錦眼鏡余話4:No155
ザ・テクノロジー:その2 

「合成生物を競う」
なんとも、気にかかるタイトルですね。
 
石ノ森正太郎の「サイボーグ009」の世界が
やがて来るような嫌な予感が湧いてきました。
 
今、世界中の国が、企業も、個人も、団体も、
自らの利益のために手段を選ばす、
行動をしはじめていると感じるのは、私だけだろうか。
 
ある地域では、同じ宗教を信じる者だけが仲間のようです。
 
おっと、話が大きく逸れてしまいました。
話をもとへ戻します。
 
「人工合成した微生物が、ガソリンのもとを吐き出す」
こんな微生物を「創造」したのは、フランスのベンチャー企業です。
大腸菌の細胞の中に、糖を分解する複数の酵素のDNAを
改良して組み込みます。
大腸菌は酵素の機能を取り込み、新たな合成生物へと変化しました。
 
糖を分解し、ガソリンの原料となる「イソプテン」や「イソオクタン」と
いった物質を吐き出すようになります。
 
このベンチャー企業は、
今年1月、ドイツの自動車メーカー大手の「アウディ」と
提携することを発表したそうです。
ドイツ政府も、この事業へ補助金を出すことに決めました。
来年は年間100トン規模のガソリンの量産に挑戦するそうです。
100トンのガソリンの量で、100台の乗用車が年2万キロ走れるそうです。
 
この事業の課題は、生産コストが高いことだそうです。
合成大腸菌が、純度の高い糖しか分解できないからです。
 
けれども、いつしか世界の石油資源が枯渇してくれば、
大きな転換期がやってくることは確実なようです。
 
日本の大手「三井化学」は、やはり大腸菌を使って、
衣類やプラスチックの原料を量産する技術開発に取り組んでいるそうです。
この企業では、2000年から大腸菌を使う研究を開始したそうです。
 
プラスチックをつくるのに必須の原料を、改変した大腸菌を駆使して、
2日間で113グラムまで生成できるようになったそうです。
さらなる量産ができれば、コストが下がり、
「自動車のプラスチック部材の半分をまかなうことができる」そうです。
 
アメリカ・カルフォルニア大学のB教授の立ち上げたベンチャー企業は、
マラリア治療薬の原料「アルテミシン」をイースト菌の合成生物に
つくらせることに成功したそうです。
中国原産の薬用植物に含まれる希少成分だけに画期的な技術と言えます。
 
これに目をつけたのが、世界大手の製薬企業です。
世界大手製薬企業の技術は、すでに実用化の域に達しています。
世界第3位の製薬企業、フランスの「サノフィ」は、この8月から
合成生物学の技術を使った抗マラリア薬の出荷を開始したそです。
 
インフルエンザワクチンの開発をする動きもあります。
ところは、アメリカ・ボストンにある研究所(本社:スイス)です。
去年の春、上海を中心に中国各地で人への感染が広まった鳥インフルエンザ
(H7N9型)のワクチンは、この研究所で誕生しました。
この研究所の研究チームは、
中国衛生局が解読し、研究者向けにネットで公開したウイルスの
DNAの塩基配列をダインロードし、DNAの配列を人工合成し、
2日後には中国の実物と同じウイルスをつくり出すことに成功したそうです。
さらに4日後、ウイルスから毒性部分を取り除いたDNA配列を
作り出すことに成功したと言われています。
 
従来、数か月かかっていたプロセスを数日に短縮したそうです。
「我々の技術で、鳥インフルエンザのパンデミック(世界的流行)を
防げるようになるかもしれません」
研究を率いる科学者が期待をこめて語ったそうです。