Wada H, Ghysen A, Satou C, Higashijima S, Kawakami K, Hamaguchi S, Sakaizumi M (2010). Dermal morphogenesis controls lateral line patterning during postembryonic development of teleost fish. Dev. Biol. 340, 583-594.

 

側線神経系が多様なパターンを生み出す仕組み


 神経系は、脳の領域や動物の種類によって、著しく異なったパターンを示します。私たちは、魚が水の流れを感じる側線神経系に着目し、神経回路が多様なパターンを形成する仕組みを調べました。側線神経は、体表面に分布する感覚受容体(感丘)を支配します。感丘でクラゲ蛍光タンパク質(GFP)を発現するゼブラフィッシュ・トランスジェニック系統を用い、その形成過程を解析しました。その結果、魚の成長過程で、感丘の一部の細胞が遊走し、分裂し、さらに凝集することによって、新しい感丘を形成することを示しました(図A)。次に、感丘は定期的に「出芽」を繰り返すことによって数を増し、側線神経軸索は枝分かれをして、新しく生まれた感丘を追って伸びることを示しました。また、鰓蓋の形成に異常を示す魚を調べた結果、感丘の位置(すなわち側線パターン)は、鰓蓋骨の位置によって決まることを示しました。このような表皮の下に形成される骨(皮骨)と側線パターンの相関は、鱗や尾鰭でも見られました(図B)。さらに、魚種による側線パターンの違いのいくつかは、その魚種に特徴的な皮骨形成によって説明できることを示しました。以上の結果は、側線パターンが、皮骨形成によって制御されていることを示すとともに、側線神経系が多様なパターンを生み出す仕組みの一端を示しています。