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作家への33の質問
(「谷川俊太郎の33の質問 ’80」より)
前置き
戦後日本を代表する詩人の一人寺山修司が29歳のときにこういっている。人は誰でも、一生の内に一度位は「詩人」になるものだ、と。
人生の一時期、私は詩ばかりを書いていた。それがいつのまにか小説になったのには何の必然性もない。
詩が書けなくなった。ただそれだけのことだ。
詩は言葉の華である、といわれる。そして小説は華などではない。
文章という平板な言葉の羅列で世間に起こりそうな出来事などをもっともらしく叙述する技に過ぎない。
桂冠詩人という形のいい言葉があるが、それにつりあうような小説家の名誉を私は知らない。
彼は詩人だ、と多少の揶揄をこめて遠ざけられる方が、あいつは小説家だからな、とか
胡散臭がられるよりも百倍名誉であることは言をまたないだろう。
つまり私は詩人にあこがれていて、挫折した人間なのだ。大抵は想像できるだろう。
それには必然性があった。私は詩人ではなかったのだ。
谷川俊太郎氏は日本を代表する詩人の一人だ。
そして、ここに紹介する33の質問は、氏が30年前に設問した、ウィットに富んだ「作家への質問」である。今日あちこちのサイトで見られる「なんとやらへの百の質問」などという形式的なものとはまるきり異なったものだ。
なによりも、ひとつひとつの設問自体に、珠玉のような詩心が感じられる。
それはこんなようなものだ。
(1)金、銀、鉄、アルミニウムのうち、もっとも好きなのは何ですか?
(7)前世があるとしたら、自分は何だったと思いますか?
(19)目的地を定めずに旅に出るとしたら、東西南北、どちらの方角に向かいそうですか?
こんな質問には何か、ちょっと答えてみたいという気にならないだろうか。
別に、設問がいいから解答もすばらしいものが期待できるというものでもないとは思うけれど、
設問がばかげたものであれば、解答だってあほらしいものになることはいえる。
いや、答える気にならないと言った方がいいかもしれないが。
寺山修司、谷川俊太郎、親しかった友人同士でもあったこれら2人の詩人を思い浮かべながら、
私はもう一度「詩人になる試み」をしようと思ってこのコーナーを作ってみた。
詩人と親しい友人になったような気分で、詩的な会話を愉しむような気分になりながら、軽いのりで不定期に続けていこうと思っている。
前置きの段 終わり
次回からは、以下の質問に答えていきます。(ハイパーリンクでそれぞれの回答欄へ入ってください。)
谷川俊太郎の33の質問(‘80 7,10 初版 出帆新社刊) 一覧
(1)金、銀、鉄、アルミニウムのうち、もっとも好きなのは何ですか?
(8)草原、砂漠、岬、広場、洞窟、河岸、海辺、森、氷河、沼、村はずれ、島、----どこが一番落ち着きそうですか?
(9)白という言葉からの連想をいくつか話してくださいませんか?
(11)もし出来たら、「やさしさ」を定義してください。
(12)一日が二十五時間だったら、余った一時間を何に使いますか?
(13)現在の仕事以外に、以下の仕事のうちどれがもっとも自分に向いていると思いますか?指揮者、バーテンダー、表具師、テニスコーチ、殺し屋、乞食。
(14)どんな状況の下で、もっとも強い恐怖を味わうとお思いますか?
(17)あなたにとって理想的な朝の様子を描写してみてください。
(18)1脚の椅子があります。どんな椅子を想像しますか?形、材質、色、置かれた場所など。(19)目的地を定めずに旅に出るとしたら、東西南北、どちらの方角に向かいそうですか?
(20)子供の頃から今までずっと身近に持っているものがあったらあげてください。
(21)素足で歩くとしたら、以下のどの上がもっとも快いと思いますか?
大理石、牧草地、毛皮、木の床、ぬかるみ、畳、砂浜。
(29)あなたの人生における最初の記憶について述べてください。
もし更に興味をもたれたかた、あるいは私のしつこい愚答が腹にもたれたかたは、前記の著書「谷川俊太郎の33の質問」をひもとかれることをお勧めする。そこでは氏とごく親しい友人、武満徹(故人)、栗津潔、吉増剛造、岸田今日子、林光、大岡信、和田誠、の日本を代表する作家、芸術家そして谷川氏本人との対話から生まれた洒落た模範回答がそろっているから。
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