She's Leaving Home

ビートルズ・ファンへの勧誘


高専時代の同級生の友達にJ君がいました。髪の色素が薄いのか赤っぽくて、にんじんというあだなで呼ばれていました。まだ、私たちの頃は、髪に色が着いているなんて、珍しかったんですよね。
J君はまじめな勉強家で、頭が良く、成績は学年でトップクラスでした。
ところが、遊びの方はだめなようで、それから音楽も歌謡曲を聴いていたようでした。
私の周りにはビートルズファンが何人かいて、時々ビートルズの話で盛り上がっていました。J君は、その中に時々入ってきて、わからないながらも、ふんふんと話を聴いていました。
興味を持ってくれたようなので、少し音楽も聴かせてあげました。やっぱり、ふんふんと聴いていました。
ある時、J君がえらく興奮して顔を真っ赤にしながら、私の所にやってきました。
聞くと、驚いた事に、ビートルズを聴く為にステレオセットを買ったと。それから、ビートルズのアルバムを全部買ったと。私は、ぶっとびました。心底ビートルズファンを自負する私でさえ、その頃は録り貯めたカセットテープをラジカセ・マック18で聴いていたんですから。
さらに聞くと、親に買ってもらったんですと。彼、金持ちの子供だったんですねぇ。
そして、J君が言うには、SGT.ペパーズに入っている「She’s Leaving Home」が、全曲の中で一番良いという事でした。なにしろ、詩が良いと。この曲の詩は、将来を夢見て家出していく娘を黙って見送ってやる親、そういう情景を描いています。J君は、詩を見ながら曲を聴くと、涙さえ出てくると言いました。
急に強力なビートルズファンが現れたものです。
J君が、私の周りのビートルズファンの中で、俄然発言が強くなった事は言うまでもありません。


She's Leaving Home
(Paul)
アルバム「SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」のA面六曲目に収録
1967年6月1日リリース

ポールの弦楽シリーズ第三弾と言うべきか。
「Yesterday」では弦楽四重奏、
「Eleanor Rigby」では弦楽八重奏、
この曲では、それにハープが加えられた。
私は、なんだかお涙頂戴の詩で、にんじん君ほど好きではありません。
でも、名曲ではありますね。


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1999.5.16 Minomushi