国道391号に戻り南下する。ガソリンが残り1/4くらいになった。弟子屈(てしかが)町のスタンドで給油する。ついでに水を頂いて、スカちんの右ドアを水洗いする。けっこう凹んでるなあ。あたった箇所がウレタンバンパーだったのでその色(白)と、回りにバンパーで吸収しきれなかった傷(多分白セダンのヘッドライト部分の接触跡)も入っている。冷静に見てみると、かなり広範囲にこすった跡が残っている。事情を話すとスタンドのおじさんが、
「災難だったねえ」
と慰めてくれる。
「...どうも」
お礼にならないお礼を言って出発、元気の無いあっくんでした。
国道241号へ右折し西へ、阿寒湖方面を目指す。昨日ほどではないが、日差しが強く暑い。交通量もまあまあ、5速70km/hで双湖台を目指す。ここは阿寒国立公園のど真ん中、山々の景色がとてもきれいだ。大自然に囲まれたおかげか、逆流した血が下がってきて、だんだん冷静になってくる。
1996年、阿寒湖の遊歩道にて撮影。対岸には道(ダート)があり、奥まで進むとパンケトウ、ペンケトウという秘湖もある。 |
これは津別峠から見た屈斜路湖。1998年撮影。屈斜路湖のパノラマは、美幌峠からの俯瞰が有名ですが、津別からの眺めの方が絶対いいっす(断言!)。ちなみに津別峠への道は狭いよ。 |
しばらくすると、オンネトーへの案内標識が見えてきた。この辺はもう足寄町なんだな。そういえば、足寄が北海道で一番(面積の)広い町だったな、たしか。オンネトー方面へ左折、険しい山中の木漏れ日の中をスカちんは走る。上条恒彦の歌が聞こえてきそうなシチュエーション(←昔のローレルのCMみたいな風景ということです)。道幅が急に狭くなる。対向車もあるし、ここは慎重に徐行。しばらくすると見えました、エメラルドグリーンの湖が!ここがオンネトー。阿寒の雌岳のふもとにある秘湖。駐車場にかろうじて一台分のスペース発見、隅っことか贅沢は言ってられない。スカちんを停める。
2000年の今回は、カメラが壊れていたので、うまく撮れなかった。これは1999年に撮影したもの。エメラルドグリーンのオンネトー。湖底に大木が沈んでいる。 |
ここは有名な撮影スポットだが、2000年の今回は、あっくんの後ろに見える支柱が折れて床が傾き、立ち入り禁止となっていた。修復されたのだろうか? |
先の撮影スポットから20分ほど山登りすると、こんな光景が。これが阿寒の大自然!正面に見えるのは雌阿寒岳。1999年撮影。 |
ここは比較的浅い湖で、時刻や天候、見る角度によって色が変化するカーコラ湖(爆)。湖底に朽ち果てた大木が冷たく横たわっている。無造作に繁殖する原生植物の群れ。独特の光景だ。何枚か記念撮影。あっくんのそばに女子大生3人組がキャピキャピ近寄ってきた。一人はOK、残り二人はNG。よくあるパターンだ(笑)。ここで写真を撮りたいのだろう。やさしいジェントルマンあっくんは場所を譲った....ん、女子大生!?
「わ」ナンバー軍団に取り囲まれ、怯えるスカちん。この後、スカちんの右ドアが写った写真はない(ビデオには撮ったが...)。 |
オンネトー近くの温泉宿(←名前は忘れちった)に到着、誰もいない駐車場にスカちんを停める。温泉に浸かろうかとも思ったが、昨日入ったばかりなのでその気になれない。それに、時刻はまだ午後2時。こんな時間からビール飲みたくなったらたまったもんじゃない。駐車場の隅に水道がある。ひょっとしてここはキャンプ場も兼ねてるのかな?水を拝借して、濡れ雑巾でスカちんのホイールを拭く。実は、フィン型のホイールにバッタが飛び込んできて、その血がべったりくっついてたので、洗い落としたかったわけ。ちなみに北海道を旅したら、フロントガラスは赤、黄色、緑... 前衛的なキャンバスになります。ついでにラジエーターにくっついて乾涸びているトンボやチョウも落とす。7〜8年前、美唄(びばい)近辺の高速を走ったが、あの時はひどかった。走行車線にトンボの大群がひしめいていたからたまらない。
ホイールを拭きながら考える。細かいことなので書かなかったが、一昨日はビデオのレンズキャップが割れた。ちょうど明日萌から旭川に戻る途中のワインディング道路、あそこで強烈な横Gをかけた時、ビデオが転がって割れてしまった。昨日はカメラが壊れた。そして今日はスカちんが傷ついた。毎日一つずつ何かが壊れていく。
国道241号線に戻り、足寄を目指す。いつものようなリラックスした片手運転ではない。両手でステアリングを握り、いつも以上にフェンダー/バックミラーをチェック、いつシカやキタキツネ、はたまた対向車が飛び出してきても除けられるように、前方視界から入る情報で不測の事態まで予測しながら走る。今、あっくんの神経は剃刀のように研ぎ澄まされている。本レポートをお読み頂いているみなさんには申し訳ないが、楽しい旅は一時中止!何でこんなことになったのか、分析してみる。
まずビデオのレンズカバー。やっぱスピードの出しすぎ?いや違う、スピードを出さなくても、交差点を曲がる時やブレーキ踏んだ時でもビデオは転がるときは転がる。ということはあの時、転がっても仕方ないような置き方をしていたオレが悪かったってことやないかい!なして他の荷物でビデオをサンドイッチしとかんかったんやろか?
次、カメラ。絞り調整針が動かないってことは.....!!
んなことはどーでもいい。ええと、どこまで考えたっけ?そうそう、次はスカちんや。一方的にぶつけられたとは言え、何か防止策は無かったかあ?ある程度信頼できそうな車、つまりヤキの回ってない美車の横に駐車していれば、あの事故は未然に防げなかったかあ〜?あの時、駐車している車両から離れた隅っこに駐車した。だからその後、スカちんの横に得体のしれない「わ」ナンバーが駐車してきた。こう考えると、
済んだことは仕方がない。これからどーするかじゃ。...腹減った。が、ちんたらメシ食ってる場合じゃない。でも、腹減った。足寄郊外のコンビニで、すぐエネルギーになるスパゲティナポリタンを購入、がつがつ食って出発。
松山千春の実家前を通過する。ご丁寧に「松山千春の家」という案内標識まである。実家も観光名所なんやね。やっぱ芸能人にはプライバシーはないんか?が、今のあっくんにはどーでもいい。ええと、これからの対策じゃ。答えは簡単、壊れたものは直せばいい。スカちんは前述の通り、この秋レストア予定。東京に帰ったらすぐに対処しよう。レストアがちょっち早まったかな?この旅が終わるまでは何もしてやれんが勘弁してくれ、スカちん。
次、ビデオとカメラ。これは何とかなるんでないかい。ビデオのレンズカバーは、プラスチックが割れただけだから、自分で対処できる。カメラは予想通り、単なる電池切れだったら電池を買えばいい。但し、骨董品PENTAX SPに合う水銀電池があればの話だけどね。今宵の宿泊地帯広は、北海道でも有数の大都市。カメラとビデオを修理する材料がそろうかもしれん。よし、壊れた3つのうち、2つは今日中に直してしまおう。
足寄に到着、左折して池田町のワイン工場を目指す予定だったが、酒飲む気分じゃない。急きょ予定変更。国道241号線をひたすら直進、一路帯広を目指す。ワイン工場は去年行ったし、「とかっぷ」は地元のスーパーでも売っている。ひょっとしたら池田町を目指したほうが帯広に近いかもしれないが、あのルートは去年通った。未知のルート、241号線でそのまま帯広を目指す。わだちがすごい。大型トラックの交通量が多い証拠、帯広は北海道の重要な交通拠点であることを改めて実感。
山岳地帯を抜け士幌町に突入、辺りに牛の牧場が広がってきた。一気に国道241号を南下、帯広市に到着。ここも街が碁盤の目のようになっている。今日の宿泊地はホテルサンパーク。去年も泊まったので、住所や地図見なくても場所はわかる。あれっ?たしかこの辺だったけどなあ... 1ブロック間違ったかあ?早くチェックインしてビデオとカメラ修理しなきゃ。この時あっくんはかなり苛立っていた。ラジオからアンディフグがどうしたこうしたとニュースが流れるが、ろくに耳に入らない。それよりホテルはどこじゃ?(実際このニュースの重大さは、翌日知ることになる)
やっとホテルを発見、駐車場にスカちんを停める。狭い駐車場だが、きれいにワックスかけたセルシオの隣だったら大丈夫やろ。本日の走行距離298km。チェックインを済ませフロントで商店街の地図をもらい、カメラ屋さんの場所を聞いて出発。
商店街のカメラ屋さんに到着、本日は定休日だってさ。こんなもんだろ、次。デパートに入って受付嬢に聞く。
「すいません、カメラ屋さんは何階ですか?」
「カメラは取り扱っておりません」(←こんなデパート有りか!?)
こう書くと、実にてきぱきした女性に見えるけど、5分近い会話を圧縮しています。実際はゆるゆるの会話でした(爆)。聞いた通りに行ってみると、あったあった。こじんまりしたカメラ屋さん。
「すいません、この水銀電池ないですか?」
あらかじめPENTAX SPから電池を抜いておいた。
「...ちょっとお待ち下さい」
店長らしき方がどこかへ電話して問い合わせている。その間に、店内で売っている水銀電池を見てみる。どれもPENTAX
SPに合いそうもない。水銀電池って、なんでこんなに種類が多いんや?
「お待たせしました。」
電話を終えた店長さんが戻ってきた。
「このカメラに合う電池は、現存しません」
店名と住所と電話番号、簡単な地図を書いて頂いたメモを受け取り、大急ぎで出発。ここは東京じゃないんで、店の閉店時間が気になる。
○○電気に到着。なかなか大きな電気屋さん。家電総合デパートみたいだ。店内に入るなり、店長さんらしき人が、声をかけてきた。
「いらっしゃいませ、何をお探しでしょう?」
「ええと、LR41という水銀電池なんですが」
「それなら、こちらでございます」
数百種類ある商品コーナーから、迷うことなく水銀電池コーナーへ。
「LR41は、こちらでございますね」
「これ1つ下さい」
「かしこまりました。レジはこちらでございます」
「助かりました。どうもありがとうございます!」
支払いを済ませ小走りに出発。この間わずか1分!今これを読んでるフリーター諸君、よく覚えといて下さいよ〜。
「今晩は!」
「いらっしゃい、どうしました?」
「ハア、ハア.... PENTAX SPの電池アダプターが欲しいんですけど...」
「ああ、先程問い合わせがあったお客さんですね?これがアダプターですよ」
さっきのカメラ屋さんは、ここに問い合わせていたらしい。修理センターの方は既にアダプターを用意して下さっていた。
「電池、LR41はお持ちですね?動くかどうかちょっと調べてみましょう。カメラを拝借」
修理センターの方が興味深そうに、あっくんのPENTAX SPを調べる。間違いない、この方もカメラのプロだ。一眼レフをお持ちの方ならお分かりでしょう。通常レンズの脱着ははめ込み式だから、本体とレンズをそのまま引き離せばいい。ところがPENTAX SPは大昔の一眼レフ、レンズはねじ込み式になっている。これを知らないカメラ屋さんが多いこと多いこと。ところがこの方は、そんなことは先刻ご承知の様子。視力検査するような台の上にカメラを置き、何やら絞りを調べている。辺りを見回してみると、PENTAX SPよりはるかに古そうなカメラ達がごろごろしている。
「大丈夫ですね、壊れていません。電池切れでした。但し、今までの電池とは電圧が違いますから、ASA400のフィルムの時はASA200に、ASA100のフィルムの時はASA50に、それぞれ合わせて下さい」
「どうも、ありがとうございます!旅先で貴方のようなプロの方と出会えて、本当に助かりました!」
「使用済みの電池は、こちらで処分しておきますね」
「ありがとうございます。ほんと助かりました」
こうしてあっくんのカメラPENTAX SPは、プロフェッショナルの方々の仕事で見事1時間で完全復活!
ホテルに戻って、早速レンズカバーを接着。しばらく両手で持って固定する.... よっしゃ!試しにレンズにはめ込んでみる。OK!指で強めに圧力をかけても、びくともしない。これも完全復活!
はあ〜、それにしても今日はいろいろあったなや。無責任な学生のハンパな遊びでいやな思いをしたが、それを振り払ってくれたのは、大人達のプロの仕事だった。やっぱ仕事に関してはプロフェッショナルにならにゃいかんぜ、みんな!
スカちんは傷ついてしまったが、走りに関しては絶好調。ビデオもカメラも復活したし、とにかく今は気分いい!
「すいません、サワー2つと成吉思汗もう2人前追加ね!」
うまいうまい!焼き肉ってのは、ほんと元気が出るね。明日はいい一日になりそうな予感。