錦眼鏡余話7:No269
コスモスに挑戦:1 

10月15日(土)は、朝から抜けるような青空だった。
今日一日、この晴天が続くらしい。
私は、このような晴天を待っていた。
 

前日から「昭和記念公園」にコス
モスを撮影するための
準備をした。
カメラを2台持っていくことにした。
 

カメラ1台はリュックに入れて背負うことにした。
もう1台はカメラケースに入れて、手で持っていくことにした。
持ってみると、ずっしりと重い。
そこで、
東秋留駅まで自転車でいくことにした。
自転車の前の籠にカメラを詰め込んだリュックと
カメラケースに入れたカメラを押し込んで走った。
 
駅で、昔のカメラ仲間のTさんに会った。
Tさんとは、5年ぐらい前、都会の写真を数回撮りに行った。
その1回、レインボーブリッジを歩いて渡り、
途中途中で写真を撮った。
三脚を広げて写真を撮っていたら、
レインボーブリッジの係の人がとんで来て、
「ここは三脚を使ってはいけないことになっている。
橋の入り口の掲示を読んだでしょう」
と、注意を受けた苦い記憶がよみがえった。
 

また、ふたりして写真撮影に行こうと約束し、
私は「西立川駅」で電車を降りた。
 

昭和記念公園の入り口近くが少々異常だった。
いくつもの大学の学生が幟を持って立っている。
昭和記念公園で何かあるようだ。
 

そんなことには頓着しないで、
入場入り口の前で
「花だより」を説明している係員に、
「コスモスを撮影にきました。
コスモスが咲いている場所を教えてください」
と尋ねると「花の丘」というところが咲いていると
教えてくれた。
 

「花の丘」へ
歩いているうち、
今の自分の現在地がわからず、
迷子状態になった。
仕方がないので、売店の店員さんに「花の丘」へは
どう行ったらいいか聞くと、
 
園内の地図を用いて分かりなすく教えてくれた。
店員さんの言う通り歩いた。
 

私の歩いている道路は、どうも大学生の駅伝コースになっているようだ。
道路の両側に人がびっしりと並んでいる。
店員さんに教えてもらった道路の標識「15」を見つけた。
大学生は、まだ走っていない。
 

そのうち、大学生が集団で走ってきた。
道路を歩いていると、
沿道で声援を送っているおじさんが、
林の中を指さして
「道路を歩かずに、こちらを歩いたほうがいいよ」
と教えてくれた。
 
途中で、
私と同様に
「花の丘」へ行こうとする私と同年配のおじさん(老人)と一緒になった。
 
沿道には、応援団の学生達が整列し応援していたので、
その間を縫うようにして歩いた。
「16」の標識を見つけた。
道が三叉路になっている。
道路を横切らないと、「花の丘」へは行けない。
 

「タイミングを見て、道を横切るよ。私の後をついてきて」
 
相棒のおじさんに話して、沿道の前列へ出た。
すると、応援をしていたおじさんとおばさんが、
「道路に出てはいけない」
と強い口調で注意をした。
 

相棒のおじさんは、向こうの道へ行きたい旨を説明した。
穏やかに話していた。
ところが急に、
「馬鹿野郎とは何だ!」
と大声で叫ぶや、
相棒のおじさんが応援のおじさんに掴みかかった。
 

私は、とっさにふたりの間へ飛び込んだ。
そして、相棒のおじさんの腕をとって、沿道の後ろへ引っ張った。
 

沿道の後ろが坂になり、サイクリングロードが通っている。
 

「このサイクリングロードは、歩行者は歩いてはいけない道路だ。
この道を通ると、向こうの道路へすぐに行けるよ」
私は、相棒のおじさんに説明してからサイクリングロードへ降りた。
 
ピー!と笛が鳴った。
制服を着た係員がサイクリングロードの端に立っていた。
「この道を歩いては行けません」
 

「上の道路も歩いてはダメ、サイクリングロードも歩いてはダメ。
いったい俺たちはどこを歩けばいいのだ!」
と、腹が立っていた私達は、憎まれ口をたたいて。。。
警告を無視して、
10mほど先の崖に取りついた。
 

崖を上へ登ると、直ぐ近くに「花の丘」のコスモスが見えた。
 

「花の丘」の下へたどり着くと、
「じゃあ」とお互い手をあげて
別れた。
私は重たいリュックをおろして、撮影の準備を始めた。