錦眼鏡余話6:No211
シャチホコガ幼虫?:その1
 

9月も下旬になったある日、
庭仕事をしていた妻が、
「花壇に大きな糞(ふん)
がたくさん落ちているわよ」
と知らせてくれました。
 

玄関から外へ出て、妻の指さすところを見ました。
大きな黒い糞が花壇の土の上に二
十個ほど落ちていました。
 
黒い糞の落ちている場所の上には、ムベの木があります。
ざっとムベの木を探しましたが、
幼虫(芋虫)は見つかりませんでした。
糞の大きさからすると、
人の中指くらいの幼虫(芋虫)が、いるはずです。
いったん、探すのを諦めて家に入りました。
 

その日、暗くなる前に、もう1回ムベの木を探しました。
 

いました!しました!
奇妙な形をした幼虫’(芋虫)です。
 

私の頭の中に「シャチホコガ」という名前が浮かんできました。
忘れないうちに、
インターネットで「シャチホコガの幼虫」と打ち込んで
調べてみました。
「シャチホコガの幼虫」の画像がたくさん出てきました。
あまり気持ちのいいものではありませんでした。
 

シャチホコは、城などの屋根の両端に付ける金属製ないしは
瓦製の飾り物で、日よけやまじないとされています。
想像上の動物で、頭はトラに似て、背に鋭い棘を持っていて、
尾は空に向かって反り返っています。
 

そんなシャチホコに似た蛾の仲間がいますが。。。
 
全体の姿形がシャチホコガの幼虫によく似ていましたが、
 
決定的に違うところが2つありました。
 
 

1つは、ムベの葉を食べている芋虫は、色彩が綺麗だということです。
鮮やかな黄色の模様と、青色の円状の小さな斑点をもっていました。
もう一つの違いは、大きな「眼状紋」を持っていることでした。
 

「眼状紋」は、蝶や蛾の幼虫や成虫などがよく持っています。
身近な例では、ジャノメチョウやアゲハの幼虫などです。
 

魚類では、
熱帯魚なども「眼状紋」と思われるものを持っています。
 

「眼状紋」の役割の一つは、
天敵である鳥類に対しての脅し的な役割を持っていると言われています。
鳥類の天敵は、ヘビだと言われています。
鳥は、
「眼状紋」を見て驚くようです。
 

もう一つは、「眼状紋」を持った蝶や蛾などは、
敵の第一撃を「眼状紋」へ向けさせ、
その間に逃げるという説です。
 

「眼状紋」のことを考えていたら、
数日前に妻から「おもしろいものを見つけたわよ」と庭へ
出て行ったことを思い出しました。
 

やはり、その日も玄関から妻のところへ行きました。
妻は、ペンタスの葉が数枚重なっているのを持っていました。
私の目の前で、上の葉を静かにゆっくりとはがしました。
下には粗い白い糸が薄い円錐状にはりめぐらされてありました。
 

粗い糸の下に蛹らしい影が薄っすらと見えました。
蛹の色は、赤褐色をしていました。
妻が写真に撮らない?という顔をしましたが、
私はカメラを取りにいくのが面倒なので分からないふりをしました。
あとで、後悔したのですが。。。
 

このとき、ひらめいたことがありました。
それは、
、「
奇妙な形と眼状眼」をもった芋虫が
 
赤褐色の蛹に
なるのではないかという推論です。
 

その晩の食事中、私の頭の中は、昼間見た芋虫と
数日前に見た蛹のことでいっぱいでした。
久しぶりに、私は昔の昆虫少年に戻ったようでした。
 

食事中に一つのひらめきがわき起こりました。
忘れないうちに、
食卓の上にあったメモ紙にひらめきを控えました。