第4章 自立した表現者を育てる作文指導 第2節 読書生活との関連作文 〜「読書感想文」執筆学習〜 本節では、「読書生活」との関連に焦点をあて、読み書きに共通して働く思考力の転移性の観点 から、読書感想文指導への応用例とその成果を検証する。*76 |
1 自己の成長を実感させる「読書感想文」 |
前節で示した「学習生活」に関連した「文芸評論文」執筆学習の場合、同一教材・一斉授業の読みの学習から個別学習としての学習作文へと授業が展開していく。それに対して、「読書生活」に関連した「読書感想文」執筆学習の場合は、自ら選択した作品を自力で読み、その読書体験についての文章を自力で書くことになる。つまり、読み書き関連学習のすべてが個別学習となる。教師が関与できるのは、「読書感想文」の書き方指導の場面だけである。その意味で、本研究で目指す「自己学習力」を身につけた姿、つまり自立した読者及び表現者の姿がここにあると言える。 「読書感想文」を書かせることに対する批判的な考えは多い。「読書感想文を書かせるから,子どもは本が嫌いになるのだ。」というものである。確かに夏休みの宿題としての「読書感想文」は,子どもにとって大きな悩みの種であることは事実である。しかし、それは国語科授業において「読書感想文」のための作文技術・作文方略がきちんと指導されていないことに原因がある。指導がないにも関わらず、家庭学習に委ねられていることが問題なのである。 「読書感想文指導の秘訣」という特集が『教室ツーウェイ』誌(明治図書)で組まれたのは1992年7月号である。そのメインとなっているのが、内閣総理大臣賞・文部大臣賞を受賞するなどの実績がある「山田式読書感想文指導」である。*77 ここで示す指導法は「山田式読書感想文指導」と多くの共通点をもつ。決定的な差異は、2時間の一斉授業だけで個別指導は全く行わない点にある。思考力の転移性に着目した関連指導によって、教師の助けを一切必要としない自立した読者と表現者を育てることを重視している。 指導ポイントの概略は次のとおりである。
上記のポイントの中で、最も重要なのはDである。作品と自分の体験との共通点を探すには、〈関係認識力〉が必要である。それは目に見えるもの同士の共通点に限定されるものではない。文学作品のもつ象徴性と自らの体験から得られた価値観や人生観との共通点を探す場合には〈象徴認識力〉が必要となる。つまり、ここでは文学教材の読解過程に働く思考力をフルに発揮させることになる。 また、「自分自身の心が作品と出会うことによってプラスの方向に転換したこと」を書くことは、主役の「心の転換」を検討する学習と深い関連性がある。読書感想文を書くことは、読者である生徒が自らを主役として、文学作品との出会いによって大人に成長していく自伝的ノンフィクション物語を綴る行為であるからである。 このように、自立した読者を育てる文学教材の指導における読解技術・読解方略と読書感想文の作文方略との間には多くの共通点がある。また、作文方略を明示的に言語化することによって、思考力の関連を生徒に意識させる(メタ認知を促す)ことができる。これは前述した思考力転移の促進条件に適っている。 「自分自身の心が作品と出会うことによってプラスの方向に転換したこと」を書くことは、いつの間にか自分自身の心の成長探しを目的とした行為に転換していく。読書行為をポジティブなものとして強制することは決して悪いことではない。自己の成長を実感させる「読書感想文」は、読書体験が自らの人間形成に与える影響に気づかせ、読書の本当の面白さや楽しさを実感させることによって、読書生活を充実させることを最終目標としている。 |
*76 本節は、以下の発表内容を加筆・修正したものである。 門島伸佳(1999)「『分析批評』で読書感想文の書き方を教える」第13回日本教育技術学会(東京大会) 自由研究発表 門島伸佳(2002)「自己の成長を実感させる読書指導 〜読書感想文から読書体験作文へ〜」第33回 全国学校図書館研究大会(横浜大会)J−E分科会発表 門島伸佳(2006)「『分析批評』による文学教材の読み書き関連指導の実践的研究 ―思考力の関連 による読書感想文指導への応用―」第110回全国大学国語教育学会(岩手大会) 自由研究発表 *77 山田加代子(1994)大森修編『市毛式生活作文&山田式感想文の技術』明治図書 |
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