A部長(分掌(特に指導三部門の部長・主任))の適正と責任
学校組織における組織マネジメント上、重要な要となるのは指導三部門の分掌である。よって各分掌を管理・運営する部長の責任は、教育活動の根幹を形成する上で重要かつ重い。特にカトリック学校における分掌業務は、一般の教育機関で行われる教育活動の管理・運営のみならず、指導三部門においていかにカトリック学校の本来的使命である「宣教師牧」を具現化するかということが問われるとともに、その運営方針は学年運営やクラス運営および学習活動や特別活動など、その学校の全ての教育活動に反映されるものであるから、カトリック学校の教育活動の根幹をなす隅の親石とも言うべきものである。
では、具体的にこれらの指導三部門においていかに「宣教師牧」の実践がどうあるべきかについては既に前述したが、教務部門においては、「2.教務 (1)学習活動 教科における福音的学習指導 (2)特別活動 特別活動における福音的指導 (3)学校行事による福音宣教の実践 (4)福音的カリキュラムとシラバス (5)総合的な学習と福音宣教」、生徒指導においては、「3.福音的生徒指導 (1)福音的人間観 (2)人間の二面性 (3)懲罰とゆるし」そして進路指導においては、「4.福音的進路指導 (1)福音的人間観に基づいた進路指導 (2)福音宣教と進路指導 (3)福音的進路指導と進路実績」の各項目で示した。これらのことを、各分掌の部長・主任はそれぞれの業務に反映させていく責任を果たしていかなければならない。
以下、カトリック学校における分掌の部長・主任がその職を全うするための責任と適正を挙げておこう。
1.カトリック教育の根幹である福音的人間観をよく理解し、それを自己のの教育活動の教育理念として日々の教育活動
ないし分掌業務に当たっていること。
2.学習者(園児・児童・生徒・学生)の存在を福音的人間観をもとに捉え、日々の教育活動、特に分掌業務の中に福音的
教育観を反映させることができるようにすること。
3.自分の分掌に所属する教員に対して、福音的人間観とは何かについて理解させるとともに、分掌業務を通して個々の
学習者が、それぞれの自己実現を果たしていくのだということを周知徹底できること。
4.各分掌における実践目標等(月間目標や週間目標)に、福音的人間観や福音的教育観に基づいた具体的実践目標を
教育目標に掲げ、全ての教員が日々の教育活動の中でそれらを実践できるよう指導・監督できること。
5.個々の教員が、福音的教育観に基づき学習者一人ひとりと人間的で親密かつ責任ある人間関係を築いていくことがで
きるよう、分掌業務を通じて全ての教員に指導・監督できること。
6.各分掌におけるカトリック学校の本来的使命である「宣教師牧」の実践の実現を果たすために、分掌および全ての教職
員とそれぞれの分掌における実践目標を共有し、その指導計画を具体的に策定し実践していくことができること。
7.福音的教育観によるカトリック学校の本来的使命の完成のため、教員個々における教育活動および教師団による教育
活動が組織的かつ有機的に実践されるよう、各分掌間の連携を円滑に図ること。
分掌業務、特に教務部・生徒指導部・進路指導部の指導三部門は、教育活動の根幹をなす要であるから、この三部門において福音的人間観および福音的教育観に沿った教育活動が企画・運営されてなければ、カトリック学校の本来的使命である「宣教師牧」を果たすことはできない。そのためには、各分掌の責任者である部長・主任が、いかにカトリック教育の根底に流れる福音的人間観を理解し、福音的教育観に基づいた分掌の運営計画を策定し、その実践ができるかということが鍵を握ることになる。「人は人によってのみ教育されることで成長し、完成に導かれていく。」とは、教育における真実の一端を表すものであろう。ならば、カトリック学校の本来的使命である「宣教司牧」の実現は、「カトリック学校の学習者は、福音的人間観を理解し受容した教師に導かれることによってのみ、神から与えられた固有の能力を開化させその使命を果たすことによって、本来的自己実現の完成に導かれていく。」のである。
以上の観点で、カトリック学校における分掌の部長・主任の果たす責任と適正は、カトリック学校の本来的使命を果たすという観点において、学年主任のそれと同様、特に重大であることは言うまでもない。特に、上に列挙したカトリック学校における分掌の部長・主任の果たす責任と適正にていての7つの要件を全うすることは困難を極めるであろうが、カトリック学校の本来的使命である「宣教司牧」の実現のためには、必要不可欠な実践項目である。また、分掌の部長・主任がカトリック信徒であるか否かについても、信徒・未信徒に関わらず福音的人間観に基づいた福音的教育観を教育理念として、日々の教育価活動が円滑に実施できるよう、全ての教員にそれぞれの分掌活動を通して指導・監督できる責任を果たすことができるということが重要なことなのである。よって、学校運営に深く関わる学校組織の責任者は、例外なくカトリック学校の本来的使命である「宣教司牧」の実践を果たすために、福音的人間観に根ざした福音的教育理念を確固たるものとして、各人の職務遂行に専念するということが重要課題となるのである。
また、カトリック学校は、一般の学校教育機関の持つ使命に留まることなく、「宣教司牧」という本来的な使命を帯びている。よって、その使命を果たすために、カトリック学校は学校組織全体を福音的共同体として完成に導いていかなければならず、カトリック学校における部長・主任は、校長・教頭を核にしながら、その導き手・助け手とならなければならない。それが、カトリック学校の部長・主任の果たすべき使命なのである。
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