2010年 「かすみがうらマラソン」
40代最後の挑戦
僕は、常磐自動車道を順調に車を走らせながら、窓の外の青空を見て、
「いい天気になって良かった・・・。」とつぶやいた。
1人でマラソン会場に向かうのは、
諏訪湖マラソンの1回目~3回目以来だ。
桜土浦インターで降り、6号線のバイパスに入るのに混雑しているので、下調べしてきた通りに、手前で左折しバイパスの側道に出てなんなく合流・・・。
バイパス沿いに、大会側が用意してくれた無料駐車場がある。
そこからシャトルバスが出ていて、無料で会場まで乗せて行ってくれるのだ。
ところが、バイパスの出口がすごい渋滞で本線まで並んでいる。
少し並んでいたが、とても無理と判断して、
ひとつ先の出口から出て回って行こうと考えた。
この作戦は成功し、何ということなく駐車場に入る事が出来た。
シャトルバスで駅前まで運んでもらい、そこから歩いて会場まで5分ほど・・・。
解ってはいたが、今年は明らかに人が多い。
歩道を埋める人、人、人・・・。それでも、この人達全員が走るわけではない。
それでも今年は、出場者が多いのでスタート場所が広いところに変わったのだ。
とにかく僕は、「毎年恒例の場所」を確保する為に、会場に急いだ。
「恒例」の場所は、例年よりはるかに混んでいて、一人だから良かったものの、
家族で来たら、ダメだったかもしれない。来年は考えなければ・・。
そんな事を考えながら、着替えを済ませ、プログラムなどをもらいに行く。ついでにトイレに寄り、「恒例」の場所に戻る。
それから、妻が作ってくれたおにぎりを2コ食べ、時計を確認・・・まだ9時前だ。
10:00のスタートまで、まだ1時間ある。
車の中で、おにぎりを3個食べてきた。
今までの経験で、レース1時間前までに妻のおにぎりを5個食べるとちょうどいい。食べ過ぎるともちろん走れないし、
少なくても、途中で空腹になるともうどうしようもない。
車の中で3個、着いてから2個・・・これが一番いいですね。
前の日の晩も、しっかり食べないとダメですよ。
もちろんこれは僕の場合であって、人それぞれ違うと思います。
さて、僕はゴールとなる競技場を見つめ、
深呼吸をして目を閉じた。
そして静かに呼吸をしながら、
今日のレース展開を頭に思い描いた。
足の故障があるので、決してペースをあげない事。これだけは絶対に守らないと・・。
それから今回の練習の事も、頭の中で振り返り、「大丈夫、ちゃんと練習してきたぞ」と自分に言い聞かせた。
僕は目を開くと、応援に来てくれているはずのパートさん達を、目で探した。
今年は、去年10マイルに参加した同級生が、「初フルマラソン」挑戦で、訪ねてくると言っていたのに、彼も来ない・・・。
結局誰とも会えないまま、Tシャツ、短パンになり、
「走れ!!慎之介」と書いた鉢巻を締め、
故障用に持ってきた、本来は腰用のコルセットを持って、スタート場所へと向かった。
途中、ウォーミングアップの出来るグラウンドで、ゆっくりとストレッチをして、スタート20分前に、Cグループの列に並んだ。
僕が、初めてかすみがうらマラソンに参加した時は、4~5千人だったと思う。
スタートの時も、5分前ぐらいに適当に並んで、「はい、スタート!!」って感じだったのに・・・。
ところが、今年はなんと約1万3千人がエントリーしたらしい。
そして、5kmと10マイルを合わせると2万人を越える。
後から聞いた話だと、同級生はFグループだったのだが、
スタートしてから本当のスタート地点まで、10分はかかったらしい。僕もスタート前に、後ろを振り返ってみたんだけど、ぜったい1km以上あるなって感じでしたね。
そしていよいよスタートの時間が近づいてきた。
僕は、パートさんたちがスタート地点にいるはずだと思っていたが、
右側か左側か?スタート地点のどの辺に居るのか?
僕にとっても初めてのスタート地点なので、皆目見当がつかなかった。並ぶ前に会うことも出来なかったので、何の打ち合わせもしていないのだ・・・。
そうこうしているうちに、何となく緊張感のないままスタートした。
最初は真ん中辺に居たのだが、右に「やま」を張って、走りながら徐々に右に寄っていった。
そしてスタート地点を通過してすぐ「シェフ~!!」という叫び声(笑)
パートさんたちと目が合い、手を振って確認しあった。
「これで良しっと・・・。」僕はそうつぶやくと、42,195kmの旅に向かって走り始めた。
かすみがうらマラソン 3
10km通過が、約1時間。例年より4~5分遅いが、予定通り。
このまま何とか10kmを1時間ペースで走って行きたい。
走すれば、30kmで3時間・・・30~40kmは1時間15~6分かかるだろうから、
それでもこのペースで行けば、4時間30分ぐらいでゴールできるはず。ただ、故障している足にこれ以上何もないと仮定してだ・・。
そんな事を頭で思い描きながら、10km地点を通過。まだ道は広い。これが距離が進むにつれ、だんだん狭い道路になってくる。
23km以降は、軽自動車ならすれ違いできるぐらいの道幅になる。それほど、ランナーの列が長く細くなると言う事だ。
今年は気のせいか、子供たちの応援が多い様な気がする。
子供たちが並んで手を出して、ランナーがタッチをしていくのをやっていると、右だろうが左だろうが、タッチしに行く。これは、楽しみの一つだ。
でも、大人でやっている人は、いなかった様な・・・いや、一人いた、女性だったような気がする。
子供を連れた、若い奥さん風の女性だった・・・かな?妄想かもしれないです(笑)
10km~20kmは、なんと56分で通過。
23km地点で、予定通り例年通り公園のトイレに寄る。
僕が出てくると、1人のランナーが女性用に入っていく・・・。
「あっ、そっちは違いますよ!!」と叫ぶも、入っていってしまった。まあ、仕方がない。
トイレを出てコースに戻ると、応援船に乗って応援に来てくれた人たちがいるはずだったのだが、
なんか様子が変だ。人があまりいない・・・。
僕は、今年応募し忘れたので誰も来ていないが、例年は、もっと人がいたような気がする。
応援船は、霞ヶ浦を通ってやってくるのだが、すご~く古い船らしい。
それで、良く欠航になるのだ。妻曰く、「新しい船にしない限り、無理だね」と断言する程ボロイらしい。
妻たちも、2回ほど欠航になったことがある。でも、無料だという事を考えると、文句も言えない。
でも結局、どうだったのかは確認できないまま、
来年は、ここで身内の応援を受けたいものだと思いながら、走り去っていく。
さ~て、そろそろ筋肉が疲れを感じ重くなり始める距離になってきた。
それでも、30km地点ぐらいまでは、何とか足も上がる。(今年はもともと上がってないが・・・)
左側に、れん根を栽培する水田?が現れ始めると、その向こうに、霞ヶ浦が見えてくる。
その頃になると、応援もぐっと減って元気もなくなってくる。
時計を見ると、なんとか30km地点3時間で行けそうだ・・・。
僕は、急速に衰えていく自分の体力を感じながら、
「とにかく30kmまでだ・・・。」と、言い聞かせ走り続けた。
30kmからの長い旅
何とか30km地点に到達した僕は、これから先の8kmのきつさを覚悟していた。
何度走っても、僕ぐらいの練習量じゃ30kmからがきつい・・・。
それでも、どんな状態でも38km地点ぐらいまで行くと、応援も多くなってくるせいか、持ち直してくる。
そして、40km地点まで来ればこっちのもんだ。気分的にもすごく楽になる。
初めて走った時のように、膝を痛めて10kmぐらい歩いた事もあったし、
16km地点で、なぜか体に力が入らず、モウロウトしながらゴールした事もあった。
良く聞かれる質問に、
「走っている間何を考えているのか?」って言うのがあるが、
練習と本番は違いますね~。
練習の時は、普段1時間も走らないので、その日の目標の走り方のペース配分を考えていると、
「あっ」というまに終わっちゃいますね。
それでも、今日は「流し~」みたいな日は、日常のことをあれこれ考えますね。
そうそう、怒りと共に走るときもあります。(笑)
もうこの時は、めちゃめちゃに飛ばします・・・フォームもペースもありません。
でも、走り終わるとスッキリします。(笑)
スポーツで汗をたくさんかくのは、本当にいいものです。
本番のレースの時は、ハーフはともかく、フルなら最初はとにかく、走っている事をあんまり意識しないように走ります(笑)
もちろん途中のラップはチェックしますが、25~6kmまでは、自分が走っている事をあんまり意識しないように・・・。
だいたいは、周りの景色を見たり、それに関して思い出したことを空想したり、とにかくお散歩気分で走ります。
ところが、30kmぐらいからはもう全身全霊で体を動かして、気持ちだけは負けないように前に進む事だけを考えます。
苦しくなると良くつぶやくのが、「右、左、右、左・・・」です。
とにかく、どんなに遅くても、右足と左足さえ交互に出せば、いつかゴールに着くんです。
1歩がなければ、10歩もそして1kmも10kmもありません。
そう思うと、本当にがんばれるんです。あきらめないで、前向きに・・・・。
走る、ラ・ポンムのシェフ