いて座、ケンタウルス座


上半身が人間で、下半身が馬の人間達を、ケンタウロス族といいます。彼らは、とても乱暴者として知られていました。
勇者ヘラクレスが、冒険にでかける途中で、あるケンタウロスに出会いました。
その名は、ファーロといいました。
ファーロは、乱暴ものではなく、喜んでヘラクレスを自分の住んでいる洞穴に迎え入れてくれました。そして、おいしい肉をごちそうしてくれました。
ヘラクレスは、酒を飲みたいと頼みました。
すると、ファーロは、困った顔をしました。酒の入った大かめの蓋を開けた途端、そのにおいをかぎつけて、乱暴者のケンタウロス達が集まってきてしまうと、心配したのです。
それでも、かまわないから飲ませろとヘラクレスが言うので、ファーロは酒の入った大かめを開けました。
すると、たちまち、たくさんのケンタウロス達が集まってきて、酒を飲ませろと騒ぎ立てました。
ヘラクレスは、最初は無視をして酒を飲んでいたものの、あまりうるさいので怒って、九頭のヒドラの毒を塗ってある弓矢で戦い始めました。ケンタウロス達は、何者も殺してしまう矢とヘラクレスの怪力に恐れを為し逃げ出しました。
ヘラクレスは、それを追いかけて、ある洞穴に逃げ込んだケンタウロス達に向かって、また矢を射ました。
その後、その洞穴に入ったヘラクレスは、愕然としました。射た矢が、もともと洞穴にいた、ケンタウロス族の中でも、最高の賢人、ケイローンの膝に当たっていたのです。ケイローンは、名医アスクレビウスを育てた賢人で、ヘラクレスとも友達でした。
ヘラクレスは、ケイローンが作った薬を塗ってあげましたが、ヒドラの毒にはかないませんでした。苦しむケイローンを、楽に死なせてやるしか、為す術がありませんでした。
がっくりと気を落として、ファーロの洞穴に帰ると、ファーロがその身を横たえて、死んでいるのを見つけました。
死んだケンタウロスから矢を抜いて見ているうちに、その矢でうっかりと足を傷つけてしまったらしいのです。

こうして、思いもかけない死をとげた二人のケンタウロスは、やがて天に昇って星座になりました。
ケイローンはいて座に、ファーロはケンタウロス座になったのです。



いて座は、さそり座より東側にあります。
見ていくと、北斗七星のようにひしゃく形に並んだ六つの星を発見できます。
それを、南斗六星といいます。
その南斗六星は、いて座の中心です。
ケンタウロス座は、春の星座です。
春に、南の地平線近くに見る事ができます。
でも、日本では、上半身しか見る事ができません。






Minomushi
'99.8.21

MIDI提供
Taishirou futsuno