一日目(その2)



 

「いやあ〜っ、ジャパン乗ってるんですか?」

一人のお兄さんが気さくに声をかけてきた。最近スカちんも懐かしがられる旧車になってきた。この人も、昔ジャパンに乗ってたんだろうなあ(と思った)。
「ええ、まあ」
「オレも乗ってるんですよ、ジャパンに」

「マジっすかあ!?」

見るとそこには、真紅の後期型ジャパンが!スカちんのエンジンもかけっぱなし、ドアも開けっ放し、旅費のたっぷり入った財布もスカちんに置きっぱなしの状態で、真紅のジャパンに駆け寄った。さっきの貴重品チェックは一体何だったんだあ!?

一目でかなり手の入ったジャパンだと分かる。後期型GT-ESに前期型フロントグリルを取り付け、丸目4灯に改造してある。スカちんより4〜5cm低い車体、オバフェンに太いワタナベホイール、OSgikenのステッカーに宮城3ナンバー!

おおおっ、すごかあ〜っ!

「いやあ、久々にジャパン見ましたよ。コーヒー飲みに鶴巣寄ったんだけど、北九州ナンバーのジャパンが停まってるんで、びっくりしたなあ」

聞けば、地元宮城にお住まいのI氏という。オレも今まで何回も北海道に行ってるけど、旅先でジャパン見たのは初めてだ。しかもイベント以外で、ジャパン乗りの方とお話するのも初めて。I氏は部品取り用にジャパンを数台お持ちという。本職が塗装業で、ご自分でジャパンの板金、塗装もおやりになるとか。すごいすごい、あたしとは大違いだ。

ボンネットを開け、じっくりエンジンルームを拝見させていただく。予想通りのL28 3l改にソレックス、触媒はシルビアのものを流用しているそうだから、タコ足マフラーまで手が入っているようだ。パーキングの照明しかなかったが、Iさんのジャパンには、S30から流用したエンジンルームライトがある。エアコンは取っ払って、コクピットにはお決まりの機械式油圧/油温/水温の3連メータが追加されている。サスはカヤバ。う〜ん、まさに走り屋のジャパン。

夕食時間を過ぎて駐車場も空いて来たので、スカちんを動かし、I氏のジャパンと仲良く並べる。旅先でのジャパンの2ショットなんてもちろん初めて。

「ちょっとカメラ買ってきますわ」

I氏も少々(かなり?)興奮気味に売店に走っていく。こっちは旅行なんで、当然カメラは持っている。夜のジャパン撮影会のはじまりはじまり〜。

パシャッ!

「いいねえ」

パシャッ、パシャッ!

「いいね、いいねえ」

二人でジャパンの周りをぐるぐる回りながら、シャッターを押しまくる。水着の女の子の撮影会ならわかるが、夜のPAで男二人が車を撮りまくるってのは、はたから見ればかなり危ない(爆)。
そうこうしていると、JAFのレッカー車がやってきた。

「???」

...そうか、近くに駐車していたRV車がオーバーヒートでレッカー車を呼んでたんだ。ボンネット開けてエンジンの見せ合いしているオレ達が呼んだとJAFの人が勘違いしたらしい。

「こっちじゃねえぞお〜っ!」

I氏が大声で叫ぶ。旧車のボンネット開けて覗き込んでたら、トラブってると思うわな、ふつー。JAFの人に罪はない。二人で大笑い!

ちょっと暗いですが、これがジャパンの2ショット。左側に見えるオレンジの明かりが吉野家の看板。右の青い車がJAFのレッカー車(笑)。I氏のオーディオはロンサムカーボーイ!

ふと時間が気になり始める。時刻は21時近い。鶴巣PAで既に2時間停車していることになる。予約している青森発のフェリーの時間が気になりはじめる。名残惜しいが、事情を話して出発することにした。先にI氏がジャパンに乗り込みエンジンスタート。

ヴオオオォーン!ボッボッボゥ...

L28改ソレックスの猛々しい雄叫びが響く。I氏を先頭に鶴巣PAを出発。5分弱のランデブーの後、互いにハザードで挨拶しながらI氏は高速を降りた。やっぱ今年の北海道旅行は出会いの旅になるなあ。出発時の予感的中。北海道ではどんな出会いが待ってるんだろう。さすがに時間に余裕が無くなってきたんでアクセルオン!一気に青森を目指す。

仙台を過ぎると、車の数がめっきり減る。照明のない漆黒の闇をCIBIEのハロゲンが照らす。ふとボンネットの隅に目をやると、

「おおっ、光っとるやないけ!」

なんて言ったらいいんでしょう、フロントフェンダーの先、ヘッドライト上部に、車幅灯みたいなのがありますよね。ヘッドライトの玉切れをチェックするみたいな。年月経過で色褪せてるんで、今まで光ってるところを見たことが無かった。それが今、キラリとオレンジ色に光っている。蛍みたいにきれいだ。CIBIEに変えたら光ったってことは、今までのヘッドライトが暗すぎたんやね。妙にうれしい。何気なく速度計に目をやると、おおっ!

70003km

いつの間にか総走行距離が17万キロを突破している。またきれいに揃うところを見逃しちった。20万キロの時は、オールゼロクリアされるんで、是非写真に撮ろう。

あたりに目をやると、高速道路沿いの民家にクリスマスツリーのような電飾が光っている。これで盛岡に突入したことがわかる。聞いた話では、ご先祖様がこの明かりを頼りに降りてきて、再びこの明かりから天に昇っていくという、この地方の旧盆の慣わしらしい。

一気に加速、昼と夜とではスピード感が違う。今考えると、この時平均130km/hで走ってたようだ。津軽平野でいよいよ分岐地点、このまままっすぐ走ると八戸自動車道に入ってしまう。東北自動車道の方が車線を変えるんですね。分岐すると後は青森ICまで一直線。津軽平野は真っ暗。車も一台も走っていない。この時間、東北自動車道はオレだけのもの。もう離しはしない(←おい)。完全な貸しきり状態で気持ちいい〜!車線を無視して、好き勝手走る。まさに年に一度の至福の時間(^^)

えっ?さっき好き勝手に車線を変えるやつは死ねって言ってたじゃないかって?順行車も対向車もない道路では、固いことは言いっこなしだってばあ(^^)。

花輪PAに到着、ここでいつも最後の休憩を取ることにしている。ここには「ぴょんぴょんランド」というのがあって、ウサギが飼育されている。夜更ししているウサギに草むしってやって、星空を見上げる。ここは比較的照明の少ないPAなので、天の川がきれいに見える。その真ん中に白鳥座デネブ、こと座ベガ、わし座アルタイルの夏の大三角形が広がる。毎年のことながら、いつも見入ってしまう。東京じゃ三角形しか見えないからなあ。

関係ないけど花輪PAをご存知の方にお聞きします。PAの真ん中にある交通安全のでっかい犬のオブジェ、

あれがどー見てもキツネにしか見えないのは私だけでしょーか!?

さすがに疲労がたまってるんで、カフェオレ飲んで一服。東北自動車道も残り50Km。もう一息じゃ。仙台からけっこう飛ばしたんで、時間にも余裕ができた。ゆっくり出発。既にクーラーは必要ない。外気も20℃を切っている。窓を開けると肌寒い。霊気...じゃない、冷気が一気に入ってくる。12時間前は都心でうだるような暑さの中、渋滞に巻き込まれてたのがうそのよう。山間から視界が開け、前方にかすかな緑の光が... いよいよ終点、青森IC到着。ハイカで13.500円支払う。東北自動車道680km完走。今年は体調不良も手伝って、いつになく疲れた。

一般道に出て、標識どおりに青森フェリー埠頭を目指す。ここでちょっと考える。

「今年は青森と北海道、どっちがガソリン安いかなあ...」

毎年悩むのだが、去年までの対戦成績は、2勝1敗2引分けで北海道の勝ち!(爆)

今年は引き分けと踏んで、青森で給油。リッター116円だった。これじゃあ、今年も北海道の勝ちだったかなあ。まあ、37リッターしか入らなかったからいいか。次はコンビニ。少ししか食ってないんで腹が減った。ビールとつまみ、牛丼を購入。鶴巣で牛丼の匂いをたっぷり嗅いでたんで、体が牛丼を欲してたんだろう。

フェリー埠頭に到着。時刻は午前1時を回っている。本日の総走行距離757km。ああ疲れた。アサヒスーパードライの缶を開け、一気にゴキュッ!ゴキュッ!ゴキュッ...

「ぷはああ〜〜っ!うめえ〜〜っ!!」

う〜ん、この一杯のために生きてるな!えっ?お前まだ車動かすだろって?動かすけど、公道に出ることはない。後はフェリーに乗り込むだけなんで、飲酒運転で捕まることは無いもんね〜(←かわいくないぞ)。冷めないうちに牛丼もいただく。最近のコンビニ弁当は、ほんとうまくなったなあ。食い終わって乗船手続きを済ませると、駐車場からフェリー乗場に場所を変え、車外に持ち出す荷物をまとめる。午前2時過ぎに乗船が始まった。去年はもっと遅かったけどなあ。結果的に青森港到着時刻には、あんまし余裕が無かったことになる。ぶつけないよう慎重にフェリーに乗り込んで、サイドブレーキを引きエンジンストップ。フェリーの駐車場内は排ガスが充満しているので、手早くドアロック、ハンカチで鼻を押さえて、エスカレータを駆け上がる。ロビーで1等室のキーを受け取り、チェックイン。一気に素っ裸になり、シャワーを浴びる。これが1等室の特典(^^)

年に一度の旅行だし、明日もハードドライブを予定しているので、ゆっくり体を休めるため、フェリーは個室を予約してある。ジャージに着替えて、今度はクラシックをゆっくり飲む。気分はもう北海道。クラシックというのは北海道限定のビールで、ライトな喉越しがお気に入り。フェリーの自販機で売っている。AM2:50に青森港出港。明日(正確には今日)の朝7時に函館港到着予定。テレビをつけると、ナイナイが深夜にクワガタ採りをやっている。この時期恒例の24時間テレビかな?既に思考回路が停止状態。疲れた体にビールが染み渡るぜ。ぐっすり眠れそうだ。倒れこむようにベッドイン。明日も暑くなりそうだ。おやすみ〜っ!