2010年年頭司教書簡で平賀司教様が呼びかけられた『「祈りに心を注ぐ一年」で信仰共同体作りを』を受けて、私は教区の皆様に『「次代に継ぐ教会共同体づくりのための祈りと実践」の提言』をしたいと思います。
まず、皆様の小教区ではいかがでしょうか。毎日曜日のミサに与り、教会にも少子高齢化現象が急激に進行していることをお感じになっていることでしょう。私は、このことに深い危惧感を覚え憂慮している一信徒です。私は学生の時分から教会の青年会の活動の傍ら、小中高生のこどもたちとも関わる仕事をしてきました。現在も教育部に所属し教会学校の運営に携わっていますが、その環境はここ数年の間に大きく変化したと思っています。
現在、青森市内には3つの教会がありますが、司祭の減少に伴いいずれの教会も日曜のミサは単独で行えず、2つの教会で各週で実施しています。また、同様に教会学校も毎月第3日曜日が「こどもと共に捧げるミサ」となっていて、それに合わせて月1回のみの教会学校を実施しているのですが、それに与るこどもたちは幼稚園から高校生まで合わせても2人〜4人というのが現状です。5年程前までは、私が所属する教会だけで毎週教会学校が開かれ、幼児から小中高生までのこどもたちで賑わっていたことを考えれば、その変り様には驚かされるばかりです。
さて、教会共同体という集団が、基礎的集団であるのか機能的集団であるのかはともかくとして、健全な集団が形成されるためには、その内部において年少者から年長者までが相互に関わり合う中で、共に成長していける「生涯発達」が実現していることが不可欠です。そのような観点から現在の教会を考えると、その構成員の多くが高齢者で年少者や青年が占める割合は、極めて少ないのが現状です。
集団において、その構成員個々の「生涯発達」の実現ができないということは、世代間の交流が希薄化しているか欠如しているということです。言うまでもなくそれは私たち信仰共同体である教会にとっては、信仰が受け継がれていかないという危機的状況を招くことになるのです。この現象は既に、司祭や修道者の高齢化と減少、あるいは若年層の教会離れという形で既に現れています。このように「生涯発達」の崩壊は、教会共同体内における信仰継承の断絶をもたらし、その結果私たち教会共同体を信仰共同体として持続していくことを不可能にしてしまうのです。
確かに少子高齢化現象は教会に限ったことではなく、日本社会一般に共通する社会問題です。しかし、現在の私たちの共同体にこどもたちや青年がいなくなってしまったわけではなく、さまざまな理由により若年層の教会離れが進行しているということです。この点に関して私たちは、教会共同体の一員として次世代の信徒やこどもたちに私たちの信仰を伝えてきているのかどうかということを、それぞれの範疇において自問自答する必要があると思います。
私たち信徒が目指すところとその役割は、イエス・キリストの福音を信じ、イエス・キリストの生き方に倣い、イエス・キリストのうちに一致することでしょう。そのために私たちは、イエス・キリストをとおして述べ伝えられた神の福音を広めるという「福音宣教」と、キリスト者として互いに成長し福音に与ることができるように導き合うという「司牧」の2つの使命をいただいています。これらの使命を果たすことは、教会共同体のアイデンティティを確立することにもつながりますが、本来私たちの教会共同体は、この「福音宣教と」と「司牧」つまり「宣教司牧」という使命を果たすためにあるはずです。
「宣教司牧」には、外へ向けられたものと内に向けられたものの両面があると思いますが、いずれにせよ私たちの「宣教司牧」という使命を果たすための集会として「ミサ」があります。「ミサ」は、私たち信徒の完全なる一致の時と場であると思います。私たちの主イエス・キリストのご聖体と聖霊そして祈りによって、私たち信徒は「ミサ」の中で完全に一致します。ですから、私たち信徒にとって「ミサ」は、私たち信徒を信仰共同体に束ねてくれる最も重要な集会であって、「ミサ」に与ること無しには、私たちの教会共同体は成り立つことは無いと言っていいでしょう。今、私たちの教会共同体を次代に継ぐ信仰共同体としての完成に導いていくためには、私たちカトリック信徒として目指すところと果たすべき使命の原点である「ミサ」の重要性を再認識し、「ミサ」をとおしていただくご聖体と聖霊そして祈りの働きによる力を求めることが不可欠です。
祈りにはいろいろな祈りがあると思いますが、例えば「感謝の祈り」、「奉献・献身の祈り」、「救済を求める祈り」、「成就を求める祈り」、「服従の祈り」、「尋聞(神の御心を尋ね聞く)の祈り」、「沈黙の祈り」等です。これらの祈りの中でも、次代に継ぐ教会共同体づくりのためには、「奉献・献身の祈り」が必要なのではないでしょうか。現在、毎日曜日のミサに集っている人々の一人ひとりが、自分の所属する教会を真の信仰共同体へと導くために、どのような実践をするのかということを具体的な行動として、祈りと共に考え実行していかなくてはなりません。そして、世代間の相互関係が成熟していく中で、共同体内部における「宣教司牧」が果たされ、現在の世代から次の世代へと信仰が受け継がれて、私たちの共同体が信仰共同体としての完成に導かれていくのだと思います。
ですから、私たちの共同体を世代間の相互関係の関わりによって、次代に継ぐ信仰共同体としての完成に導くためには、私たちの最も重要な「ミサ」という集会に全ての世代の人々が集い、このキリストの「ミサ」に招かれた司祭・修道者・信徒・求道者の全ての世代の人々が共に関わり合ことで、私たち一人ひとりが生涯に渡って成長していく生涯発達の実現がなされます。そしてそのような関わりの中で、「宣教司牧」というキリストを証する者としての使命を共に果たしていくことで初めて私たちの教会共同体は、信仰を継承していける霊的なつながりに基づいた信仰共同体への完成へと導かれていくのです。そのために私は、「次代に継ぐ教会共同体づくりのための祈りと実践」を提言したいのです。
以上。
2010年2月12日
カトリック青森本町教会
ベネディクト ラブル 佐井総夫
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