錦眼鏡余話4:No134
幸運:その1 

連休最後の晩、友人のSさんと食事をすることにしました。
 
いつもの時間に、いつものお店で会うことになりました。
1軒目のお店で注文するものも、いつものものです。
 
Sさんとは、数日前、一緒に写真を撮りに行きました。
「横沢入り」(里山)を皮切りに、
大悲願寺、小峰公園、広徳寺とまわりました。
全部で、2万歩ほど歩きました。
 
私は、これはと思うものを8枚ほど2L版に
プリントアウトして持って行きました。
その写真を肴に飲んだり食べたりしました。
 
夜8時をまわった頃、1軒目を切りあげました。
秋川駅へは1分ほどです。
いつものようにタクシーで、いつものお店へ向かいました。
 
夜10時を回ったので、
お店の人にお勘定をお願いしました。
いつものように、タクシーも2台頼みました。
 
Sさんも私も、昔と違って、夜が格段に弱くなっています。
それに、今日はSさんがかなり酩酊しているようです。
 
お勘定はいつものように割り勘です。
お財布をブレザーの内ポケットから出そうと思い、
手をつっこみました。
ありません。
ブレザーのポケット全部を探しましたがありません。
次にバッグの中を探しました。
もう1度、一つ一つ、丁寧に探しましたがありません。
ズボンの後ろポケットも探しました。
ついでに、座席の下や足元も探しました。
 
落としたに違いありません。
免許証を入れておいたのがよくありません。
妻の言葉が頭をよぎりました。
「お財布に免許証を入れておくのはやめたほうがいいわよ。」
悔やんでもしかたありません。
 
焦る気持ちを抑えて、冷静になるように努めました。
タクシーの中のことを思い出しました。
 
タクシー代を払ったのは私です。
1000円札一枚を取り出し、30円をコインで支払いました。
おつりが300円でした。
そのとき、財布を手に持っていました。
 
それから、Sさんが
「いつも、長島さんに払ってもらっているから。」
と言いながら、500円玉をくれました。
受け取ったことも思いだしました。
 
ここまでがタクシーの中のことでした。
 
それから、財布をどこで、ブレザーの内ポケットにしまったか。
タクシーの中か、外へ出て歩き始めてか。。。記憶が定かではありません。
お釣りの300円とSさんからの500円玉は、ズボンのポケットの中にありました。
 
くよくよしても仕方ありません。
これから、どうするかを考えました。
 
まず、お店の勘定のこと。
これは、Sさんに立て替えて払ってもらうことにしました。
 
次に、家までのタクシー代です。
Sさんにお金を借りることにしました。
帰りがけに、交番に届けなければなりません。
少し余計に借りました。
 
すぐに、頭に浮かんだ交番は、秋川駅前にある交番です。
運転免許証の再交付をどうすればいいかも、教えてもらう必要があります。
 
最後に電話で、秋川駅からお店まで乗ったタクシー会社へ
財布を落としたことを連絡しておく仕事があります。
お店の人に、
タクシー会社の電話番号の書かれたメモ用紙を頂きました。
 
お店を出ると、タクシーが待っていてくれました。
運転手さんに
「秋川駅までお願いします。」
と言いながら、妻へ連絡だけはしておこうと携帯を取り出しました。