御信仰

  其ノ一 鼠の彫刻

都農神社の御本殿には、代々鼠の彫刻が彫られている。これは、御祭神大己貴命が素盞鳴命の元で修行をしていたある日、素盞鳴命から「今からこの鏑矢を放つから拾ってこい」と言われ、大己貴命は言われた通り鏑矢を探しに野原に入った。素盞鳴命は頃合いを見計らって四方から火を放ち火攻めをした。大己貴命が「もはやこれまで」と覚悟を決めた時地中から一匹のねずみが現れて「内はホラホラ外はスブスブ」(中は広くて入り口が狭いので火が中まで入ってこない)と言いました。鼠の言う通り足元を踏むとぽっかりと穴があきその中に身を隠して火から逃れる事ができました。この鼠は福の神様の使いで、現在でも大己貴命を守護する為に本殿に彫刻されているのである。
  其ノ二 御神象

都農神社の御神木である夫婦楠の木の俣から生れ出でた象である。日本書紀によると、大己貴命は兄の八十神等に攻めやられ危うく命を落としそうになった。そこで母神である櫛名田比売命は大己貴命の事を案じ「木の俣」から逃がしたと記されている。この事から、この象は「大己貴命の化身である」として広く信仰を集めている。象は太古より悪霊や悪夢を食べる霊獣として社殿等に彫刻されており、その力をうかがい知ることができる。不思議な事に体にはハートマークが浮出ており、この象を撫でる事で恋愛成就や夫婦円満、除災招福の御利益があると言われている。
 
   其ノ三 撫で大国

大己貴命は、古事記や日本書紀の神話に出てくる神様である。国土の開拓やあらゆる病気の平癒を行い、また恋多き神様としても有名である。大袋に打ち出の小槌と言えば「大国さま」の象徴とされ、その御姿に誰もが心を和ませるものである。病気平癒をはじめ、子授けや商売繁盛の御利益があるとされており、撫で大国に願いを込めて撫でる事で願い事が叶うとされている。
  其ノ四 撫でウサギ
大己貴命は兄の八十神等と共に因幡の国を訪れた。因幡の国に辿り着くとサメに皮を剥がれて泣き叫ぶウサギが居た。大己貴命がそのウサギに「真水を浴び蒲の穂の上に寝転ぶと良い。」と言われたので、ウサギは教えの通り行うと、みるみる元気になったと言われている。この事からウサギは病気平癒の御利益や、その行いから素直な心を表す象徴とされるようになったとされている。 
 其ノ五 あぶら石

この岩は、古く都農川が増水した折に、町民が遥拝出来る様にと都農川の対岸に設置してあった。「あぶら石」に油を注ぎ火を灯して都農神社の遥拝所としていたが、橋が渡された事により神社に奉納され現在に至っている。この岩は長年人々を導き目標とされてきた事により、目標達成や心願成就の霊石として信仰されるようになった。この岩に願いを込めて触れる事で願い事を叶えてくれるとされている。
  其ノ六 耳病平癒(浜下り石の奉納)

末社瀧神社の拝所には大小様々な石が奉納されている。これは、耳の病に掛った人達が早く治るようにと祈念し、浜で穴の開いた石を探し出し奉納されたものである。このように、瀧神社には浜下り石を奉納する信仰が今も尚伝承されている。
其ノ七 疱瘡平癒

「塵袋」の第7巻に「吐濃ノ大明神疱瘡(悪性のできもの、腫物)を呪ふに必ず癒し給ふとかや、かの国の人は、明神の御方に向ひて、頌文して云ふ。「吾常以汝為高。今者此物高於汝。若有懐憤、宜令平却。」(私は常に貴方を高いと思っていましたが、私の出来物が今では貴方より高くなりました。もしお腹が立つならば、早く引っ込ませて下さい。)と唱えて、杵と云ふものをして、朝毎に3度あつること3日すれば、疱瘡癒ゆと云えり」とあり、古くから疱瘡・病気平癒の霊験があるとされている。
 
其ノ八 早上り(さのぼり)

都農町を始め近隣の地域に「早上り」と言う風習が古くから伝わっている。これは、4月になると農家の人たちが作物が無事に育ち収穫出来ます様にと祈念し、浜で小石を拾い神社に奉納するものである。特に摂社の回廊に奉納されている事が多い。また、11月になると収穫に感謝する「新穀感謝祭」が行われる。