§1 表皮からの情報がウロコの形を決める
§1 表皮からの情報がウロコの形を決める
魚のウロコはコラーゲンでできた薄い骨の板で、透明な表皮の下の層(真皮)に埋もれて存在しています。もともと脊椎動物の先祖(甲冑魚)は皮膚に硬い骨を持っていました。ウロコはその名残であると考えられています。このように皮膚に存在する骨を「皮骨」と呼びます。ウロコは毛と発生過程がよく似ています。ただし、毛や鳥の羽毛、爬虫類のウロコは表皮の細胞で、ケラチンという物質でできています。
私たちは、ゼブラフィッシュの表皮が分泌するShh遺伝子の働きを阻害すると、骨を作る細胞(骨芽細胞)が形成されなくなり、ウロコの成長が阻害されることを明らかにしました。さらに、Wnt/PCPシグナル伝達を阻害し、表皮の極性(細胞が一定方向に並ぶ性質)を乱すと、ウロコが「渦」を巻きました(図2)。これは我々の髪の毛の「つむじ」が渦を巻くのと同じ現象です。つまり、ウロコの形は表皮からの情報によって決められているのです。
図2 ウロコの骨芽細胞と、表皮で遺伝子の機能を阻害したときの効果。Shh遺伝子は骨芽細胞の形成に必要であるのに対し、Wnt/PCP遺伝子はウロコの成長方向を決めている。Iwasaki et al.(2018)より。
日本骨代謝学会で紹介されました→