1-b)有棹撥弦楽器
    
ネックを持つ撥弦楽器をこのように呼び、リュートやギターがその代表です。有棹でない撥弦楽器にはハープやチター等がありますが,あまり詳しくないので割愛します。

 ・リュート族の楽器(リュート、テオルボ、キタローネなど)

ルネッサンスリュート
 リュートの起源はアラビアで、民族楽器「ウード」が紀元前8世紀頃にヨーロッパに伝わって発展していったといわれています。現在のギターと異なり、基本的に高音弦をのぞいて2本1対で張られており、混乱を避けるため、「1弦、2弦・・・」ではなく、「1コース、2コース・・・」と数えます。 現在でも(かろうじて)使われている最も古いリュートは「中世リュート」で、5コースまでありました。ルネッサンス期に入ると、6コースの「ルネッサンスリュート」が誕生しました。レパートリーにおいても、J.ダウランドなどの大作曲家が現れ、リュート音楽の全盛期を迎えます。現在、単に「リュート」といえば、このルネッサンスリュートを指します。この頃の有名人といえば「ガリレオ・ガリレイ」や「シェークスピア」「レオナルド・ダ・ビンチ」などがいますが、彼らは皆リュート弾きでした。この時代の紳士の条件は「詩が書けて、歌が歌えて、リュートが弾けること」だったそうです。

バロックリュート アーチリュート
 バロック時代になると、より複雑な和音を求めて調弦が変化していき、サイズも大型化していきました。「バロックリュート」と呼ばれるものは、弦が11〜13コース、弦長70cm以上、3度が基本の調弦と、ルネッサンスリュートとは似て非なるものです。ちなみにJ.S.バッハが所有していたといわれる「ジャーマンテオルボ」は、「テオルボ型リュート」などともいわれるバロックリュートの1種です。

  他方、4度調弦のままで、サイズが大型化したものに「テオルボ」「アーチリュート」「キタローネ」というグループがあります(「テオルボ」という名称はこれらの総称としても用いられます)。これらは主に通奏低音用として用いられ、弦数はじつに14コースに達しました。「アーチリュート」はイタリアで用いられ、「キタローネ」は全長2メートルを超える金属弦をもった楽器を指したようですが、これら3種類は当時からしばしば混同されていたようです。カッチーニなど多くのバロック初期の歌曲は、現在ではチェンバロやピアノで伴奏するのが普通ですが、これらのリュートで伴奏するのが本来の姿のようです。

・ギターの仲間

ギターはスペイン周辺で発達した楽器で、リュートによく似ていますが、同じ起源を持つかどうかは定かではありません。エジプトが起源だと言われ、一般に別族の楽器とされています。

ビウエラ
 ルネッサンス期には、4コースの「ルネッサンスギター」が存在し、またこれとは別に、6コースでリュートと同じ調弦の「ビウエラ」というものもありました。ビウエラの調弦はルネッサンスリュートと全く同じなので、ルネッサンスギターでリュートのレパートリーを弾くために派生したのがビウエラだと考えてよいのではないでしょうか??(私の勝手な想像です)。当時の楽器が残っていないので詳細はよく分かりませんが、これらが影響しあってギターは発展したと思われます。 ところで、ルネッサンスギターは、現在のギターに比べてかなり小さく、調弦が下から「ソ、ド、ミ、ラ」でした。そう、ウクレレと同じです。これは、ルネッサンスギターが海を渡ってウクレレになったということを示しています。実はこれらは、外見だけではなく音色もよく似ています。

バロックギター
Anthony Baines著 Europian and American Musical instrumentsより引用
 バロック期に入ると、5コースの「バロックギター」が誕生しました。小さくて扱いやすく、単純な曲から複雑な曲まで自在に弾くことのできるバロックギターは、幅広く人々に愛好され、ルイ14世など王侯貴族も競って練習していたということです。このためか、バロックギターには過剰ではないかと思われるほどの装飾が施されているものが多数残されています。

 古典期に入ると、リュートなどが廃れたのに対し、ギターは引き続き発展していきました。弦はこの頃から1本ずつの単弦となり、低音に1本増えて現在と同じ6弦となりました。また、この頃からロマン派初期にかけて多数の優れたギター音楽作曲家が出現し、「ギターの黄金期」を迎えました。この頃のギターは「19世紀ギター」とよばれ、現在よりも小ぶりで弦の張力も弱いのが特徴です。現在の形となったのは、19世紀の末、すなわち、ほんの100年余り前のことです。

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