うみへび座、かに座


ギリシャにヘラクレスという勇者がおりました。
ヘラクレスは、全能の神ゼウスと、ミュケネの王エレクトリュオンの娘アルクメネとの間に生まれた子供です。
神と人間との間に生まれた子でしたが、ゼウスの血を受け継ぎ、大変勇敢で力持ちの勇者になりました。
ヘラクレスは、アルゴス地方の王エウリステウスに仕えていました。そして、その王に次々に難題をかけられ、全部で十二の冒険をするのです。
ヘラクレスが、第一の冒険で、ネメアの大獅子を倒して毛皮を持って帰った時、王は毛皮を見るのも恐ろしくて会ってくれませんでしたが、第二の難題をその門前で人を使って伝えてきました。
それは、アルゴスという町の近くのレルネの沼に住む巨大なヒドラを退治する事でした。
ヒドラは、九つの頭を持つ巨大な水へびです。どの頭からも毒ガスを吐き、いくら頭を切り落としても、すぐ頭が生えてきます。特に真ん中の頭は、何をしても絶対死なないのです。
このヒドラは、人間や家畜を丸呑みして、アルゴスの人々を脅かしていました。

ヘラクレスは、甥のイオラオスに手綱を取らせて馬車で出発しました。
レルネの沼の近くの丘の麓で、ヒドラの洞穴を見つけました。
ヘラクレスは、その洞穴深く、火矢を射込みました。
すると、すぐにヒドラが怒って出てきました。
ヘラクレスは、ヒドラの毒ガスを物ともせず、こん棒で片っ端から頭を叩き潰していきました。
ところが、頭をつぶされるたびに、そこから二つの頭が生えてきます。
これには、さすがのヘラクレスも驚きました。
その上、不意に大きなかにが現れて、ヘラクレスの足を挟み込んで攻撃してきました。
怒ったヘラクレスは、力ずくでかにを引き剥がし、そのまま足で踏み潰しました。
それから、イオラオスに、たいまつに火を点けさせました。そして、剣でヒドラの頭を次々に切り落としながら、イオラオスにその切り口をたいまつで焼かせました。焼かれると、ヒドラの頭は、生えてこないようでした。
とうとう最後の頭のみ残りました。真ん中の頭です。それを切り落としましたが、死なないので土に埋め、重い石を上に乗せました。
ヘラクレスは、自分の矢を猛毒のヒドラの血に浸しました。それ以来、ヘラクレスの矢は、無敵の矢になりました。

ヘラクレスの死後、その武勇を称える為に、ヒドラは天に上げられて、うみへび座という星座になりました。
そして、ヘラクレスにあっけなく踏み潰されたかにも、かに座という星座になりました。
このかには、ゼウスが人間に生ませた子供が活躍するのを良しとしない、ゼウスの妃のヘラが、妨害しようと遣わした者でした。だから、ヘラは、言い付けをきいて死んだ労をねぎらって、かにを星座にしてやったのです。



うみへび座の目印は、その心臓部にあたる赤い星アルファルドです。
北斗七星から、しし座のレグルスを通過して、そのまま南の空に到達した所に輝いています。
左の図は、横方向がかなり縮まってしまいましたが、実際は視野で百度に渡る横に長い星座です。


かに座は、しし座の西側にある小さな目立たない星座です。





Minomushi
'99.5.16

MIDI提供
Nobuo Takenaka