錦眼鏡余話4:No144
人工知能:その1 
 
昔、手塚治虫や石森章太郎の漫画を夢中で読んだ記憶があります。
これは子ども時代ではなく、30歳を過ぎた大人になってからのことです。
当時、小笠原村の母島小中学校に勤務していました。
 
静止衛星もなく、島ではテレビを見ることが出来ませんでした。
新聞も1週間、まとまって届くところでした。
これは今もあまり変わっていません。
 
夏休み、内地(東京をこう呼んでいた)へ研修のため出かけます。
そのついでに、好きな手塚作品や石森作品をシリーズで買って帰りました。
我が家に、その漫画の本目当てに遊びに来る子がいたほどでした。
遊びに来た子は、畳の部屋で寝っころがって漫画を見るだけでした。
 
私も、手塚作品の「鉄腕アトム」や「火の鳥」、「地球を飲む」、「ドロロ」など、
本当にたくさんの作品を読みました。
また、石森章太郎の作品は、「サイボーグ009」でした。
書棚1段に「サイボーグ009」が、ずらりと並んでいました。
 
その当時、手塚治虫や石森章太郎の漫画の世界は、
漫画の世界だけのものだと思っていました。
多分、誰もがそう思っていたことでしょう。
それほど、現実離れしたことが描かれていました。
逆に夢のような世界にわくわくしたものでした。
 
ところが、あれから40年ほど過ぎた今、
急速な科学技術の進歩、とりわけIT技術の進歩が手塚作品や石森作品の
描いてきた夢のような世界が現実になろうとしているのです。
 
A新聞に「ザ テクノロジー(THE TECHNOLOGY)第2部 AI編上」が
出ていました。
「人工知能 米追う中国」という大見出しの後に、
「世界で50人専門家争奪」とありました。
 
コンピューターが自ら考える人工知能(AI)を巡り、
今、世界的な頭脳争奪戦が繰り広げられているそうです。
 
この記事の最後を読んで、背筋の寒くなる思いをしたのは私だけでしょうか。
 
人工知能の中で、特に奪い合いになっているのは、
「ディープランニング(DL)」と呼ばれるプログラムの専門家たちです。
 
「ディープランニング(DL)」の専門家は「世界でもわずか50人程度」と
言われています。
その囲い込みに、世界中のIT大手産業が血眼になっているそうです。
 
先手を打ったのが米グーグルです。
2013年3月、「ディープランニング(DL)」の先駆者カナダのトロント大学の
ジェフリー・ヒントンのベンチャー企業を買収しました。
 
対抗するかのように、フェイスブックは、同じ年の12月、人工知能研究所を
設立し、ヒントン教授の弟子を責任者に招きました。
すると、今度は、グーグルが英ベンチャーを買収し、
10人ほどの優秀な研究員を獲得したそうです。
買収額は400億円と報じられたそうです。
 
囲い込みの発端は、人工知能の「ある技術革新」だと言われています。
それは、
「コンピューターが初めて、人間が撮影した動画から、ものを識別し
自ら画像をつくりあげた技術革新」
だそうです。
 
DLの専門家を巡る世界の争奪戦に、残念ながら日本企業が
参加している様子はないようです。
今、アメリカ大手の影をひたひたと追う勢力があります。
それは、中国です。
 
中国のグーグルと言われているネット大手「バイドゥ」です。
2013年、シリコンバレーにひっそりと人工知能研究所を設立したそうです。
そして、所長にDL研究の第一人者ング氏を迎えました。
 
尖閣列島や南沙諸島、西沙諸島における強引な手法と
ウイグル自治区などで、中国当局の強権的な弾圧ぶりが報道されるたびに、
大国になった反面、法治国家として未熟な面を持っている中国に不安を覚えます。
「ディープランニング(DL)」の技術者や専門家を利用して、
無人戦闘機やロボット兵器などの兵器開発をすることになったらと思うとぞっとします。
天安門事件にみるように、
一党独裁を貫くためには、あらゆる手段を用い、都合の悪い面は隠蔽するからです。
中国の開放政策は、民衆を徐々にですが賢くしていきます。
抑圧された民衆の怒りは、いつの日か一党独裁の政治体制を覆すようになるでしょう。
ソビエト連邦崩壊のように。。。
 
また、北朝鮮が韓国の情報を得るために、
無人偵察機を放ったことがニュースになったことは記憶に新しいです。
北朝鮮本国から指令を受けた無人偵察機が
そのうち日本にもなってくる時代があるかもしれません。
 
安倍政権がやっていることは、とても危険だということは歴史が証明するでしょう。
(秘密保護法・武器輸出三原則の見直し・集団的自衛権。。。この先にあるものは?)
尊い人命の損失と産業の破壊で、初めて目覚めるのではないかと思います。
人間は限りなく愚かだと思います。