は じ め に



■安全な活動のために

アウトドア活動における安全配慮事項

【準備段階における配慮事項】
@参加者の把握
・参加者の健康上の留意事項(既往症・アレルギー・服薬など)を確認する。
・参加者の体力・能力に応じた内容を考える。
・雨具、靴などの個人装備は、参加者が用意できる範囲内で考える。
A指導体制
・必要な役割に適した指導者を必要な数だけ確保する。
・指導者の組織体制(判断者と行為者)を明確にする。
・指導者相互の連絡方法を定めておく。もし無線や携帯電話による場合は、電波が届くかどうか現地で確認しておく。
B事前踏査(下見)
・必ず事前踏査(下見)を行い、計画に無理がないことを確認する。
・予定より遅れた場合の対応を用意しておく。天候の急変への対応を用意しておく。
・迷いやすい所を現地で確認し共有しておく。必要に応じて目印の設置などを考える。
・活動中に本部と連絡が取れるところを確認しておく。もし無線や携帯電話による場合は、電波が届くかどうか現地で確認しておく。
C備品・食料
・活動に必要なものを抜け落ちなく用意する。誰が何を持つか明確にしておく。
・備品は、破損や付属品の不足などがないかあらかじめ確認し、使い方に習熟しておく。
・食材は腐敗しにくいものを選び、適切に運搬・保管できるようにする。
D健康管理・救護
・適当な余裕を確保する(特に休憩時間・睡眠時間)。
・体調のすぐれない者が出たときに休ませる場所を考えておく。
・救急薬品、救護用品(ロープなど)、非常食などを用意するとともに、使用方法を確認しておく。
・消防署(病院)への連絡方法、搬送手段、搬送体制を考えておく。
E利用施設
・施設の管理者の体制(夜間の宿直など)、非常通報設備の有無、避難経路の明示、施錠などを確認し、信頼できる施設を選ぶ。
・居室・食堂・自炊場などの衛生や貸与品の管理が行き届いているか注意して観察する。

【実施段階における安全配慮(共通事項)】
@公共交通機関の利用
・参加者が指導者から離れないように注意する。
・窓から手や顔を出さない、走行中に立ち歩かない、シートベルトを着用するなどの注意事項を徹底させる。
・乗務員の指示に従う。
A移 動
・参加者がそろっていることを確認し、声をかけてから移動を開始する。移動が終わったところで参加者がそろっているか確認する。
・指導者は列の先頭と後尾に配置するのが望ましい。
・きびきびと誘導する(ゆっくり過ぎる移動はかえって参加者の不注意を招く)。
B健康状態の把握
・絶えず参加者の様子を観察し、健康状態に問題があれば責任者に報告して判断を仰ぐ。
・日中は帽子をかぶる、休憩時間には上着をはおる(活動中は汗をかかない程度の薄着が望ましい)、夜間は長袖を着用など、状況に応じた服装を指導する。
・参加者の疲労に応じて 適宜 休憩をとる(タイムスケジュールで予定している範囲において)。
・トイレに行く時間をとり、行きやすい声かけをする。
・服薬が必要な参加者に留意する。
・部屋の換気や保湿に気を配る。
・指導者自身の健康状態にも注意する。

【登山・ハイキングにおける安全配慮】
@ 歩行法
・体力の劣る者は先頭を行く指導者の直後を歩かせる。 指導者は体力の劣る者の疲労状況に注意する。
・疲れたからといってむやみに休憩をとらない。低学年で25分歩いて5分休憩、高学年以上で40〜50分歩いて10分休憩が適当。
・下り坂を走らせない。指導者より前に行かさない。
・下りにかかる前に靴ひもの確認や歩き方の注意をする。
・歩き慣れない参加者は下り道に時間を要することがあるのでコースタイムに留意する。
・汗をかいたら水分を補給する。ただし、飲み過ぎないように注意。
A 迷ったときの対処
・道が違っているかも知れないと気づいたら、立ち止まってどこで間違ったか冷静に考える。
・正しい道に戻るのが原則。特に、下り道で間違ったまま進むのは、i)滝・崖などの危険箇所に出る可能性がある、ii)道が枝分かれしておりますますわからなくなる ことから、たいへん危険である。
・後尾を行く指導者はこまめに現在地を確認するとともに通過時刻を記録しておく。正しい道に戻る的確な判断のためには、後尾の指導者が注意深く役割を果たしていることが重要。
・正しい道に戻れない場合は、笛を吹いて現在地を知らせ救援を待つ。

【水あそびにおける安全配慮】
@ エリアの設定について
・水に入って良いエリアを明確に示す。エリアの境界には指導者を配置するのが望ましい。
・水の深さは、流れのないところで膝上、流れのあるところでふくらはぎを目安とする。
・底質は、とがった石のないこと(手をついたときにけがをしやすい)、藻や水草のないこと(足に絡んでパニックになることあり)が望ましい。
・下見の際はもとより、プログラム当日にも実際に責任者がエリアに入って、適否を確認する。
A 服装など
・水遊び用に用意した運動靴またはアクアシューズを履く。ゴム草履など脱げやすいものは不可。
・帽子を着用する。
・水着を使用しない場合は、下着も含めてすべての着替えを持参しておく。
B 進水・退水
・水あそびで許される行為(泳いでも良いか、飛び込んでも良いか)をあらかじめ参加者に伝える。
・責任者の指示があるまで水に入らない。退水もその指示による。指示に依らずに退水したら直ちに責任者に報告する。
・気温・水温・風・参加者の顔色などから退水の判断を行う。退水の後はよく体を乾かす。
・人数確認を徹底する。

【危険な生物への対応】
<スズメバチ>
@ 被害を回避する方法
・数匹のスズメバチが周囲を飛び回るのは巣に近づいたため。追い払わずにゆっくりと後退してその場から離れる。
A 刺されたときの対応
・針が残っていたら、毒袋をつぶさないよう注意しながらとげ抜きなどで抜く。患部を洗い流しながら血と一緒に毒を絞り出す。その後、虫刺され薬を塗る。
・念のため車が進入できる場所まで移動してしばらく様子を見る。
・15〜20分くらいして激しいふるえが来たら、たいへん危険な症状であるので、一刻も早く医療機関に搬送する。1度刺されたことのある人は起こしやすいので注意が必要。
<マムシ>
@被害を回避する方法  
・裸足や草履で草むらを歩かない。長靴を使用する。  
・地面に腰を下ろす前にマムシがいないか確認する。  
・見つけても手を出さない。
A噛まれたときの対応  
・患部の心臓寄りの部分の血管を圧迫し、できるだけ安静にして医療施設に行く。
<野生動物>
@遭遇しない方法  
・ザックに鈴を着けるなど人がいることを動物に気づかせる方策をとる。
A遭遇したときの対応  
・大声を出したり棒を振り回したりものを投げつけたりするのは厳禁。動物と向き合ったままゆっくりと後退する。

【雷が近づいてきたときの対応】
@ 雷に対して危険な行為の例
・傘をさすこと。
・テントポール・ストックなど先端のとがったものをザックに取り付けていること。
・稜線・岩場・広い砂浜などに留まること。
・樹木の下に入ること。
・テントに入ること。
A 雷の予兆を感じたときの対応
・気象変化に注意し、雷の予兆を感じたら車両や避雷針のある建物に避難する。建物では壁や柱から離れている。
B 雷に遭ったときの対応
・できるだけ低いところ(窪地・斜面の下など)に移動し、小さくかがんでいる。
・樹木からできるだけ(3m以上)離れる。森林にいるときは速やかに出る。
・送電線があればその下に入る(鉄塔からは離れる)。
・遠雷だからといって安全とはいえない。雷が充分収まってから行動を開始する。

【大きな地震に襲われたときの対応】
@ 避難
・速やかに点呼をとり開けた場所に避難する。
・海の近くにいるときは津波を予想して高台に移る。
・責任者や本部と連絡をとり、できるだけ全員が一致して集合できるようにする。
・負傷者がいる場合は、救護や医療機関への搬送を優先する。
A 避難後の措置
・指導者で手分けして周辺の被災状況を偵察するとともに、ラジオなどで地震の規模や交通機関・ライフラインの状況について情報を得る。これらの情報をもとに対応を考えてから行動する。
・本部と連絡が取る努力をする。連絡が取れれば、状況を報告し指示を受ける。なお、被災時は携帯電話よりも公衆電話がつながりやすい。携帯電話の充電切れにも注意。
・保護者への連絡は本部を通じて行うのを原則とする。
・食料・水・寝具などの確保を図る。周辺の宿泊施設・小学校などに移動するのも良案。
・火災や暴動の可能性も考慮する。

【野外料理をするときの安全配慮】
@かまどを作るとき  
・かまどは上空に木の枝が張り出していないところを選び、周囲の落ち葉や草を取り除き、水をまく。  
・水を入れたバケツを用意しておく。  
・綿製の軍手を着用する。熱いものを持つときは2枚重ねで使用する。
A薪を割るとき  
・薪を扱う方の手は軍手をはめ、なたを持つ方の手は軍手をはめない。  
・なたを薪にふりおろすような使い方はたいへん危険である。正しい使い方を指導する。
・近くに人がいないことを確認する。
B火器を使うとき  
・燃料を間違わない。使用中に燃料を補給しない。  
・鉄板で覆うなど、火器が高温になるような使い方はしない。その他、火器の取扱説明書に従って使用する。  
・テントの中など換気の悪いところでの使用には特に注意を要する。
B 衛生管理  
・調理の前には手を洗う。調理器具や食器は洗剤で洗い乾燥させる。  
・生鮮食品は可能な限り冷蔵庫やアイスボックスで保管し、調理の前に洗う。
・野犬・カラスなどの被害を受けないようにする。  
・ゴミは指定された方法で処理するか、丈夫なビニール袋に入れ口を堅く締めて持ち帰る。
D包丁を使うとき  
・あらかじめ刃をよく研いでおく。  
・正しい指の当て方を指導する。

【工作・創作活動をするときの安全配慮】
・指導者は用具の安全な使用の仕方を習得しておく。
・参加者の技量を見極める。技量が及ばない場合は適切な支援を行う。
・指導者は危険な用具(のこぎり・きり・彫刻刀など)の使用する数を把握する。用具の置き場所を決めておき、使用後は必ずその場所に戻すよう参加者に指導する。
・参加者が適切な間隔を保てるよう、十分な広さのあるところで行う。
・火を使うときの注意事項は野外料理に同じ。

【テントを張るときの安全配慮】
@ テントサイトの選定   
・乾燥しているところ、落石のないところ、降雨の際に水が流れ込まないところ、風当たりの弱いところを選ぶ。川の中州や水際は避ける。   
・複数のテントを張るときは声が届く程度の距離を保つ。  
Aその他   
・ロープは人が通る方向に張らない。やむなく人の通り道にロープを張るときはバンダナを結ぶなどして目立つようにする。   
・テントの入口を風上に向けない(夜間は山から谷に向かって風が吹き下ろす)。
・降雨に備えてテントの周囲に溝を掘る。   
・害虫が侵入しないよう、必要な時以外はファスナーを閉じ灯りを消しておく。

【人身事故が発生したときの対応】
@ 事故の発生場所にいる指導者のすべきこと
・直ちに活動を中止して事故者を安全な場所に移すとともに、他の参加者を待避させる。
・責任者に急報する。
・事故者の状況を観察し、必要があれば人工呼吸、心臓マッサージ、AEDによる蘇生措置を施す。
・責任者は現場にいた指導者からの聴取や事故者の観察に基づき、救急車の要請、本部への連絡などを手空きの指導者に指示する。
・その間、他の参加者に動揺を与えないよう、別室に待機するか無理のない活動をを行う。
A 医療機関への搬送
・医療機関に搬送する場合は、指導者が同行する。指導者は事故者を励ますとともに、救急隊員や医師に事故の状況を説明し、医師の診断・措置結果などを聞いて記録にとり責任者に報告する。
B 事故の状況確認及び事故現場の保全
・責任者は事故を目撃した指導者(場合によっては参加者)から事故の発生場所・発生時刻、事故に至った経緯などを聴取し、文書に記録する。相手のある場合は住所・氏名を尋ね、原因となる物品がある場合はそれを保管する。なお、目撃者からの聴取は2名以上から個別に行う。
・事故現場への立入りを禁ずる。
・警察の聴取を受けた場合は、まず責任者が対応する。
C 保護者への連絡
・事故関係者の保護者への連絡は本部から行うのを原則とする。なお、保護者との応対の模様は記録に残す。
・特別な処置が必要な場合はあらかじめ保護者と協議する。医療機関について保護者の希望がある場合はそれを聞く。
・事故が報道されそうな場合には、事故関係者以外の保護者へも一報を入れる(救急を要請した場合には報道される可能性がある)。
D 後日の措置
・事故者の見舞いは誠意をもって当たる。
・保護者が事故現場に来たときは、複数の責任者・指導者で応対して事故当時の状況を報告する。
・実施主体及び責任者・指導者の有責・無責の議論や補償・賠償の交渉は、指示を受けた者だけがあたる。他の者はこの件についていっさい言及しない。
・憶測に基づくうわさが囁かれないよう、正確な情報の提供に努める。責任者は、必要に応じて事故報告書のとりまとめ、事項報告会の開催などを行う。







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