スカちんを動かし、その車に近づく。日高山脈の緑に見事マッチングしたメタリックグリーンの車体、現行車にはない色。4ドアなのにファストバック!こんな車、あっくんが知っている限りただ1車種しかない(といいつつ、これを書いている2001年2月現在、プリメーラが面白いデザインを出してきましたね)。その車の横にスカちんを停車する。ご覧下さい、これがその写真です。
復活したPENTAX SPで撮影。これはまぎれもなく、2000年8月に撮影したもの。昭和50年代ではないですよ(^^) |
「こんにちは!」
運転席で初老の紳士がパンを食べていた。
「懐かしい車に乗ってらっしゃるんですねえ」
「...!ああ、この車?そうだねえ」
車を見て声をかけられたこと、あっくんのスカちんを見たことで全てを把握したようだ。旧車オーナーの間では、そんなに多くの言葉はいらない。
「ちょっと車を見せて頂いてもいいですか?」
「ああ、いいよ」
食事を終えた紳士が運転席から出る。ところで「紳士」じゃ書きにくいため、「A氏」と呼称させて頂くことにする。A氏の車内を拝見させていただく。ローレルのように大きく角度の付いた計器類がドライバー側に湾曲している。決して広くはない室内、独特の個性を放つ曲線で構成されたスタイリング。これが日産バイオレット1600GL!
センターコンソールにはテレビが追加されている。助手席には野菜ジュースを飲んだグラスや大きなポリタンクが置いてある。後部座席には、着替えやタオルなど生活用具がぎっしり。かなり長期間の一人旅らしい。ナンバープレートを見ると、何と多摩ナンバー!
「ずいぶん長旅のようですねえ、いつごろから?」
「5月くらいだったかな、まだ雪が残ってて苦労したよ」
「ごっ、5月!? それでいつまで?」
「雪が降るころだから、11月くらいまでかなあ...」
「失礼ですが、ご職業は?」
「無職だよ、年金で生活している」
お歳を聞けば65才という。
「この車、一つだけオリジナルじゃない部分があるんだ。どこだか分かる?」
「さあ?...ドアのモールですか?」
「あそこはオリジナルだよ」
本レポートをお読みのみなさんも、写真を参照してご一緒にお考え下さい。どこだかわかります?
「ホイールキャップだよ。オリジナルは何年か前に走行中に1個外れてしまって。探したんだけど見つからなかった」
ホイールキャップか。そういえばスカちんのオリジナル鉄ホイールは、家の物置にしまってあるが、あれにもキャップがついてた。でも、2〜3個しか無かったなあ。
「ところで、これからどちらまで?」
「釧路だよ。車検なんで、これから根室の修理工場に行くんだ」
「釧路だと、そろそろ出発しないと今日中につけませんね」
「そんなに飛ばさないよ。3日後に釧路のホテルを予約してあるから、時間はたっぷりある」
「3日後!? その間どうなさるおつもりで?」
「さあ、どっかで寝るだろうねえ...」
着いたところが目的地か。一週間でがつがつ遊びまくるあっくんの旅と違って、A氏の旅は時間がゆっくり流れるようだ。
「でも、どうしてわざわざ根室まで車検に行かれるんです?」
「根室に腕のいい職人がいる修理工場があるんだ。この車はあそこにしか触らせないよ」
今考えると、痛恨の極み!なしてその修理工場の名前だけでも聞いとかんかったかねえ。数年前A氏は、その修理工場でワイパーを交換したらしい。この意味、旧車オーナーの方なら分かりますよね?バイオレットの純正ワイパーが根室にあったんですぜ!そう言えば、オレも数年前根室で一泊した時、スカちんのアイドリングがおかしくなったことがある。クーラーを入れてもアイドリングアップしない。そこで、根室から120km離れた釧路日産で見てもらった時、ボンネットを開けた釧路日産の方がすぐにバキュームホースの割れを発見、あっという間に(無料で)交換して下さった。夏場とは言え、根室の昼夜の激しい温度差でバキュームホースが割れたらしい。その時、スカちんを懐かしそうに目を細めて見ていた釧路日産の方、あの顔を今でも忘れない。北海道の東の果ては、旧車に優しい土地かもしれない。オレも来年、また納沙布岬まで行ってみるかあ。
逆光なんでうまく撮れてないが、これがフロントからの写真。バンパーが役に立ちそうにないほど突き出したフロントノーズ(笑)。斬新なフォルムです。ちなみに後ろにログハウス(トイレ)が見えますね。その手前に大きな大理石があるでしょう?あのそばに、日高の名水が流れ落ちてます。 |
さらにバイオレットを見て回る。リアはリーフスプリング、たしかバイオレットはブルーバードUと兄弟車だったから、GLではなくSSSだったらセミトレーリングアームだったはずだ(←間違ってないですよね?)。そう言えばバイオレットは、オレも何回か乗ったことがある。この車はタクシー車として活躍していたから(笑)。
「さすがに下回りは錆が進行してますねえ。レストアしないんですか?」
「ああ、もういいんだ」
「どうして?こんなにいい状態なのにもったいない」
「こいつ(バイオレット)が動けなくなる前に、オレの方が先に動けなくなるから」
天馬街道を西へ一気に駆け下る。馬の親子が見えてきた。戻ってきたねえ、日高に。元々あっくんの旅は、馬産地日高を旅するのが目的だった。それが北海道の距離感を把握してきたので、富良野、美瑛、そして道東と、旅の範囲を広げていった。だから日高には「帰ってきた」という感覚がある。
優駿ビレッジAERUに到着、広々とした駐車場にスカちんを停める。AERUとは馬と触れ合うことのできるホースパーク、広々としたトレッキングコースで乗馬が楽しめる。宿泊もでき、最近大浴場に温泉もひいたはず。浦河町を訪れるなら、AERUはお薦めです。そうそう、インターネットでもAERUの公式ホームページがある。掲示板で活発に旅行客と会話しています。無断リンクはるわけにもいかないので、ここでは控えますが、サーチエンジンで探せばすぐ分かるはず。
ここに来た目的は乗馬ではない。あっくんは以外というかやっぱりというか、体重は結構重い。75kg近くある。騎手だったらハンディ戦でも乗れやしない。乗馬したら馬が可哀相。ここではパークゴルフが目的。一人500円でプレーできる。北海道にはいくつもパークゴルフのコースがある。パークゴルフとは、どっちかというとゲートボールに近い。一本のウッドで大きなボールをたたく。ルールはゴルフと同じ。
ちなみにあっくんはゴルフはやらない。ガキのころ遊んだ山や川をゴルフ場に潰されたんで、ゴルフには恨みしかない。だからゴルフは絶対やらない。名華学園に入学しなくてよかったあ〜!(←この漫画、何ていうタイトルでしたっけ?)
で、AERUのパークゴルフだけど、実はこの日のメインエベント。結局2ラウンド回った。OUTの優駿コース、ここの7番ホールのグリーンが難しいんだ。坂の途中にカップがあるんでなかなか寄せられない。でも、本レポートでパークゴルフの内容を書いても面白くも何ともないので、詳細はオミット。
1ラウンド目:OUT49、IN44、合計93
2ラウンド目:OUT43、IN37、合計80
初めてのころと比べて、だいぶ成長したぜ!来年の目標は70代だな。
日高の山も今宵限り〜!
AERUパークゴルフINアエルコース、6番ホールでバーディをとった記念に撮影。後ろに見えるのが宿泊施設。 |
パークゴルフを終え、晴れ渡った高い青空を見上げる。遠くに見えるようになった日高の山々、木々の狭間から聞こえる野鳥のさえずり。今年の北海道旅行も、もう終わりだなあ.... 出たなショッカー!(←もういい)
これは1999年に撮影したもの。ここから乗馬して、太平洋が一望できる丘の上までトレッキングができる。 |
AERUに別れを告げ出発、今年の北海道最後の宿泊地、静内を目指す。いつもの通り左折して海岸線の国道235号線に出ようと思ったが、右折して山の方に行っても静内へ行けるみたい。標識が出ている。静内への道道だな。裏道発見、前述のように海岸線は混むので、道道に入る。
スカちん以外一台も走っていない道道、夕暮れ時の日高山脈のふもとを走る。
本レポートをお読みの方は、車好きの方がほとんどでしょうから、よく分かってらっしゃると思いますが、一応説明させて下さい。
車ってスピードを落とせば安全てものじゃないですよ。コーナーリング中にブレーキ踏むなんて自殺行為、慣性が働いてアウト側に吹っ飛びます。特に車高の高いワンボックスカーだったら、その危険性が高い。電車に乗るとよくあるでしょ、電車が減速したら進行方向に体が傾くことが。小田急で通勤してらっしゃる方だったら、成城学園前〜下北沢間で毎日のように経験してるでしょう?
あれと同じことがコーナーリング中に起こります。ブレーキを踏むと当然車は止まろうとしますから、今まで走っていたエネルギーが慣性となって、車体をアウト側に持っていこうとするわけですね。じゃあどうするか?コーナーに入る前に(直線で)ブレーキを踏んで、十分に減速しておくわけです。それからステアリングを切り始める。同時にアクセルを踏み込んで、走ろうとする力をタイヤに与え、グリップを稼ぐわけです。これがスローインファーストアウトの基本。コーナーリング中はブレーキじゃなく、アクセルを踏むんですよ。
で、コーナー前で減速すると当然エンジン回転が落ちますから、右足のつま先でブレーキ、かかとでアクセルを同時に踏んで、減速かつエンジン回転を落とさないようにする。同時に左足でクラッチを切ってシフトダウン、エンジン回転が落ちないうちにクラッチミートしてトラクションを稼ぐ。これがヒール&トゥ。F1レースを見てると、コーナー手前でドワオーン、ドワオーンってひときわエンジン音が高くなるでしょ?あれがそうです。最近のF1はセミオートマなんで、ヒール&トゥではなく左足でブレーキ踏んでるらしいですけどね。ちなみにあっくんは普通免許なんで、連続シフトダウンなんて無理。一回が限度です。
どーでもいいけどレガシー野郎、あっくんが直線でスピードを落とすと、すぐに追いついてくるね(^^;
静内中札内線に合流、ここでやっとレガシー野郎とおさらば(←死語)することができた。後は静内まで通常の市街地走行。ちなみに静内中札内線といっても、中札内には行けません。日高山脈が通せんぼしてます(林道でもあるのかな?)。
静内に到着、今宵の宿はホテルローレル。スカイラインに乗っててもホテルはローレル。楽しいローレル愉快なローレル、ローレル、ロー(おい!)
本日の走行距離190km。襟裳岬をショートカットできるようになったんで、楽になったなあ。チェックインする時に受付嬢が、
「お客様、朝食はお付けしなくてもよろしい?」
近くのスーパーでビールと簡単なつまみを購入。ところで今晩のメシはどうしようかねえ。今年も一通り北の幸を食ったんで、食いたいものが思いつかない。こういう時は居酒屋が一番、メニュー見たら食いたいものが見つかるでしょう、きっと。近くの居酒屋に入る。
タコざんぎをつまみに、サワーをゆっくり飲む。それにしても、今年の旅行はいろいろあったなあ。思い出しながら、来年行きたい所を考える。知床はもういいな。ケンメリの木は写真撮ったから、今度は中標津の直線道路で写真撮ろう。で、その後根室まで足延ばして、自動車修理工場でも探すかあ。
明日はいよいよ北海道最終日。オグリにお別れの挨拶して、ゆっくり温泉にでも浸かろう。とその時、女性の店員さんが、
「お客さん、お飲み物のおかわりはよろしい?」