三日目(その2)


次の目的地は富良野、美瑛。特に美瑛で、ある儀式(笑)を予定している。急がねば。国道235号線を冨川の手前まで戻る。日高ケンタッキーファーム(通称ケンタファ)への標識どおりに右折、道道に入る。ケンタファ... 確かクラッチとか、アクセルとかいう名前のかわいい馬がいたはずだ。これでブレーキがいたら完ペキやね(笑)。しかし今回は寄っている暇は無い。ケンタファを素通りして、一気に平取(びらとり)へ。ここで国道237号に合流、後は富良野まで一直線だ。平取か... 予定には無いが、あるところへ少し寄り道することにした。沙流(さる)川沿いのわき道に入り、少し行くと... あったあった、ここが稲原牧場。競馬ファンの方なら、私が何をしたいのか、もうお分かりでしょう。そう、ここはサイレンススズカの生まれ故郷。故郷に戻ったサイレススズカに挨拶しとこうと思ってね。駐車場にスカちんを停める。他には誰もいない。去年あった記帳小屋も取り払われている。訪れる人も少なくなったかな?線香は無いが、墓前に手を合わせる。忘れもしない1998年秋の天皇賞。あの時オレは、府中の1コーナーの芝最前列にいた。返し馬の時、オレの目の前をダクで駆けて行ったあの顔。武豊と共に、自信満々の表情だった。それが15分後にあんなことになるとは...

この仔だけではない。タガノテイオー、ライスシャワー、ワンダーパヒューム、サンエイサンキュー、ケイエスミラクル、マティリアル、ノアノハコブネ、そしてテンポイント、キーストン... 数え上げればキリがない。長年競馬をやっていると、つらい思い出も増えていく。

さて、行こうかねえ。237号に戻り北上する。雲が取れて、暑い日ざしが戻ってくる。天気予報が外れた。美瑛での儀式のためには好都合。明日からは全部雨でもいいから、今日だけは晴れててくれ。

二風谷(にぶたに)を走る。ここはアイヌの里で有名な所だが、あっくん的にはトウカイテイオーの里で有名(笑)。道路はガラガラ、黒煙撒き散らしのトラックに出くわすことも無い。快調快調、アップダウンの続く緩やかなワインディング道路を5速80km/hで進む。と、前方にちんたら走るワンボックスカー発見。遅いだけならともかく、ふらふら蛇行している。居眠り運転かな?ちょっと怖いので、車間距離をとって追従。見通しの効く直線に出るのを待って一気に加速、追い越しをかける。とその時、

「危ないっ!」

ワンボックスカーのドライバーがジュースの空き缶を放り投げた。当然、対向車線に出ているスカちんの目の前に飛んでくる!急ブレーキ&シフトダウン!走行車線に戻る。まさに間一髪!空き缶攻撃をかわせた。

「なんだあ?あの野郎、抜かせないつもりか!?」

ルパン三世カリオストロの城のカーチェイスシーンそのままのシチュエーション!ここはルパン三世'80をBGMにお読みください。

「まくるぞ〜っ!」

再び直線道路になるのを待って今度は3速で加速、幅寄せされても大丈夫なように、できるだけ離れて追い抜きをかける。

「とったあ〜っ!」

ワンボックスカーの運転席を睨む。すると、40前後のオヤジがへらへら笑って運転している。後部座席には、はしゃいでいる子供達と大きな荷物が... 観光旅行だな。スカちんに追い越されていることにも全く気づいてない。このバカオヤジには、運転中にバックミラーやサイドミラーを見る習慣がないらしい。ていうか、大自然のど真ん中に平気で空き缶放れる奴なんだから、公共性/公衆道徳といったものが欠落してるんだろう。こんなバカに育てられた子供達が、将来ナイフ振り回したりするんだろうな。その前に単独事故起して、全員死んだほうがいいぞ。まあいいや、バカは放っといて一気に加速する。それにしても、一人ルパン三世ごっこに興じるオレも相当なバカ!(爆)

占冠(しむかっぷ)に到着、ここは国道が交差する大きな分岐点だ。あっくんが向かっている北に行けば富良野、東に行けば日勝峠を越えて帯広へ、西に行けば夕張方面、南に行けば、今まで走ってきた日高へ抜ける。冬は雪が深い豪雪地帯だ。さあ、いよいよ日高峠越え、トラクションを効かせてアクセルを踏み込む。ヴオオォーン!L20がそれに答える。踏ん張るポテンザRE710kai。日高の山々がとてもきれい。一度晩秋に来てみたいもんだ。

頂上手前ででっかいトレーラーに捕まる。一気に減速、2速30km/h走行。まあいい、景色を楽しみながらゆっくり走ろう。それにしても前のトレーラー、でっかい木を積んでるなあ。直径1mはあるんじゃねえか?あの積荷が崩れたら、避けきれるかあ?怖いんで十分車間距離をとることにする。峠も下りになり、トレーラーも少し加速した。しっかし、ほんとここは眺めがいい。あっくんお気に入りのルート。

峠を駆け下りると追い越し可になる。ここでトレーラーをパス、一気に加速する。針葉樹が立ち並ぶ大自然のど真ん中を縫うようにスカちんは走る。それにしても、こんな所に何のためらいも無く、空き缶やタバコを捨てれる奴ってどういう神経してんだ?

ふとバックミラーを見ると、バイクとワゴン車が一台ずつ、スカちんの200m後方をつかず離れずついてきている。ほう、北海道の走り方をわかっとるやないけ。オレを餌にするつもりやな。まあいい、今年のスカちんは一味違うぜ。秘密兵器を搭載している。

しばらく距離をおいたランデブーが続く。と、

ピーピーピーッ!

一本道の直線道路で、突然秘密兵器がエマージェンシーを発した。

「どこだあ〜!?」

後続車に知らせるため、ポンピングブレーキで減速、左右を見渡す。こんな見通しのいい一本道で、発信源はなんじゃ?すると、小さな納屋の影にいました、いました!ツートンカラーの国家公務員専用車両が(爆)

北海道の国家公務員様、さすがっ!でございます!交通量のまばらな一本道、見通しのいい一本道、辺りに一軒の民家も無い一本道におけるそのご熱心なお仕事ぶり、真にご苦労様でございます!不況で庶民は苦しんでいるというのに、その単純労働にめげないたくましさ、感心することしきりでございます!事故の原因はスピードの出しすぎなのだ、だから取り締まるのだ、それには一番スピードの出やすい一本道がいちばんなのだという、バカボンのパパのような三段論法、実にお見事でございますっ!

わたくし思いますに、市街地、天候、路面状態、交通量、あるいは昼夜の違いによって、同じ50キロ道路でも、徐行しなければならない時があると考えます。例えば、ウイークエンドの夜、繁華街を法定速度の50km/hで走るのと、今この道を80km/hで走るのと、どちらが人身事故を起す可能性が高いでしょうか?

そこで提案なのですが、真冬のアイスバーン状態の一本道で、一度このようなお仕事をされてみてはいかがでございましょうか?法定速度違反者は必ずや急ブレーキをかけ、あなた方の直前で停車してくれる事請け合いでございます!

これだけ提案すれば、感謝状くらいもらえるやろ(←おーい!)

ほんとに貰ってたりして(謎)
それにしても、スカちんの秘密兵器に改めて感謝!1km以上先から感知してくれる。

さてさて、再び加速したスカちんは国道38&237号に突入、緩やかな坂を駆け下る。視界が開け、富良野の田畑が広がった。やっぱBGMはさだまさし?しかし、あっくんのBGMは夏の高校野球決勝戦。踏切を越えて麗郷(ろくごう)の森方面へ走る。道なりにまっすぐ20km近く進んで、突き当たった所がふらのジャム園。駐車場に停車、無農薬/無添加の新鮮な何十種類ものジャムを試食する。ここは何でもジャムにしてしまうところで、ニンジンジャム、メロンジャム、スイカジャムetc.珍しいジャムがたくさんある。中には「これはちょっと...」と首をかしげてしまうシロモノもあったりする(苦笑)。そのうち納豆ジャムとかサンマジャムとか作ってしまうんやないやろね。

プルーンジャムやブルーベリージャム等何点か購入、急いで出発する。ちなみにここには、麗郷の展望台とか、石の家とか、五郎がクマに襲われたところとか、北の国からファンにはたまらない名所が数多く散在する。が、北の国からを一度も見たことの無いあっくんには、何とかに真珠(笑)、さくさく今来た道を戻る。

ふらのジャム園の上にある、麗郷の展望台。1999年撮影。ここはシャコタン車だったらきついかも...

次の目的地はチーズ工房。富良野市街地から空知川を越え、西に向かって到着。と文章で書けばすぐだが、ジャム園からチーズ工房までは結構距離ありまっせ。

ここはチーズの製造工程を事細かに学べるようになっているが、社会科見学に来たわけではないあっくんは、一目散にチーズの試食コーナーへ(笑)。何切れか試食させて頂く。ここのチーズは、ほんと濃厚な味わいで、新鮮さがじかに伝わってくる。チェダーチーズを購入した。あっくんが帰りかけると団体客が到着、試食コーナーはとたんに戦場と化した(爆)。一本のつまようじで一度に3切れのカマンベールをつつける能力を持った歴戦の勇者、おばさん軍団にかかったらひとたまりもない。あっという間に試食用のチーズは無くなった!(核爆)もうちょっと到着が遅れてたらどうなっていたことか... ほっと胸をなで下ろすあっくんでした。それにしても、あれじゃ試食用のチーズ代だけでもバカにならんぜ。観光客の皆さん、ただ食いだけはやめようね。

さて次はニングルテラス。ここは行ったことが無い。チーズ工房の近くにあるおみやげ屋さん。行ってみると、高級そうなホテル(富良野プリンスホテル?)のふもとにあった。静かな森の中に、ログハウス風のおみやげ屋さんが何軒も並ぶ。昼間でも薄暗い森、CWニコルさんが出てきそうな場所だ(笑)。散策していると、こんな立て札が。

「ここにニングルがいます。大きな声を出さないで下さい」

へえ〜、ニングルって生き物の名前だったのか。何だろう?立て札のそばを音を立てないように、そっとのぞき込む。小川が流れ、せせらぎが聞こえる。ニングルって魚?カエル?それともリス?生き物らしきものは見つけられなかった。
さらに奥へ進むと、また立て札が。

「ニングルの家」

見ると7人の小人が住んでいそうな家のおもちゃが、たくさん飾ってあった。

なんじゃあ、こりゃあ〜〜っ!

松田優作でなくても叫びたくなるぜ。ニングルって森の妖精のことやったんか!物音一つ立てず、そっと探し続けていたオレって一体...
まさにバカ負け、オレが悪かった!すまん。

そそくさとニングルテラスを出発、チーズで胃に膜つくった次はワイン工場(笑)。高校野球は智辨和歌山が優勝、日も傾く時間になる。だいぶ焦ってきた。再び富良野市街地に戻り、国道237号へ。おっと、道を間違えたみたいだ。富良野の農道は碁盤の目のようになっているから、地図見なくても方向感覚さえ失わなければ何とかなる。農道を戻ると、ワイン工場への看板みっけ。あっという間に到着。ここは高台にあって、富良野を一望できる。正面には雄大な大雪山系が。まさに絶景!

この写真は1999年に冨田ファームで撮影したもの。雄大な大雪山系に雲がかかっている。ワイン工場からも同等の俯瞰を眺めることができる。

ワイン工場で一口二口赤白ワインをそれぞれ試飲。富良野ワインはけっこうフルーティな味わいが特徴。あっくん的にはもうちょっと渋味があったほうがいいなあ。試飲させて頂いたお礼におみやげを購入。帰りがけに試飲コーナーを見ると、二人の観光ライダーが試飲用の樽から、持参のペットボトルにワインをなみなみと注ぎ込んでいる。羊蹄山のわき水と勘違いしてんじゃねえぞ。もうちょっと常識をわきまえようね、観光ライダーさん。

さてさて、富良野観光はこれで終わり、次はいよいよ美瑛で儀式じゃ。ワイン工場を出発、農道を走る。それにしても、ここで検問やってたら全員捕まるな(爆)。道がY字に別れる。標識を見ると、右が冨田ファーム、左が... 美瑛!?

右の冨田ファームはラベンダーで有名な所。何度も行ったことがあるんで、道は知っている。問題は左。この道は知らない。ひょっとしたら美瑛への近道かもしれん。時間的に余裕の無いあっくんは、左にステアリングを切った。