低下が顕著で、そのことによる日常生活の援助負担も増加した記載になっていました。審査請求に持ち込み、保険者側の判断を質し、原処分まで遡って2級認定に導きました。

悪性新生物(ガン)での請求で初診日を争う(審査請求・処分変更)

県内50歳代。初診日とは本来、請求傷病と因果関係のある自覚症状に基づいて受診し、治療を開始した日、検査結果から発病が確認されてから治療が開始された場合などは、その開始された日などが該当します。今回取り扱ったケースでは、検査日から4年後の確定診断の日で初診日を申し立ててきましたが、保険者側はなんと、良性で治療の必要もなく経過観察となった初回の自主検診の日が初診日であるとして、不支給処分を出してきました。初診日の本来の定義からは逸脱した日であり、納付状況からも受給できない闇へと押し込む許せない決定です。審査請求に持ち込み、保険者側の判断を質しました。保険者側は判断の誤りを認め、障害基礎年金2級事後重症で決定。

記憶にもない初診日を申し立てる(S32年初診日)

県内60歳代。先天性関節疾患。関節の発育不全があり、それがもとで歩行障害となっていた。幼少期に手術があったことは術痕のみでしか知ることができない。身体障害者手帳取得のため受診した直近の診察以外、公的私的含め一切の医証記録はない。すべて記憶にもとづく本人申し立て内容から請求を組み立てた。40年以上前の記憶のみに基づく第3者の申し立て、50年以上前の1年遅れの小学校卒業証明、現在の画像診断、代理人意見で考えうる初診日を申し立てた(治療方法等から合理的に推認できる年齢到達年末初診日)。審査遅延もなく障害基礎年金2級事後重症で決定。

就労を理由とする不支給処分に物申す①(審査請求・処分変更)

県内30歳代。精神障害で障害基礎年金(国年法30条4)請求したものの不支給処分。不服申し立てのご依頼。医師の記載した診断書の内容は、就労が困難な記載があり十分2級に到達していると思われた。精神障害の方の就労は、寛解していなければ、生活費をえるための焦りや症状の波状的な出現により継続した出勤が困難になり、退職に追い込まれて短期の雇用を繰り返すことがよくあります。この傾向は等級認定に際して考慮されるべき事実と考えられますが、驚くべきことに障害状態認定調書(国の審査結果の根拠)を開示すると、不支給理由に「就労しているため」との記載がありました。認定基準やガイドラインで「就労をもって直ちに軽快したものと捉えてはならない」、と明文化している基準を国自ら骨抜きにしているわけです。勤務先事業所の勤務状況についての申し立てを提出、保険者自ら誤りを認め障害基礎2級決定。黙っていれば泣き寝入り、確信犯的な原処分ですが、こんな決定に黙って従っていてはだめです。

精神疾患による障害(不利益・不本意受給の是正)

県内30歳代。医療機関相談員より。受給中の障害基礎年金を遡及して障害厚生年金で請求しなおす。厚生年金加入中の初診だったにも関わらず、当時かかっていた医療機関の相談員が20歳前初診で代理請求をして障害基礎年金2級を不利益・不本意受給していた。カルテを開示すると請求傷病と違う診断、治療が行われていたため、基礎取下げ、厚年再請求の申立てをした。遡及して受給権が確認され、障害基礎年金から障害厚生年金へ時効にかからない分は上乗せ分のみ支給、かつ今後の年金は障害厚生年金となる。決して諦めない、展開力が違います。

難病による障害で再請求(認定困難な4疾患・給付指2012-71、給付指2012-125)

県内30歳代。障害基礎年金の裁定事務は現在、東京の障害年金センターで一括審査ですが、以前は都道府県ごとに行われていました。希少難病ですと実際の患者でも診断書上でもみたことがない都道府県認定医が等級を決めることになり、請求者は日常生活上も著しい支障がありながら都道府県裁定で等級不該当、障害基礎年金を支給してもらえませんでした。東京一括審査となり患者数も障害年金請求数も多い中で再請求しました。より客観的で公平な審査を求めての再請求です。ほぼ同一内容の診断書で再請求。結果は障害基礎年金2級で認定。同一の基準の運用なのに等級が分かれることがあります。諦めないこと、寄り添って展開します。

視聴覚障害障害(再審査請求・容認裁決により逆転受給)

県内50歳代。ウエブサイトより相談。新規裁定請求では不本意にも症状固定をとられ、年金ではない一時金処分となり、足元を掬われた。審査請求では追証を一顧だにせず棄却、再審査請求へさらに不服申立てに進む。社会保険審査会公開審理では直前に準備した書面により一転して追い風。審査請求時の追証は正しく証拠採用され、保険者側は苦しくなった。公開審理後も代理人として保険者側と協議、さらに追証を整備してついに原処分取り消し(容認裁決)を勝ち取る。障害厚生年金3級取得。

脳血管障害による複数障害の併合(審査請求・原処分変更により2⇒1級へ)

県内40歳代。日曜相談室。肢体麻痺と重度失語症があり、障害認定日、請求日現症ともそれぞれ2級相当の障害の程度だった。しかし、障害認定日現症に関し、肢体の可動域および筋力測定がなく、診断書には反映されていなかった。そのため、障害認定日未到来時点の身障者手帳の診断書を参考資料として添付したが、保険者側で認めないため、肢体の受発が請求日現症のみとなっていた。認定日2級、請求日1級の原処分。肢体障害の受発を障害認定日から2級認定するよう、不服申立て(審査請求)。保険者に質問できるようになりましたが、現状保険者は出席してきません。書面での質問も却下されましたが、社会保険審査官より原処分変更(保険者からの自主的変更)の通知があり、遡って認定日から併合1級を克ちとる。

眼疾と肢体障害の併合(「初2」請求による)

県内50歳代。ウエブサイトより直電。等級に該当しない2つの障害を同時に請求し、併せた障害の程度による認定で障害厚生年金1級認定(厚年法47条の3)。この場合前発障害に関しては初診日要件は不問。無期限キャンペーンを展開している障害年金専門を標榜するコンサルは請求できない、などと案内していたが、あきらめず当サイトに相談していただいたことで受給に繋がった好支援例。

今回ご紹介の事案以外にも請求困難案件、不服申し立て案件を受給に結びつけています。諦めずにご相談いただき、展開できるかどうか考えていきましょう