平成17年第3回定例会 一般質問内容(詳細)

伊沢勝徳議員

次に,本県農業の持続的な発展に向けた若い活力ある農業者の育成,確保をするための施策について伺います。
 御承知のとおり,本県は,全国第3位の農業生産額を誇る全国有数の農業県であります。しかし,農業の主体者である農家の現状を見ますと,総農家戸数は,平成2年,約15万3,000戸であったのが,平成16年には約12万3,000戸と,平成2年に比べ約3万戸も減少しております。また,人員ベースで見ますと,農業に主として従事している基幹的農業従事者は約4万1,000人も減少しております。さらに,基幹的農業従事者のうち,39歳以下の若い農業者の割合は,平成2年には約1万7,000人と全農業就業者の8.0%であったものが,平成16年にはわずか約5,300人と,全農業就業者の3.4%になるなど,高齢化も著しく進展しております。
 確かに,農業者の減少と高齢化については,本県特有の問題ではなく,全国的な問題でありますが,先ほどの統計上の数値を見ますと,私は,地域の農地を遊休化させることなく,本県農業をさらに発展させることができるのか,大変憂慮しております。
 幸い,私の地元,土浦市の主要品目の一つであるレンコンは,収益性が高く,通年で収穫が可能であり,休日の融通もききやすいなどの理由から,農業後継者は順調に育っており,産地全体として見れば活気があります。それでも,後継者がいる農家は経営規模の拡大が進む一方,そうでない農家は縮小を余儀なくされているなど,後継者問題に頭を悩ましていると聞いております。
 これらの課題に対し,国や県は,新たな食料・農業・農村・基本計画や茨城農業改革大綱に示されていますように,認定農業者や集落営農組織を中心に,さまざまな人材の育成,確保等を進めようとしております。
 私は,さまざまな人材の育成,確保の中でも,持続的な農業の発展を図るためには,何よりも若くて活力のある農業者の育成が不可欠であると考えます。
 この点について,本県の若い農業者の新規就農者の状況を見ますと,平成7年以降増加傾向にあり,平成14年は159人,平成15年には179人,平成16年は176人というように,ここ3年間,平均150人以上の若い農業者の方が新規に就農しております。しかし,平成2年から平成16年までの間に,39歳以下の若い農業者の方が約1万2,000人も減少していることを考えますと,本県の若い農業者の就農数はまだまだ足りないと言えます。さらに,県が平成13年に策定した茨城農業・農村ビジョンに掲げられている目標数値である毎年200人にも及んでいません。
 私は,活力のある若い農業者を育成,確保するためには,就農に強い関心がある若い方々が学んでいる県立農業大学校の中核的な教育施設としての役割が重要であると考えております。県立農業大学校の平成17年の卒業生75人のうち,直接就農しているのは36人で,将来の地域農業のリーダーになることが期待されます。また,近年,一たん社会に出てからUターンやIターンで農業につこうとする若い人がふえており,基礎的な農業技術研修を受けたいという声も強くなっていることから,県立農業大学校では,昨年度から,いばらき営農塾を開いて好評を得ていると聞いており,今後ますます,県立農業大学校への期待は高まるものと考えます。
 そこで,県立農業大学校の一層の充実を含め,本県農業の持続的な発展に向け,若い活力ある農業者をどのように育成,確保していくのか,農林水産部長にお伺いいたします。

森田 農林水産部長
県立農業大学校の充実を含めた,若い活力ある農業者の育成,確保策についてお答えいたします。
 本県農業を持続的に発展させていくためには,若い農業者を継続的に育成,確保していくことが極めて重要であります。
 このため,県では,農業改革大綱の中で,農業以外からの参入者なども含めた多様な担い手確保を進めることとし,これまで,農林振興公社における就農相談や資金面,研修面の支援,市町村等における農地のあっせん等を行う体制の整備,普及センターにおける農村青少年クラブ活動の指導などの対策を実施してきております。
 しかしながら,平成16年度の新規就農者数は,目標である200名にまだ達していない状況にありますので,これまでの対策に加えて,インターネットや相談会を通じた就農に関する情報提供の拡大,市町村,JA等が地域の担い手を確保するための戦略づくりの促進,いばらき営農塾研修修了者に対するフォローアップなどを長期的な視点に立って進めてまいります。
 一方,農業者育成の中核的役割を担っている農業大学校につきましては,昭和43年の創立以来,約3,000名の卒業生を輩出し,本県農業の振興に大きく貢献してきております。
 しかしながら,近年,学生確保が難しくなってきていること,Uターンや新規参入者からの基礎的研修のニーズが高まっていること,農業大学校の施設等が老朽化してきていることなどの課題が生じてきております。
 このようなことから,これらの課題を解決し,一層の充実を図るため,先般,新たな農業大学校構想策定委員会を立ち上げたところであり,この中で,すぐれた農業者を育成していく上で,農業大学校はどのような役割を担うべきか,教育内容としてどのような修業期間やカリキュラム,学科編成が適当か,就農ルートが多様化している中での研修をどのように進めるかなどを視点として検討を進めているところでございます。
 今後,新しい時代に合った,より魅力のある農業大学校づくりを進めるとともに,市町村や関係機関等との連携を強化し,しっかりとした技術と経営力を持った,若い活力ある農業者の育成,確保を進めてまいります。

伊沢勝徳議員
 次に,県立農業高等学校についてでありますが,現在,県立高校においては,全日制8校,定時制1校に農業関係の学科が設けられており,毎年700人程度の卒業生を送り出しております。そして,その卒業生は,3年間をかけ農業に関する勉強を続けておりますが,その約700人の卒業生についても,直接就農や農業関連の会社に就職等をしているのは200人程度と,決して多い状況にはありません。
 確かに,農業高校に関しては,その卒業生の多くがまだ18歳前後と若い方であることや,学校教育法上の学校であることを考えますと,卒業後すぐに就農する方が少ないのはやむを得ないかもしれません。しかし,農業高校を設置している目的や農業者の減少と高齢化という課題を解決するために,若い農業者の育成,確保が強く求められていることを考えますと,その卒業生の就農率の向上についても真剣に検討すべきだと考えます。
 そこで,農業者の減少と高齢化が進行している中でのこれからの農業高校の活性化をどのように図っていくのか,教育長にお伺いいたします。

川俣 教育長
 まず,農業者の減少及び高齢化が進行する中での農業高校の活性化についてでございます。
 御承知のとおり,農業を取り巻く環境は大変厳しい状況にありますが,農業振興のためには,農業教育を活性化し,農業後継者を育成することは大変重要であると考えております。
 したがいまして,農業高校では,初めて農業を体験する生徒が大部分でありますので,まず,農業人として必要な基礎,基本の定着を図り,その上で,しっかりした農業後継者の育成のために,営農者としての実践的な知識,技術を身につけさせることに力を入れているところでございます。
 具体的には,農耕用大型特殊免許などの営農に必要な資格取得を推進しますとともに,近隣の先進農家での農業研修や北海道での長期農業体験研修などのインターンシップや,実践的な力を養う生産実習,課題研究などを通して,経営管理能力の向上を図っております。
 また,昨年度から,高校生起業家教育プログラムを実施しまして,プロのラン栽培者等による農業経営に関する講義や実習などを行ったりして,農業経営者としての一層の心構えを涵養しておるところでございます。
 さらに,近年,高い農業技術や知識の習得を目指し,大学等への進学を希望する生徒が増加していることから,一人一人の希望や習熟度に応じた科目選択制や個別指導を充実することで進学に対応できるようにしております。その結果,就農を目的とした進学者の割合がこれまでよりも増加してきておる状況にございます。
 県といたしましては,今後とも,農業高校の教育内容の充実を図り,活性化を促進することによりまして,一人でも多くの農業後継者の育成に努めてまいりたいと考えております。

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