平成20年第4回定例会 一般質問内容(詳細)

伊沢勝徳議員

 次に,里山の保全に向けた取り組みついて,農林水産業部長にお伺いいたします。
 田んぼや小川,雑木林があって多様な生き物が住み,そしてそこに我々人間が住む集落がある。そんな景観ももちろんですが,里山は農村部・都市部に住む人にも分け隔てなく,食べ物や木材,さらには水や空気といったさまざまな恩恵を与えてくれます。しかし,これまで地域の人々の手で維持されてきた里山は,開発による森林の伐採や都市部への人口流出など社会環境の変化により,いまやその本来の姿を失いつつあります。一度失われてしまった里山をもとに戻すためには,非常に長い時間と多大なコストが必要になります。私は日本の心ともいうべき原風景と自然環境を守るため,私たち一人一人が里山の大切さを再認識し保全を図っていかなければならないと考えます。
 また,本年7月に開催された洞爺湖サミットにおいて,地球温暖化が議論されたように,環境問題は非常に深刻化し,その対策の一環として,国においては平成15年度からモニタリングサイト事業に着手しております。これは,生態系を観測する地点を全国1,000カ所程度指定し,100年以上長期継続調査・観測を行い,里山を初めとした自然環境の移り変わりをとらえ,適切な保全対策につなげていこうとするものであります。大変地道な取り組みでありますが,アメリカの海洋大気庁が1958年からハワイ島で継続して観測した大気中の二酸化炭素濃度の記録により,私たちが地球温暖化の重大さに気づくことができたことを考えれば,こうした取り組みは非常に重要な意味を持ってまいります。
 また,私の地元土浦市には,宍塚大池という水辺を中心に雑木林や草原,湿地などが囲むように広がる約100ヘクタールほどの里山が広がっており,多くの生き物をはぐくむ自然の宝庫となっております。この里山
は,先ほどの「モニタリングサイト」のコアサイトにも指定されている貴重な地域であり,この保全に20年来取り組んでいる団体もございます。県においては,このようなすばらしい活動と力を合わせ,里山の保全に取り組んでいく必要があると考えます。
 他の都道府県の動きを見ても,里山の保全に関する条例を制定したのは,既に17都道府県もあり,本県においても他県におくれることなく条例を制定し,里山の保全や再生,活用等について官民一体となり取り組んでいく必要があると考えます。そして,森林湖沼環境税を導入したこの時期が,まさにその好機であるとも言えます。
 県では,農林水産部内で条例制定に向けた検討を始めたということでありますが,里山は環境面や災害面,文化面など多面的な機能を持つことから,農林水産部だけでなく他部局とも連携をとりながら進めていき,その取り組みの中で里山の大切さを県民が再認識する機会として,例えば「さとやまの日」を創設するなど,県民意識の醸成を図っていくことも必要ではないでしょうか。ついては,以上を踏まえ,条例の制定も視野に入れた里山の保全に向けた今後の取り組みについて,農林水産部長にお伺いいたします。

斉藤 農林水産部長 (答弁)

 次に,里山の保全に向けた取り組みについてお答えいたします。
 里山は,身近な自然との触れ合いの場や多くの生き物をはぐくむ生物多様性の保全の場などとして,大変重要な役割を果たしており,県民と一体となって次の世代に引き継いでいかなければならない県民共有の貴重な財産であると考えております。
 このため,適切な緑の保全や地域の特性を生かした緑づくりを進める「緑のいばらき推進計画」や,平地林の保全対策を総合的に進めるための「平地林保全基本計画」を策定し,里山の保全と活用に努めてきたところでございます。
 さらに,今年度からは森林湖沼環境税を活用し,市町村が行う地域の実情に応じた里山の保全・整備や,ボランティア団体などが行う里山の保全・森林環境教育などの活動に支援を行っております。
 また,議員御指摘の里山の保全に関する条例の制定につきましては,平成19年9月に林業関係職員で構成するワーキングチームを設置し,これまで他県の情報を収集するなどして検討してきたところでございますが,議員御提案の「さとやまの日」の創設などを含め,関係部局との連携を図りながら,さらに検討を進めてまいりたいと考えております。
 県といたしましては,今後とも森林所有者を初め,県民の皆様の御理解と御協力をいただきながら,これらの取り組みを積極的に推進し,里山の保全に努めてまいります。

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