4.図書館司書教諭の福音的役割
学校図書館法において、学校図書館が教育活動においてなくてはならない基礎的な設備であるとともに、学校教育の健全な発達と充実を目的とすることが定義されている。(第1条)また、学校図書館とは、小学校(特別支援学校の小学部を含む。)、中学校(中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の中学部を含む。)及び高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。)において、図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。(第2条)と学校図書館の役割を定義している。
さらに、第3条においては、学校図書館の設置義務を規定しており、第4条においては、以下のとおり学校図書館を児童又は生徒及び教員の利用に供するものであること、および学校図書館をその目的を達成するのに支障のない限度において、一般公衆に利用させることができると規定している。
1.図書館資料を収集し、児童又は生徒及び教員の利用に供すること。
2.図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
3.読書会、研究会、鑑賞合、映写会、資料展示会等を行うこと。
4.図書館資料の利用その他学校図書館の利用に関し、児童又は生徒に対し指導を行うこと。
5.他の学校の学校図書館、図書館、博物館、公民館等と緊密に連絡し、及び協力すること。
また、第5条においては、学校には学校図書館の専門的職務を掌らせるため、司書教諭を置かなければならないことと、司書教諭は、主幹教諭(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭を除く。)、指導教諭又は教諭(以下この項において「主幹教諭等」という。)をもつて充て、この場合において当該主幹教諭等は、司書教諭の講習を修了した者でなければならないことを規定している。そして、第6条において学校の設置者は、この法律の目的が十分に達成されるようその設置する学校の学校図書館を整備し、及び充実を図ることに努めなければならない。ことを規定をしている。
以上、学校図書館法をもとに学校図書館の機能や役割から、カトリック学校における司書教諭の福音的役割を考えると、学習者や教職員に対して、学校図書館の蔵書としてキリスト教関連書籍や視聴覚教材(DVD,CD等)を設置したり、図書館報やキリスト教関連映画の鑑賞会等をとおして間接的に福音宣教の実践が可能なものと、来館した学習者や教職員の要望に応じて直接的にキリスト教関連書籍や視聴覚教材を紹介・推奨することによって福音宣教が可能となるものの二通りが考えられるであろう。いずれにせよ、学校図書館に十分なキリスト教関連書籍や教材を設置することによって、学習者や教職員に対して能動的もしくは受動的な宣教司牧の実践ができるようになる。
よって、カトリック学校の司書教諭は聖書やキリスト教関連の知識を十分学ぶとともに、それらに関連した書籍や教材についても熟知し、学習者や教職員の宗教的関心や信仰的欲求さらに適切な教材準備に、十分応えられるような体制を整えておかなければならない。また、そのような受動的な体制のみならず、自らがカトリック信徒であるならば信徒使徒職を積極的に果たすためにも、学校図書館の機能や役割を余すところなく活用した能動的な宣教司牧活動を展開・発信していかなければならない。学校図書館の司書教諭にとって、これら一連の活動は、「耳のあるものは聞きなさい。(マタイ11:15,13:9)」や「だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。(マタイ7: 8,ルカ11:10)」という福音宣教の精神に照らし合わせてみるならば、至極明快で合致するものであると言えよう。
では、カトリック学校における学校図書館の司書教諭は、具体的にはどのような体制を整えておけばその福音的役割を果たしていけるのか列挙してみよう。
1.図書館の中には独立して宗教関連の書棚もしくはコーナーを設置する。または、その必要性を経営責任者(学長・校長・園長)に進言する
こと。そして、そこには次のような書籍関連物を設置し、学習者および教職員が常時閲覧できる環境を提供すること。
(1)聖書(日本聖書協会出版の各種(新共同訳・STDY版・英語版等)、フランシスコ会聖書研究所発行等)
(2)聖書解説書(コンコルダンス、聖書辞典、旧・新約聖書の基礎知識や解説、歴史資料等)
(3)キリスト教・神学入門関連書
(4)カトリックカテキズム・祈り・黙想関連書
(5)聖人・福者に関する伝記
(6)バチカン(特に教育省)や日本司教団および中央協議会等教会関連の公式文書
(7)教区および小教区からの発行物
(8)キリスト教関連児童書および視聴覚教材(DVD,CD等)
(9)キリスト教関連機関誌(カトリック生活、福音宣教、あけぼの、聖母の騎士、心のともしび、カトリック新聞等)
(10)学会誌・教育研修会紀要等(日本カトリック教育学会誌およびカトリック学校教育研修会紀要等)
2.図書館報(図書館だより)を定期的発行し、紙面の中にキリスト教関連書籍等の紹介をすること。
3.聖書やキリスト教に疑問・関心を持って、あるいは授業の課題のため資料を求め来館した学習者に適切な書籍や資料を提供・紹介できる
こと。また、それらの書籍等が学習者の用途や発達段階別等、適切に分類・整理されていること。
4.教職員のキリスト教についての疑問・関心や授業の教材研究等の必要性に応じて、適切な書籍や資料および教材を提供・紹介できるこ
と。また、それらの書籍や資料等が適切に分類・整理されていること。
5.教職員のカトリック教育に関する理解と関心向上および啓発活動のための書籍や論文等が常に閲覧・貸し出しができること。
以上、カトリック学校の学校図書館司書教諭がこれらの事柄を網羅し、福音宣教と司牧に関する書籍・資料および教材の提供環境の整備や情報の発信を実践することで、その福音的役割を十分に果たすことができるようになる。
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