錦眼鏡余話2:No48
ミーの災難:2 

買い物に行った妻がミーの大好物のウナギを買ってきました。
体力の落ちたミーには、好物のウナギがいいと言うのです。
(それにしても、ウナギの値上がりがすごい!)

夕飯時、妻はミーもきっと食事を欲しがるからと、
ウナギを1食分ずつ細かに切ってサランラップに包みました。
今晩のミーの食べる分を除いて、あとは冷凍保存しました。
冷凍保存するウナギは、匂いの移らない袋に入れてから冷凍庫にしまいます。

夕食時、ミーはテレビの横の座布団の上(妻がミーのために臨時につくった寝床)で、
何か食べたいよとか細い声で鳴きました。
また、こちらを見る眼にも力がありません。

ウナギを10秒間チンしてから、熱くないかを指先で確認しました。
ミーに与える前にウナギを更に細かくしました。
ミーはわき目もふらずに一気にウナギを全て食べてしまいました。

食べたら、また、座布団のバスタオルの上で寝てしまいました。
猫はたくさん寝て、病気や怪我を治すと言われています。
ミーの生きようとする力を信じます。

その夜、妻はミーと同じ部屋(階下の居間)に寝ました。

翌朝、夜のミーの様子を、妻が詳しく話してくれました。
夜中と早朝に、「お水が飲みたい」、「ご飯が欲しい」、「トイレ!」などと世話をかけたようです。

私は、ミーのことが気がかりのまま、勤めに出かけました。

仕事から帰ると、早々妻が、
「ミーちゃんのお尻の腫れから、
ジローが亡くなるときの口の中の匂いと同じような臭いにおいがする」
と心配顔で語りかけてきました。
「俺は鼻が悪いので分からないな。でも、心配しているより
今からI動物病院へミーを連れて行こう」

幸い、I動物病院へ行くと、患者は誰もいません。
すぐに診察室へ入って、診察台の上にミーを乗せました。

今度も女医さんが診察です。

今度は、ミーの尻尾を持ち上げて、顔を近づけて診察してくれました。
じっと患部を見ていた女医さんは、
「切って膿を出したほうがいいね。
ミーちゃん、ちょっと痛いけど、すぐに終わるよ」
と言いました。
男の先生も頷いていました。

男の先生が頷いたので、私も安心しました。
男の先生が手にメスを持ってきました。
メスは、透明のビニルに包まれた意外と小さなものでした。
小さなカッターナイフの刃のようでした。

ミーの尻尾を持って、男の先生が無造作にメスを患部に刺しました。
1センチほど切れたようでした。
ミーが意外と静かにしていたので拍子抜けしました。
「患部はもう壊死しているので、痛くなかったのでしょう」

切った患部から膿を絞り出す作業が始まりました。
妻がミーの頭の上から覆いかぶさるように肩を押さえました。
ビニル手袋をした女医さんが両手の親指を使って、
絞り出すように患部をしごきました。

メスで切ったところから血膿が出てきました。
それを男の先生が、横からティッシュに浸み込ませてくれました。
こんなにたくさん血膿が出るものかと感心するほど出ました。
それでも、女医さんはしつこく親指を使って、血膿を絞り出してくれました。

血膿を絞り出す間中、ミーは悲痛な声で必死に鳴き続けました。
(亡くなったジローだったら、こうはいきません。
きっと支えている人間の手にかみつきます。
そして、診察台から脱走することぐらいはしたでしょう。)

「ミーちゃん、よく頑張ったね」
妻がミーへねぎらいの言葉をかけました。

ミーの災難:3へ続く

(2012・7・28)