2007年10月号より

「学研の科学」掲載

 


Q. 治療しても治療しても、虫歯がまたできてしまい悩んでいます。どうすればよいでしょう?


A. 虫歯ができるのは、それなりの原因があります。その原因に対する対策をとらずに、ただ単に虫歯だけを治療しても、また虫歯ができてしまうのは当然です。

 近年の疫学的な調査から、むし歯の発生率に1番関係が深いのは、食生活、特に飲食の回数であることが判明しました。長い間、歯磨きがむし歯予防の中心に据えられてきましたが、歯磨きは歯周病には大きな効果が実証されているものの、虫歯予防にはそれほど効果がないことがわかってきたのです。

 もちろん、成人の80%が歯周病である現状では、歯磨きをおろそかにしていいというわけではありません。しかし、小学生まではその準備段階と捉え、歯磨きは、それを習慣づけることを目的にし、あまり細かいことは気にしなくてもよいでしょう。仕上げ磨きに関しても、歯磨きの習慣ができるまでのスキンシップと位置づけ、それよりも、何をどのように食べさせたらよいかに気を配ってあげてください。

 だらだら食べるのが一番むし歯になりやすいので、おやつは時間と量を決めて、それ以外の飲食はできるだけ避けるようにしてください。アメなどを日常的に舐めるのは、間食をだらだらと続けていることと同じですので、注意してください。また、盲点になりやすいのは飲み物で、市販のジュースなどの甘い飲み物には、10%前後の糖質が含まれています。このような糖質を含んだ飲み物を飲むと、血糖値が上昇し、満腹感を引き起こされてしまいます。その結果、食が細くなり、しばらくすると空腹感を覚え、そして間食という悪循環を招いてしまいます。飲み物は、水や甘くないお茶など、カロリーを含まないものにしましょう。スポーツドリンクにも約6%の糖質が含まれていますし、牛乳も、飲み過ぎに注意してください。

 主食に関しては、パンはお勧めできません。食パンなどにも、砂糖が添加物として使われていますし、それに加えて、ジャムやマーマレードを塗ることが多くなり、虫歯を誘発しますし、味覚の発育という点でも望ましくありません。

 主食は是非ともごはんにして、そしてたくさん食べるように。おかずは控えめにしてください。割合で言うと、8対2が目安です。そうすると腹持ちがよくなりますので、間食が減るはずです。朝食にごはんを食べている小学生には、むし歯が少ないという統計結果が、私の地元の熊谷市の調査で判明しています。

 むし歯予防の、抜本的な対策は「主食をごはんにして、飲み物は水かお茶。間食は時間を決める」。これだけでむし歯は激減します。是非、お試しください。



Q. 8才と10才の子どもがいます。夫も私もとても虫歯で苦労しました。これは体質でしょうか? 子どもたちにも遺伝しますか? 気をつける点があれば教えて下さい。


A. 虫歯菌に対する免疫(抵抗力)が弱いと、お口の中で虫歯菌がたくさん繁殖するので、虫歯になりやすくなります。こうした免疫は遺伝しますから、両親が虫歯で苦労されたことから推察すると、やはり、お子さんも虫歯菌に対する免疫が弱い体質だと予想されます。

 ですが、必ずしも悪いことばかりではありません。虫歯菌に対する免疫の弱い人は、歯周病菌に対する免疫が強い場合が多く、歯周病になりにくいのです。まだ仮説の段階ですが、むし歯菌の出す酸で歯周病菌が死んでしまうからだとも言われています。

中年期以降、歯周病で苦労する方がとても増えていきます。若い頃に虫歯で苦労した人は、歯周病になることが少ないので、最終的には、却って歯が長持ちすることになります。

 とは言っても、虫歯菌に対する免疫が弱い方は、それなりの注意を払わないと、虫歯で歯を失うことにもなりかねません。ご両親と同じ苦労を、子どもたちにはさせたくないというお気持ちもわかります。

そこで、今までの違う観点からのアドバイスをさせていただきます。

 むし歯菌の出す酸によって、むし歯は引き起こされるのですが、唾液には、これを中和する働き(緩衝能)があります。緩衝能が高いとむし歯菌の出す酸を中和する能力が高く、むし歯はできにくいと言われています。

 この緩衝能には生まれつき個人差がありますが、一方で、唾液腺の発育とともに向上していくとも言われています。唾液腺の発育は、おおむね、15歳までで終わりますので、学童期において唾液がたくさん出るような成育環境を整えると、唾液腺が発育し、将来のむし歯予防につながります。

 唾液というのは、リラックスするとたくさん分泌されるのですが、緊張状態にあるときは、ほとんど分泌されません。ストレスが高まって「食事がノドを通らない」というような時は、緊張状態が高い時です。

 8才と10才のお子さんがいらっしゃるということですが、ちょうど、唾液腺が発育している最中です。良く噛むと唾液腺が刺激され、唾液がたくさん出て、結果、唾液腺が発育します。よく噛んで食事をするよう促してください。また、テレビや新聞、漫画などを見ながらの食事は、緊張状態になり、唾液の分泌が抑制されてしまいます。食事の時はテレビを消しましょう。テレビゲームをしているときは緊張状態となり、口の中が乾きます。節度を保つように心がけてください。

 虫歯に弱い対質ということで生活習慣にも気を配るようになり、その結果、体全体が健康になった人もたくさんいます。運が悪いとは思わずに、是非、よい方向に結びつけてください。


              文:くろさわ歯科医院 院長 黒沢誠人