Taxman

卒業コンサート


高専の時、数あるクラブの中に、軽音楽部がありました。
軽音楽といっても、要は、ロックバンドなんですが、学園祭のコンサートを始め、どこかを借りてコンサートを開いたりして活動しているようでした。
練習場所は、クラブですから、もちろん学校でした。
校門近くの校舎の四階のすこし広い教室を割り当てられていました。
その軽音楽部の中にも、二人友達がいました。
卒業を半年後ぐらいに控えたぐらいの頃でしたか、その友達が私の所に相談に来ました。
彼が言うには、卒業記念にコンサートをやるという事でした。それもビートルズをやるということで、さらに、ビートルズが「Let It Be」の映画でいきなり屋上で演奏したように、上野の公園でいきなり演奏するというのです。
私は驚きましたが、すぐうれしくなりました。卒業記念のビートルズコンサート、素敵だと思ったんです。
それで、自他ともにビートルズファンを認める私に、演奏して欲しい曲はあるかと聞きに来てくれたのです。
私は、ライブで演奏し易い曲が良いと考え、そしてその頃好きだった「Taxman」をリクエストしました。
友達は、快く承諾してくれました。
その後、彼らは一所懸命練習しているようでした。
私は、すごく楽しみでした。
たまに、私のクラブが無い日に、授業が終わって帰ろうとすると、校門の所で彼らの演奏が聞こえてきました。そこで、わくわくして、しばらく聴いていたこともあります。
それから、かなりの日数が経って、またその友達が、今度は沈うつな表情で、私の所に来ました。
いろいろ調べてみたら、なんだかやばそうなので、止めたと言うのです。卒業して、就職も控えているし、大事を取ったという事でした。
私は、がっくりしました。でも、友達の方が落ち込んでいたので、なぐさめてやりました。
数日後、また校門を通りかかると、彼らの演奏が聞こえてきました。
コンサートが中止になったのに、ビートルズを演奏していました。その演奏は、素晴らしいものでした。
私は、リクエストした「Taxman」が演奏されるのを待ちました。
そして、演奏されました。私は、校門の所で、ひとりでたたずんで聴いていました。
なんだか目頭が熱くなってしまって、演奏が終わったとき、知らず知らずに拍手をしていました。


Taxman
(George)
アルバム「REVOLVER」 A面1曲目に収録
1966年8月5日 リリース

タックスマンとは、税金を取りたてる人ですね。
イギリスって、税金が高いそうで、
ジョージ・ハリスンが、それを皮肉って作った曲だそうです。
歌詞を読むと、ほんとにおもしろい。


'99.8.22
Minomushi

MIDI提供
Nobuo Takenaka