バイケイソウ考

その11 2016年のバイケイソウ
     

2016年は、バイケイソウプロジェクトの更新が疎かになってしまいましたが、ブログで書き留めているように、観察は箱根と北海道でちゃんと続けています。2016年のバイケイソウ観察を総括すると、以下のようになります。

1. 花成個体の出現
2016年は、2013年の一斉開花以来、全く花成個体が出現しなかった旭川の調査地で花成個体が3個体ありました。また、野幌の調査地でも花成個体が10個体以上見られました。したがって、徐々に林床に生えるバイケイソウで花成個体が出現し始めており、一斉開花後の花成個体なしの状態から脱しつつあります。2017年はもっと花成個体が増えるかもしれません。バイケイソウ花成個体数年変動は、どのような要因によって制御されているのか、何らかの規則性・周期性があるのか、これからも調査を継続していきたいと考えています。

2. 調査フィールドの変更
火山活動の活発化による2015年5月からの箱根大涌谷周辺の立入禁止は、2016年7月にようやく解除されましたが、神山周辺のハイキングコースの立入禁止は解除されませんでした。私のバイケイソウ定点観察地点は神山ハイキングコース内にあるため、ハイキングコースへの立入禁止以降は調査ができていません。この閉鎖がいつまで続くのか判らないので、2016年の春から芦ノ湖西岸の箱根外輪山の三国山(標高1101m)で新たなバイケイソウ観察を始めることにしました。この山はバイケイソウが思いのほか多く、群生ポイントが異なる標高に数箇所あり、観察に適していると感じました。今後は三国山で箱根のバイケイソウ観察、データの蓄積を行なっていきたいと思います。
 また、北海道 稚内の海岸草原のバイケイソウ環状集団における花成後の個体数の変動について2009年から観察・調査を行なってきましたが、2016年6月に調査した際、大部分の花成個体の花序が切り取られているのを発見しました。これでは正確な繁殖戦略の解析はできないと判断し、稚内での調査は終了することにしました。草原性バイケイソウについては、礼文島のバイケイソウを対象にして花成個体数の経年変化を中心に観察をしていこうと思います。

3. コバイケイソウ花成個体の観察開始
バイケイソウの一斉開花年はコバイケイソウ(小梅蕙草、Veratrum stamineum Maxim.)も花成個体が多いようです。コバイケイソウもバイケイソウと同様に花成個体数が年によって変動するのかを新たな取り組みとして調査することにしました。調査地は現在のところ1箇所のみで、豊富町兜沼周辺の林床に群生している集団を対象としています。2016年の調査では結構な数の花成個体が見られ、バイケイソウに比べるとコバイケイソウは極端な花成個体数の年変動は示さないのかもしれません。その辺りを含め、バイケイソウの花成個体数の年変動と比較しながら、継続して調査していきたいと考えています。

4. バイケイソウ訪花昆虫の観察
 2016年は箱根でバイケイソウ花成個体が見られましたので、訪花昆虫を観察したところ、ハエ(ケブカクロバエ?)、ハバチ(シマクロハバチ?)、ハネカクシ(ハイイロハネカクシ?)、アリ等が見られました。昆虫については詳しくないので、ちゃんと同定できているかは怪しいところですが、これらの訪花昆虫がバイケイソウのポリネーターとしての役割を担っているのか明らかではありません。開花年のみの観察とはなりますが、昆虫やポリネーターについての勉強をしっかりして、バイケイソウ訪花昆虫の訪花の目的やポリネーターとしての役割について調査してみたいと思っています。

Posted 21 January 2017

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