六日目(その1)


朝7時、朝食の用意ができましたとのアナウンスに起される。疲れはきれいに取れてるが、もうちょっと寝ていたい(^^; そこを我慢して、顔洗って1階の食堂に下りる。昨日の夜は、食い過ぎないように注意してたので、多少食欲はある。寝起きにメシ食うためには、前日から準備しておかねばならないあっくん。だから、一泊二食付きの宿にはそう簡単には泊まれない。

席につくと給仕の方がごはんとお吸い物をよそってくださる。のりに梅干、シャケ、おしんこ、山菜の和え物に温泉卵etc... それぞれのボリュームはそれほどでもないが、これだけ品数豊富だとけっこうな量になる。昨日の夕食もそうだったが、このような品数豊富な懐石風の食事は苦手。貧乏性のあっくんは、少ないおかずでできるだけ広い面積のご飯を食えるように訓練されている。学生時代ごはんお変わり自由のとんかつ屋で、ロースカツ一切れでどんぶりメシ一膳食っていた。だから、このような懐石風の料理出されると、おかずが余ってしょーがない。これが悩みの種。従って牛丼とかカツ丼とか、悩まなくていい丼物が好きなわけ。

ふうっ、何とか全部食えた。食べ残すと朝早くから調理してくださった方に失礼やもんね。211号室に戻って一服、大の字になる。今日は全道的に晴れの予報、窓から眩しい朝日が差し込む。今日の予定はまず摩周湖観光、それから阿寒湖方面へ走りオンネトーという秘湖を尋ね、足寄経由で帯広まで抜ける旅。よーするに湖めぐりの一日やね。

「どうも、お世話様でしたあ〜!」

チェックアウトしてスカちんのところへ。

げっ!ボンネットにでっかい鳥のフンが!!

木陰に停めておいたのが裏目に出たかあ?急いで宿舎に戻り、水をもらう。暖気&濡れ雑巾で丁寧にフンを落とす。スカちんのボディ色ワインレッドにはメタリックが入っている。ホワイト等の単色と違って、塗料の食いつきが悪いんだこれが。再塗装していることもあって、鳥のフンとかすぐに落としておかないと傷んでしまう。ワインレッドの唯一のメリットは錆が目立たないこと(笑)。
ついでに足回りについた泥も落としておく。タイヤハウス周りはだいぶ錆が進行しているなあ。この辺は秋にレストアする予定。

さて、出発じゃ。まずは摩周湖第3展望台を目指す。途中、噴煙を吹き上げている岩肌が見える。これが硫黄山。いつものパターンで、これまで何回も行ってるんでパス。ところで、硫黄山の駐車場料金は400円ですが、摩周湖第一展望台の駐車場料金も兼ねています。つまり、摩周湖第一展望台に行くのであれば、硫黄山も行ったほうがお得ってわけ。但し昭和新山駐車場が無料になっていたように、料金体系が変更されている可能性もあるかな?2000年の今回は、どっちも行ってないんでよくわからんです。

これが硫黄山。1996年撮影。辺り一面、硫黄の匂いがたちこめる。ショッカーと二人のライダーが対決してそうな光景やね。

国道391号線に合流時、信号が青になるのを待つ。長い信号待ちやなあ... いくらなんでも長すぎるんでないかい?その時、スカちんの後ろに停車していたワゴン車からドライバーが出てきた。

「すいません、もうちょっと前に出ていただけますか?あのセンサーの下まで行かないと、信号が変わらないんですよ」

おおっ、そうでげしたか!見ると、停車線の上に小さなセンサーが見える。何とまあ、ハイカラな仕掛けですこと!対向車の左折を考慮して、停車線のかなり前に停車していた。

すんまそん!!

ワゴン車のドライバーに謝って2m程前進、すぐに信号は青になった。
国道391号から摩周湖への案内板のとおり左折、踏切を渡ってまずは緩やかな上りの直線道路。ほんとにここは、いつ来ても気持ちいい。どうやら霧も出てないようだ。摩周湖のふもとからはワインディング道路(摩周湖はカルデラ湖、山の上にある)。ここのワインディング道路もまた格別、各コーナーには深いカント(≒バンク)が設けられている。朝っぱらから攻めるつもりはないが、スカちんが言うことを聞かないんだ。仕方がない、2速にシフトダウン!

...キュルキュルキュル...

けっこう深いカントなんで、いつも以上にトラクションをかけられる。いや、本当にあたしゃ攻めるつもりはないんですぜ。スカちんのせいですぜ!
摩周第3展望台に到着、やっぱ朝から観光客が多い。ちなみに第1展望台の方が一番駐車場が広くて、一般的な観光名所かな?おみやげ屋さんもあるし。が、あっくんのお気に入りは第3展望台。

見えたあ〜っ!

霧のかかっていない、まるで鏡のような摩周湖!今年も見ることができました。こんなに幸せでいいんですか?

いいんです!

それにしても今年の摩周は一味違う。よく知ってる摩周ブルーではなく、ほんと鏡のよう!鏡京太郎だったら、ミラーマンに変身できるど。透明度は世界1、2位を争う40m。入り込んでくる河川がないため、水に濁りがない。深いところで水深200mはあるそうだ。

これが第3展望台から見た摩周湖。カムイッシュ島に注目。本当に鏡に映っていますね。

 

摩周湖の断面図。見たわけではないが、多分こうなっているはず。

ところで第3展望台から見た摩周ブルー全体像は1997年に撮影したものがあります。ちょっとでかいですけど、ご迷惑でなければこちらをご覧下さい。
写真を撮り終えて、しばし摩周ブルーに見入る。本来あっくんは、旅は嫌いなほう。年に一度、北海道を訪れるのは、

(1)オグリキャップに会うため
(2)美瑛を散策するため
(3)摩周湖を見るため

これが目的。そもそもオレは、湖を見て感動するようなタイプではないが、摩周湖だけは特別。惹きつけて止まない神秘の魅力がある。ここ阿寒国立公園には前述の硫黄山、屈斜路湖、阿寒湖等々、観光名所がたくさんある。が、これまで何回も行ったから、他に行く時間があれば、その分あっくんは摩周ブルーを眺めていたほうがいい。もちろんこの辺りの旅行を考えてらっしゃる方は、一度は一通りご覧になってから判断することをお勧めします。

いやいや、今年も摩周ブルーを見れて満足!さて、これだけきれいだったら、もう一度裏摩周からの俯瞰を見ておこう。スカちんに戻って裏摩周を目指す。先のワインディング道路を下る。前方に大型観光バス発見。この辺りは観光地なので、前述のようなトラクションバリバリ走行できるほうがかえって珍しい。ゆっくりと3速/4速で坂を下る。国道391号線に合流、昨日通ってきた道を逆走する。第3展望台から40分かけて裏摩周展望台に到着、パーキングの一番隅っこに停車する。霧も心配ない。

赤摩周、青摩周、黄摩周

...なんか昨日とフレーズが違うな。まあいいや。

おおっ、ちれいや!

昨日はうっすらとしか見えなかったカムイッシュ島が鏡に写っている。この位置からじゃ摩周岳の陰になって摩周湖の南側、第1展望台のほうは見えないんだなあ。川湯温泉からけっこう距離あるし、来年はやっぱ第3展望台だけでいいかな。

とは言え、見慣れない角度から摩周ブルーを見れてえがったでげす!一度は裏からの景色も見とかないとねえ。おみやげ屋さんできれいな裏摩周切手等数点購入。さて、行こうかねえ。スカちんに戻りエンジンスタート。出ようとしたその時、隣に駐車していたセダンに数人乗り込んできた。4ドア全て開けてぞろぞろ乗り込むんで、向こうがドアを閉めるまで出発を待った(結果的にこれが命取りになった)。セダンが先に出発、駐車場にフロントから駐車していたのでバックする。とその時、何をとち狂ったか、スカちんが真横に停車しているにもかかわらず、いきなりパワステハンドルを目一杯切り込んでバックしてきたからたまらない。

「危ない!」

ガーン!!

叫びも虚しく、白セダンの左前バンパーがスカちんの右ドア、つまりあっくんの運転席横に激突した!

「コラァ〜〜ッ!!」

わしが叫ぶと、スモークウインドウ越しにセダンのドライバーがきょとんとしている。

「何しとんじゃあ!そのまま前に出せ!」

こっちが動いて離れると、後でいちゃもんつけられる可能性がある(←以外と冷静)。とにかくここは、相手に全て動いてもらわねばならん。

「早よう出さんかい!」

....ガガッ、ガリガリ...

アイスキャンデーのガリガリ君とは異なるいやな音を立てて、白セダンが元の駐車位置に戻る。やっとドアを開けて、出ることができた。ここは冷静に事を進めねばならん。落ち着けあっくん!深呼吸...スーッ...コホン!

「何考えとんじゃあ、ワリャァ〜!出てこんかい、ボケェ〜!!」

(注:ここは面白おかしく表現するために脚色しているため、事実とは多少異なります)

ドンドンドンドン!

(↑あっくんがセダンのボンネットをたたく音)

「早よう出てこんかい!アホッ、ボケッ、カス!シバくどコラア〜!!」

(注:繰り返しになりますが、ここはダウンタウンDX視聴者は見た!のコーナーのように脚色されています。実際はもっと紳士的に会話が進められたことをお断りしておきます)

ようやく白セダンから、ぞろぞろ4人程出てきた。まあ、なんと幼い顔ですこと!つい何ヶ月か前まで高校生だったことがありあり。殴ったら、

「オヤジにも殴られたことないのにぃ〜!」

と逆ギレされそう(爆)。セダンのナンバーを見ると「わ」。レンタカーだな。どうやら夏休みを利用した北海道旅行らしい。

「どうも、すいませんでした」

4人が横一列に整列して頭を下げる。学校で「悪いことしたら謝りなさい」と教えられたことをそのまま実行しているようだ。
スカちんの右ドアを見る。あ〜あ、ぼっこり凹んでいる。おまけに白セダンのバンパー色が細長くドアに付着して取れやしない。頼みもしねえのに、白いストライプまで入れやがって。右ドアは錆を切り取って、今年板金したばっかりなんだぜ!

「とりあえず車検証と免許証見せて」

セダンのナンバーをメモりながら指示する。免許を見ると正真正銘の初心者。もちろん詳細は省くが、ナンバー、相手の免許証、レンタカー会社をメモった。相手は未成年だから、本来ならパパ/ママの住所、氏名、電話番号まで聞くべきだったが、事故後の処理は(車両保険に入っているはずの)レンタカー会社が仲介に入る。だからあっくんとしては、レンタカー会社だけ見ていればいいと判断した。ほんとなら警察呼んで事故検証すべきなんだが、場所が場所だけにそんなことしてたら何時間足止め食うか分かったもんじゃない。

「学生さんだね、初心者ドライバー?」
「はい」

てめえら、レンタカーで北海道旅行するなんざ574年早えぇ〜!

と言いたいところをグッとこらえて、

「車の運転には十分注意してよ!」
「はい!どうもすいませんでした!」

こういう時だけは威勢がいいなあ(苦笑)。これ以上ぶつけられてはかなわんから、今度はスカちんから出発。日ごろあんなに注意して、駐車場の隅に停めるように心がけても、ダメな時はダメなんだなあ。摩周ブルーとは裏腹に、暗く落ち込んだ気持ちで摩周湖を後にした。
 
北海道旅日記番外編 この後、東京に帰ってからの話になりますが、この事故の後処理を簡単にまとめておきます。