Come Together

ステレオのビートルズ


私は、初めてステレオで音楽を聴いたのは、中学生のとき、トンカツ屋の息子の家でした。その同級生は、実家のトンカツ屋が繁盛していたらしく、金持ちの息子で、まるまる太っていました。なぜか、突然他の同級生と一緒に家に招待されたんです。普段、あまり話をした事が無いのに。
その家では、定食屋もやっていました。その店が繁盛していたようです。そして、みんなでトンカツ定食をごちそうになりました。
食べるとき、付いてきたおしんこに間違ってウスターソースをかけてしまって、恥をかいてはいけないと、つい、
「これが、うまいんだよ。」
と言ってしまいました。その場はそれで済みました。そうかぁ、というような反応だったんです。
ところが、次の日、学校に行ったら、みんなにくすくす笑われて、友達にきいたら、おしんこに間違ってソースをかけた事が、みんなに知れ渡っていたんです。愕然としました。変な見栄をはらなかれば良かった。
トンカツ屋の息子は、良いステレオ装置を持っていました。家具調で、全体に木目があり、扉を開けると、レコードプレーヤーが現れます。そこで、トンカツ屋の息子が好きだという「スージー・クアトロ」を聴かせてもらいました。どんな音楽だったか、よく覚えていませんが、なにしろロックだったと思います。
ステレオの音の良さは、私のラジカセと雲泥の差で、迫力もあったし、音が空間に飛び出して聞こえて、これがステレオかと感心しました。ステレオでビートルズが聴けたらいいなと、この時初めて思いました。

そのうちに、私の弟がステレオを買いました。といっても、オールプラスティック製で、レコードプレーヤーに小さなスピーカーが付いているという、粗末なものでした。それでも、聴いてみたいと思い、アルバム「ABBEY ROAD」を買ってきて、聴いてみました。ところが、トンカツ屋の豪華家具調ステレオとは全然違い、音が悪く、レジカセのマック18の方が良いほどでした。
一気に、ステレオ熱が冷めました。

自分でステレオを買ったのは、就職してからです。ボーナスを全部つぎ込んで、コンポーネントステレオを買いました。
社員寮に入ったのですが、隣の住人がステレオを持っていたので、うらやましくなったんです。
買ってきて最初に聴いたのは、一枚だけ持っていたビートルズのアルバム「ABBEY ROAD」でした。
1曲めの「Come Together」のイントロの、ポールのベースの重低音がなったとき、大感動しました。ドラムス、ギター、それぞれのパートの演奏が良く聞こえ、なんてカッコ良いんだと、また感動。
中学の時、トンカツ屋で恥をかいて以来、二十歳を過ぎて、ステレオの良さを再認識しました。

私は、ビートルズのモノラル版を持っています。「WITH THE BEATLES」です。モノラルシリーズとしてあって、珍しいので買いました。その解説によると、ビートルズは、その中期までモノラルとして録音をしていて、それをステレオに振り分けていたそうです。だから、モノラルで聴く方が自然で、ステレオに振り分けるときに消えてしまった音まで聞こえる、との事です。
私は、就職するまで、ずっとモノラルで聴いていたので、自然に聴けましたが、なるほど解説の通りかも知れません。ただ、ステレオのレコードをモノラルで聴いても、だめですけどね。


Come Together
(John)
アルバム「ABBEY ROAD」 A面1曲目に収録
1969年9月26日 リリース

リリースは、「LET IT BE」より前だが、
録音はこのアルバムの方が後なので、
事実上のラストアルバム
各パートの詩は、メンバー一人一人のことを歌っているそうです。


'99.5.16
Minomushi

MIDI提供
Nobuo Takenaka