北海道と箱根で行なっているバイケイソウ花成個体数の年変動調査ですが、2017年は箱根では結構多くの花成個体があったものの、 北海道の旭川と野幌では2013年の一斉開花と比べると極僅かの花成個体しか見られませんでした。箱根は火山活動により大涌谷周辺のハイキングコースが通行止めとなったため調査地を2016年から箱根外輪山に変更したので2年分のデータしかありませんが、2017年は前年の4倍(38個体→170個体)の花成個体がありました。2014年まで調査を行なっていた神山周辺のバイケイソウ集団の花成個体数の年変動を考慮すると、2017年の箱根は2013年の一斉開花に近い数の花成個体があったのではないと思われます。一方の北海道の調査地ですが、旭川では花成個体は2個体、野幌では37個体でした。旭川の調査地では2013年の一斉開花で257個体が花成しましたので、2017年の数字は、殆ど花成せず、花成個体があっただけまし、という程度です。野幌は2016年の花成個体が12個体であったので、2017年は前年比で3倍ということになり徐々に花成個体数が増加していますが、2013年の一斉開花では415個体が花成したので、それと比較すればまだ1/10です。2016年から新たに始めた礼文島の草原のバイケイソウ集団の花成個体数調査では、2016年が50個体で、2017年は189個体でした。こちらに関しては、箱根と同様に前年比で4倍程度花成個体数が増加しています。
したがって、箱根と礼文島では2017年は花成個体数が前年の4倍程度に増加し、箱根の花成個体数は一斉開花に近い数であったが、旭川と野幌では今年の花成個体数は非常に少なかったと言えます。2013年は旭川、野幌、箱根の3箇所で一斉開花したので、バイケイソウの花成個体数の年変動は全道、ひょっとしたら全国で同調しているのではないかと仮説を立てたのですが、どうやら、そういう単純なことではないようです。箱根のバイケイソウは林床に生え、礼文島のバイケイソウは草原に生えているので、両者の生育環境は大きく異なっており、箱根の生育環境は旭川や野幌に近いのですが、花成個体数の年変動は一致しませんでした。バイケイソウ花成個体数年変動は、どのような要因によって制御されているのか、何らかの規則性・周期性があるのか、これからも調査を継続していきたいと考えています。
ちなみに、2016年から始めた豊富町兜沼周辺の林床に群生するコバイケイソウの花成個体ですが、2016年が88個体であったのに対し2017年は76個体で、大きな変動は見られませんでした。また、札幌の北大植物園に植栽されているバイケイソウの花成個体は昨年と同じく0個体で、シュロソウについては花成個体が6個体(2016年は4個体)ありました。同じシュロソウ属でも、バイケイソウとコバイケイソウ、シュロソウでは花成の年変動に違いがあるようです。
Posted 2 February 2018
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