2007年7月号より
2007年7月号より
「学研の科学」掲載
Q.4歳と6歳の子どもがいます。注意してもよく噛まないで飲み込んでしまいます。噛まないと顎が小さくなって永久歯の歯並びが悪くなると聞き、心配しています。母親である私もあまり噛まないのですが。
A. 噛まないとアゴが成長しないと言われたりしますが、実はよくわかっていません。幼児期には虫歯だらけで、とても噛めるような状態ではなかったのに、とても立派なアゴになり、見事な歯並びになった症例をいくつも見ました。このことから、噛むことよりも栄養の方が影響が大きいのではないかと感じています。
だからと言って、噛まなくてもよいというわけではありません。噛めば噛むほど、噛む筋肉(咀嚼筋)が発育し、噛む力が強くなりますし、噛むことで、脳に刺激が伝わります。噛むことはとても大切なことです。よく噛むことは肥満やガンの予防にもなりますから、子どもに限らず、大人もよく噛むことを心がけたほうがよいでしょう。
ただ、子どもの場合は、噛む噛まないよりも何を食べさせるかの方に注意を払ってあげてください。噛む必要があれば、自然に噛むようになるからです。洋食よりも和食の方が噛む回数が多くなりますから、そういう意味でも、主食はごはんにしてください。白米ではなく「分づき米」にすると、栄養という面でもさらによいでしょう。
また、シリアルフードには玄米が原料のものもありますが、いくら玄米が原料でも、このような食品は最も噛まないで食べられるものですから、主食として勧めることはできません。おやつとしてなら良いでしょう。
噛まないからと言って、いきなり噛むことを強要したり、ものすごく固い食べ物を与えるのは適切ではありません。ごはんを少し固めに炊いたりして、徐々に固いものにならしていってください。
Q. 7歳の男の子ですが、堅いおせんべいが食べられません。他にも堅いものがあると出してしまいます。歯が弱い子なのでしょうか。虫歯はたしかによくできます。
A. まず考えられるのは、虫歯が痛むのではないかということです。歯に虫歯の穴が開いていると、堅いものを噛んだり、冷たいものを口に含んだりすると痛みます。治療してあっても、詰め物の下で虫歯が再発して痛むことがあります。
また、きちんと治療してあっても、歯の中の神経が死んでしまうことも、時々あります。治療した後に、痛むことなく神経が死んでしまうと、本人も気がつきません。しばらくすると歯の根の先に膿がたまってきて、堅いものを噛むと痛むようになってしまいます。以前は食べられた堅い食べ物を最近になって嫌がるようになったら、念のため歯科医院に連れて行って調べてもらってください。
もう一つ考えられるのは、噛む力が極端に弱い場合です。歯の質が弱いのではないか、と心配されているようですが、そんなことはありえません。どんなに歯の質が弱い人であっても、歯よりも堅い食べ物なんてありません。
食事はどんなものを与えていますか?良く噛んで食べていますか?ふだん食べている食事が柔らかいものばかりだと、噛む筋肉が鍛えられません。噛む力が弱いと堅いものが砕けないので、いつまでも口の中に残っていたり、口から出してしまったりします。
このような場合は、いきなり堅いものを食べさせようとしても、なかなかうまくいきません。まず、ご飯を良く噛んで食べることから始めてみてください。時間はかかりますが、だんだんと、噛む筋肉が発育してくるはずです。初めは嫌がっていた堅焼きのせんべいやスルメでさえも、食べられるようになるでしょう。
文:くろさわ歯科医院 院長 黒沢誠人