2007年5月号より
2007年5月号より
「学研の科学」掲載
歯を磨いているのに、むし歯ができてしまった・・・こんなことはありませんか?
こんな疑問にお答えするために、学研からの依頼で「1年生の科学」2006年5月号から2007年3月号まで合計10回にわたり、Q&Aという形で連載していました。どうぞご参考ください!
ちなみに、「1年生の科学」2007年5月号から2008年3月号までにも、再掲載されています。
Q.歯磨きについて教えて下さい。1日に何回、そして1度に何分磨けばいいのでしょう? 大人と子どもでは、磨く時間は同じでいいでしょうか? 子どもの仕上げ磨きは何歳までしてあげなくてはいけませんか? 仕上げ磨きのポイントは?
A. 歯磨きについて、大きな誤解があるようです。歯磨きは歯周病には大きな効果が実証されていますが、虫歯予防にはそれほど効果がないのです。調査したら、虫歯の発生率と歯を磨くことの関係は認められず、虫歯の発生率に1番関係が深かったのは、食生活、特に飲食の回数という結果がでました。
日本人の成人の80%は歯周病だと言われていますが、小学生までの子どもは歯周病に対する抵抗力がとても高いので、歯周病についてはあまり心配しなくても大丈夫ですが、中学生以上は、歯周病予防のため歯磨きは厳格にしてください。小学生以下はその準備段階ととらえ、歯磨きはそれを習慣づけることを目的にし、あまり細かいことは気にしなくてもよいでしょう。それよりも、何をどのように食べさせたらよいかに気を配ってあげてください。仕上げ磨きも、スキンシップと位置づけ、楽しくやってください。このとき、奥歯の溝を重点的にするとよいでしょう。「仕上げ磨きは何歳まで?」ということに関しては、歯磨きの習慣ができればやめて構わない、と考えてください。
ところで、歯磨きの習慣が日本では確立しているのに、なぜ、これほど歯周病がまん延しているのでしょう?歯周病の原因菌は、酸素を嫌うので、きれいなところには棲めません。ですから、歯のすみずみまできれいにできたなら、歯周病にはならないのです。が、実際にそこまで出来ている人が少ないので、せっかく歯を磨いていても歯周病で歯を失う人が後を絶ちません。
完全にきれいにするには、その技術を習得したうえで、最低でも5〜10分の時間をかける必要があります。このような方法で磨けば、歯周病に対する抵抗力が、遺伝的に極端に弱い人を除いて、1日1回で充分です。
Q. 6才の男の子の母です。友人の子どもは、歯磨きは全然していないのに虫歯は1本もありません。私の子は、歯磨きを一生懸命やっているのに、虫歯がたくさんできています。どうしてでしょうか?体質みたいのものがあるのでしょうか?
A. 理由は3つ考えられます。
一つ目は体質です。虫歯菌が出す酸が虫歯の原因ですが、この虫歯菌に対する抵抗力が弱い体質だと、虫歯ができやすいのです。一方、歯周病は歯周病菌によるものですが、なぜか虫歯と歯周病は相反する関係にあるのが一般的で、虫歯になりやすい人は歯周病にかかりにくく、虫歯になりにくい人は歯周病にかかりやすい傾向にあります。まれに、両方強い人、両方弱い人もいます。
こういった体質は遺伝し、父親か母親のどちらかの体質を受け継ぎますので、同じ親から生まれた兄弟でも、「長男は父親に似て虫歯になりやすいけど、二男は母親に似て虫歯になりにくい、だけど二男は歯周病が心配」といったケースはよくあります。
そして食生活ですが、食生活の基本が乱れたままですと、いくら歯を磨いても、虫歯になってしまいます。これにはポイントが二つあります。「内容」と「食べ方」です。「内容」に関してですが、どのような食事、どのようなおやつを食べていますか?どのような飲み物を飲んでいますか?3回の食事については、日本の伝統的な食事は虫歯になりにくいので、ごはんとみそ汁、漬物を基本にした食事をお勧めします。また、おやつは素材に近いものにしてください。木の実や果物、イモ類などを、「焼くだけ、剥くだけ、ふかすだけ」と、できるだけ手を加えずに、あげたほうがよいでしょう。飲み物は糖分の入ったものは避け、水や麦茶、番茶にしてください。
最後に「食べ方」についてですが、これは、時間と回数を決めてください。特に「飲食回数」は、虫歯の発生に最も関係が深いとされているので、要注意です。おやつを学校から帰ってきた時だけとすると、「飲食回数」は一般に4回となりますが、これをきっちり守れば、滅多なことでは虫歯はできないはず。盲点になりやすいのが飲み物で、糖分の入った飲み物を飲むことも、「間食1回」とカウントされます。スポーツクラブなどでの飲み過ぎや、ご家庭での買い置きは、できるだけ避けてください。「お風呂上がりにジュースを飲んでそのまま寝る」というのが、もっとも虫歯のできやすいパターンということになります。
文:くろさわ歯科医院 院長 黒沢誠人