不服申し立て

はじめに~不服申し立てとは?

障害年金がもらえるかどうかは、請求時の診断書等の書類に、請求人自身の障害の状態が適切に反映されるよう整備されているかどうかにかかっています。不支給となったことについて思い当たることはありませんか?診断書が病院で封筒に入れられて糊付けされたまま受付に出すなど、もってのほかと言わざるを得ません。初診日をきちんと申し立てられない、はじめから自身の障害の状態が反映されていない(等級に該当していない)診断書では、障害年金は支給されませんし、不服を申し立てても認められることはありません。この場合は再度、事後重症請求を立て直したほうが賢です。受給成功事例でどのような点が争点になっているか確認してください。

審査請求

審査請求は、障害年金請求等に対する保険者の決定(原処分)内容が不服である場合、関東信越厚生局社会保険審査官に対して、原処分の決定が相当なのかの審査を請求するもので、白黒つける裁判(一審目にあたります)に似たところがあります。障害年金を請求した場合、想定した等級で受給できればいいのですが、様々な理由で結果が得られないことがあります。初診日が確認できないために、あるいは障害の状態を確認できないために等級審査できない(請求却下)、障害等級に該当していないため障害年金を支給しない(不支給処分)、決定等級に対する不服(2級相当と見込んだ等級が3級決定だった等)、これらの複合型(請求時の障害の程度は認定されたが、遡及部分が認められなかった)などがあげられます。

審査請求書の入手

年金事務所の窓口で請求すれば入手できます。厚生局のホームページからもダウンロードできます。審査の元になった診断書等の控えを手元に残していない場合は、この時に写しを交付してもらいます。

何を書くのか

認定基準に照らし、原処分に対しての反論を、診断書や受診状況等証明書、病歴就労状況等申立て書から、具体的な証拠を指摘しながら展開します。必要に応じて、診断書記載医師より記載内容についての意見書等を出してもらい、参考資料として添付します。ただ、「障害のため働けず生活に困窮しているから年金を支給してほしい」といった内容を記載しても、全く相手にされません。

流れ

請求人からの審査請求が受理されると、社会保険審査官は保険者(年金機構)に対し、審査請求の通知とともに原処分の妥当性について保険者意見を求めます。保険者側は再度認定経過を見直し、社会保険審査官に結果を通知します。ここで保険者が原処分の誤りを認め、新たに処分を決定する(原処分を見直す)ことになるのが所謂「原処分変更」です。社会保険審査官から請求人(代理人)に審査請求の取り下げの打診連絡が来ます。3~8ヶ月を要しますが、原処分により受けた苦痛や不安に対しては何ら謝罪や補償はなく、ただ、「争点はなくなったから審査請求を取り下げろ」というのが「処分変更」の姿です。厳密にいえば審査請求の手前で処分が変わるものですが、請求全体の1割程度は処分変更があると言われています(実績非公表のため確認出来ず)。
いっぽう、保険者意見が原処分は妥当であるとの結果になれば、ここではじめて社会保険審査官は両者の主張から原処分取り消し(請求容認)、審査請求棄却の決定を出します。厚生局で公表されている統計からは、現在の裁決の傾向として厚生年金、基礎年金とも、社会保険審査官の判断は保険者意見にほぼ追従で、容認裁決はほとんどありません。審査官は厚労省職員から任命されているので、この結果をみれば、身内が身内を裁く限界が露呈していると指摘されてもやむを得ないところです。従いまして、二審目にあたる社会保険審査会までの審理を見通した申し立て(審査請求書・再審査請求書)を整備していく必要があります。
社会保険審査官の裁決で原処分が取り消されない場合は、引き続き厚労省の社会保険審査会へ再審査請求(二審目)をすることができます。

再審査請求

再審査請求は、審査請求で棄却決定となった場合に、厚労省に設置された社会保険審査会に対して、引き続き不服を申し立てるものです。審査会は裁判所長、医師、社会保険労務士等の審査委員6名から3名ずつの部会で構成され、合議により審理されます。また、原則として公開審理が行われるため、請求人(代理人社労士)、公益代表の人(参与)もこの審理に参加できて、直接、審査委員や保険者代理職員、保険者側医師に対して意見陳述ができます。

再審査請求書の入手

審査請求した際に社会保険審査官から送られた決定書を手元に置き、厚労省保険局総務課社会保険審査調整室へ電話(03-3595-2554)して、再審査請求書を送ってもらいます。厚労省のホームページからダウンロードすることもできます。

流れ

社会保険審査官の決定書で争点を確認します。審査官も針小棒大で印象操作的な記載をすることにより争点を避けたりすることがあります。再審査請求書には、「請求の趣旨および理由」を選択する箇所があります。事案にもよりますが、当職では審査請求時と争点が変わらない場合でも、別紙で審査されていない争点をあらためて提案した上で整備して、「2」を選択しています。
再審査請求は受付けから公開審理まで6~8ヶ月を要します。受付後の流れは審査請求時とおおむね同じです。追加意見を準備できる時はその度に提出します。公開審理の案内が郵送されますが、この日程は変更できません。

公開審理

公開審理直前に控え室で保険者意見書が配布されます。この内容は必ずしも審査請求時のものと同じとは限りません。こちらの申し立てを意識した内容となっていることが多いので、あらたな指摘がある場合には、控え室で反論する意見を数分でまとめます。審理に呼ばれますと、事件の確認の後、参与からどちらかの立場に則した参考意見がでます。また、委員から質問がむけられることがあります。あらかじめ請求事件の内容をきちんと理解しておき、的確に回答します。最後に審査長から意見陳述を促されます。意見陳述の時間は数分程度ですので、書面でまとめておくこと慌てることがなくてすみます。

裁決書

公開審理から2~3ヶ月後に送付されます。原処分が取り消されますと、こちらの主張が認められたことになります。


※審査請求等のご依頼をいただいても原処分の理由・内容により代理をお引き受けできないことがあります。

初めの請求での診断書等がきちんと整備されていないと審査請求では勝つのは困難です。当事務所では再審査請求まで争ったとしても耐えうる程度には書類を整備して請求しています。