錦眼鏡余話2:No47
ミーの災難:1

7月に入り、妻が
「最近ミーちゃん、元気がないの」
と、つぶやいているのを聞きました。
「無理もないな、この暑さだもの」ぐらいにしか、
私は聞いていませんでした。

勤めから帰ってきて、着替えてから居間でくつろいでいました。
テレビの横にある座布団の上で、
ミーがしきりとお尻を舐めていました。

私は新聞を読んでいましたが、ふと気になって
ミーの舐めているお尻のあたりを覗き込みました。

あれ?ミーのお尻はこんな具合になっていたかな。。。
何かおかしいと感じました。

「おい、愛ちゃん、ちょっと来て!」
私は、夕ご飯の支度をしていた妻を大声で呼びました。

手を拭き拭きやってきた妻に
「ちょっと、ミーちゃんのお尻のところ、おかしくない?」
と聞きました。
妻もミーちゃんのお尻を覗き込みました。
覗き込みながら、
「ミーちゃん、なかなかお尻を見せないのよ。
最近、尻尾をたれて隠すようにするの」

ミーがお尻を舐めはじめました。
丁度、肛門の右上あたりの色が変わっています。
「ほんと、おかしいわね。。。私、気がつかなったわ。
腫れている感じがするわ。。。最近、寝てばかりでおかしいなと思っていたの」

ミーがトイレをすました後に
血のようなものがシートに付いていたのは昨日のことでした。

「急いで、I動物病院へ連れて行かない?」
妻が時計を見て言いました。
I動物病院は夕方7時までだそうです。

「分かった。すぐ用意する」
まず、物置に行って、猫駕籠(ミーを車で運ぶ時に入れる駕籠)を
出してきました。
それから、戸締りをして。。。着替えてと。
時計は6時15分です。

妻がこれから行くことを電話で告げてから出かけました。
車に乗せると、車の嫌いなミーがしきりと駕籠の中で鳴いています。
この時間帯は道路が渋滞するので、信号のない道を選びました。

I動物病院に着くと、先客が一人いました。
先客の患者は猫のようです。
妻が車から降りて、駕籠を持って待合室に入りました。
ミーは静かになりました。
ジロー君(数年前に癌で死にました。)だったら、
待っている間中、この世の終わりのような悲痛な声で鳴いたものでした。

10分も待たずに、ミーの番になりました。

今日、診察してくれるのは女医さんのようです。
妻も私も、いつも「男の先生」だったらいいのになと期待しています。

女医さんは、患部をさっと見て、「肛門腺だわ」とつぶやきました。
(もっと、詳しく見て欲しいと思いましたが。。。黙っていました。)

私が
「肛門腺?テリトリーを主張するときに使うものかな?」
とひとりごとを言うと、
それを聞いていた男の先生が、
「大昔、猫が野生時代に使ったものの名残ですね」と説明してくれました。

女医さんは、化膿止めと痛み止めを打ってくれました。
化膿止めは14日間効くのだそうです。
ところが、痛み止めは、
臓器に負担をかけるので、頻繁には使わないほうがいいと言うことでした。

家に帰ってきたら、
痛め止めが効いてきたのか、ご飯を食べたいと催促してきました。

ミーの災難:2へ続く

(2012.7.18)