今朝は、今月から5月にかけて読まれる使徒言行録についてお話ししましょう。
使徒言行録とは、イエスの死後、聖霊の降臨によって、エルサレムに使徒たちを中心とする教会が生まれ、使徒たちが聖霊に導かれて福音を広め、教会を確立して、帝都ローマに至った経過を記した文書で、28章から成る初代教会発展の歴史書です。
著者は、ルカによる福音書の著者と同一で、同福音書の続編として書かれています。著者であるルカは医者であり、パウロの伝道旅行にも同伴したと言われていますが、諸説があり真相ははっきりしていません。しかし、初代教会の史料として信想性のある記事も多くふくんでいることは事実です。書かれた年代は、学者によって異なり、紀元80年から90年頃と、かなり開きがあります。
内容については、第一に序言はルカ福音書との関連を記し、続いてイエスの昇天、十二使徒の補充による教会の確立。
第二には、聖霊降臨によりペトロを中心とする教会が誕生したこと。そして、使徒の活動と教会生活、ユダヤ人の反対とステファノの伝道と殉教について。
第三には、異邦人に向けた伝道の開始。サマリア伝道やパウロの回心についてとペトロの異邦人への伝道。そして、アンティオキア教会の成立やパウロの第1回伝道旅行などについて。
第四には、異邦人に向けての伝道の発展。パウロの第2回伝道旅行と第3回伝道旅行について。
第五には、パウロの逮捕とローマ行き、エルサレムにおけるパウロの捕縛。カイサリアでの監禁。ローマヘの護送、ローマにおけるパウロの伝道などです。
使徒言行録の特色は、第一には、新約聖書中、教会の誕生、伝道の進展について歴史的に叙述した唯一の文書であり、初代教会の様子を知る上に貴重な資料を含んでいるということ。
第二には、しかもこれは聖霊の働きによって神の救済の計画が実現されていくという救済史観をもって書かれたものなので「聖霊行伝」とも言われているということ。
第三には、ペトロ、ステファノ、パウロ等の説教は物語の構成要素として重要な位置を占めており、それらの中に福音宣教の基本的内容が繰り返し強調されているということ。
第四には、宣教活動がイスラエルの民であるユダヤ人から異邦人へ向けて転換され、世界に広がっていった過程が記されており、そのなかでキリストにならう使徒たちの苦難、ローマ世界における教会の政治的対決などが叙述されているということ。
第五には、これらの要素を統一するものは、福音宣教の活動が、救済史の中心地エルサレムから異邦世界の中心地ローマヘと進展するという力強い歴史観であるというところです。
みなさん、このようにルカによって記された福音書と使徒言行録は、イエス=キリストの誕生から公生活における行いとその教え、そして十字架上の死と復活、さらには聖霊の働きや弟子たちの宣教活動と教会の成り立ちなどを理解する上で、最もふさわしい聖書のカ所と言えるでしょう。
どうぞ、これを機会に、ルカによる福音書と今朗読されている使徒言行録を読んで、主イエス=キリストの行いと教え、そして使徒たちの命を懸けた宣教活動が、どのようなものであったのかに触れてみて下さい。
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