2002年3月27日水曜日、雨がしとしと降っている....................よし、決めた!
休むとなると平日の今日は、向ヶ丘遊園にお別れの挨拶に行きましょう。実はあっくんの地元、向ヶ丘遊園地は、2002年3月末日をもって閉鎖されるんです。70年以上の歴史を持つ遊園も、その勤めを終えることになります。何年か前、すでに小田急線向ヶ丘遊園駅からのモノレールが廃線になっていたので、閉園も時間の問題だなと思ってました。アクセス手段を絶たれた遊園地に人は来ないもんねえ。てなわけで本日は雨だけど遊園地で遊ぼう!逆に雨のほうが人が少なくていいや。
カメラ片手に、遊園までてくてく歩く。3月最終週は「さよならフェスティバル」ということで、遊園地の入場料、乗り物フリーパス券は半額以下になっている。合計1.500円支払い入園。思った通り、園内は雨のため閑散としている。週末だと混むだろうし、桜も完全に散ってしまうだろう。行くなら今日しかない!
遊園地に行く途中で撮った一枚。閑静な住宅街の電柱越しに、観覧車が見える。地元の人は、モノレールがあった正面ゲートではなく、裏口から入る。 |
まずは腹ごしらえ。向ヶ丘遊園地ができたときからある老舗、寿々木亭でラーメンを食う。ごく普通の中華そば、このシンプルさがうまい。ここのラーメンも食い納めだな。店の方に聞いてみる。
「ここはこの後どうなるんですか?」
「さあ、まだ何も決まってないんですよ。少なくともこの店は無くなりますけどね」
心なしか店員さんも口数が少ない。そりゃそうだ。70年以上続けてきた店を畳まざるを得ないんだからねえ。店内を見回してみる。今まで訪れた多くの有名人の色紙が飾られている。色あせた色紙、歴史を感じるなあ。
明石家さんまさんのポスターが見えますね。山田まりやさん(?)らしきサインも見える。一番分かりやすいのは、元シャネルズ(爆)だった方のサイン(笑)。 |
特捜最前線も遊園でロケを行ったことがあるようだ。 |
マニアの方ならお分かりでしょう(^^)。そう、このサインは、松田優作主演の探偵物語第18話「犯罪大通り」のロケ時のものに間違い無い。とっちゃん(ハナ肇)と、矢のプシュー飛び出すピストル持った殺し屋石橋蓮司(^^)、そして工藤ちゃんが鬼ごっこしたシーン、あれは向ヶ丘遊園だった。そうか、あの時ハナ肇さんは、ここでラーメン食ったのか。ついでに松田優作さんのサインも探してみたが見つからなかった。
「どうも、ごちそうさまでした!」
食い終わって寿々木亭を後にする。しばらく園内を散策、この光景も見納めかあ。
園内にあるボート池。この池の回りをミニSLが走っている。写真中央の橋を渡ると、松鶴庵というそば処に行ける。 |
園内に設けられた特設ステージ。ここでウルトラマンや仮面ライダーショーが行われた。あっくんは昔、ここでドラクエVのオーケストラ演奏を聞いたことがある。
ちなみに奥に見える藁葺き屋根が、前述の松鶴庵。 |
観覧車に乗ってみるか。たしかこの観覧車は1970年代にできたと思う。完成当時は日本一の大きさを誇ったはずだ。横浜みなとみらいや、東京お台場のそれを見慣れた今じゃ、小さく見えるけどね。でも、遊園の観覧車は、文字通り「向ヶ丘」の上に設置されてるから、見晴らしは抜群ですぜ。
正面から見た大観覧車。直径は50mだったかな?雨とはいえ、園内の桜も何とか見れた。 |
観覧車に乗ると、こんな景色が広がる。遠くに新宿や霞が関の高層ビル群が見えますね。真ん中に、多摩川を渡る東名高速も見える。写真がところどころ白っぽいのは、観覧車に(雨の)水滴がついているため。 |
反対側には、横浜ランドマークタワーも見える。ちなみにこの写真のどこかに、あっくんの家が写ってます(^^)。 |
ジェットコースター「ディオス」、メリーゴーランド「メリーフラワー」、そしてお化け屋敷(^^)、どれも昭和40年代の面影がある。あ、ディオスはそんなに古くはないけどね。どっちにしろディズニーシーやUSJと比べると、見劣りするのは否めない。元々、向ヶ丘遊園地は、対象年齢を低く設定してある。つまり、大人が楽しめるところではない。少子化が進むことも、閉園を後押ししてしまったかな?
が、前述のディズニーシーやUSJに慣れた現在の子供たちからも、向ヶ丘遊園地は見劣りするかもしれんね。あっくんはノスタルジーに浸れるけど、子供たちにはノスタルジーなんて無いもんね。
そう言えば、ここには「楽焼き」ができる店があったなあ。最後の記念に、あっくんもやってみるか。楽焼きとは、陶磁器に塗料を塗って焼き上げるやつ。信楽焼なんてのが有名だよね。
「すいませーん、この皿ください」
焼き上げる前の白い皿を購入して、それに絵を描く。史上最強の北海道旅行をご覧になった方はお分かりの通り、げーじつ的才能にあふれるあっくん、無念無想の境地で細筆をさらさらと皿の上に流す。
「この店も無くなっちゃうんですか?」
「ええ、ここも30年以上やってたけど、畳むことになりますねえ」
皿に絵を描きながら、店員さんと話をする。
「この後、ここはどうなるんでしょうねえ?」
「さあ、乗り物は解体して、東南アジアへの輸出が決まってるそうですけどね」
ディオスや観覧車は、次の就職先が決まっているそうだ。単に解体されるんじゃなくて良かったねえ。
「ここは川崎市緑化地区に指定されてるんで、市が買い取って自然公園にでもなるんじゃないでしょうか?まだ何も決まってないですけどね」
「そうなればいいですけど、川崎市はお金無いもんねえ」
この土地は小田急が約60%、残りは地元の地主さんがぽつりぽつりと所有している。つまりたくさんの地主がいるうえ、おのおのの所有地が虫食いのように散在しているから、この後どうするか方向性が定まりにくい。
「とにかくマンションだけは乱立して欲しくないなあ」
「マンションは無理じゃないんですか、元々ここは沢がある急な斜面を削ってできたところですから。地盤は緩いですよ」
手ぐすね引いてマンション建設を狙ってる業者さん、よーく覚えといて下さいね。ここは山を削って慣らしたところですよ。聞くところによると、入口から上る長い階段が沢だったらしい。大雨の日は、今でも階段がきしむそうだ。ということは階段の上、遊園地一体が水分豊富な緩い土地だったってこと。こんなところにマンション建てたらどうなるか、お分かりですね?
あそうか、そんなことは知らぬ存ぜぬで、マンションだけ建てちまって、売っぱらえばいいか。どっちにしろ地元住民と小田急、そして行政間で一悶着ありそうだな。
丘の上から見た光景。右下に見えるのは正門。モノレールの高架線も見えますね。写真じゃ分かりにくいが、正門から長い階段で、ここまで上がってくることになる。この階段が、むかし沢だったところ。左の桜並木近辺には、かつて花時計があり、その地下はショッカーのアジトになっていた(笑)。 |
「(皿が)焼き上がるまで、遊んできて下さいな。閉園時間までには焼き上げますから」
「そうですか、それじゃ宜しく」
出来上がりは本コラムの最後にお見せします(^^;
店を出た時間には雨も上がった(^^)。ならばディオスに乗りませう。フリーパス券を見せて乗り込む。ジェットコースターに乗るのは何年ぶりやろ?ゆっくりと動き出す。
何の変哲もない普通のメリーゴーランド。こんなアトラクションじゃ、人気がないのも分かるけど、無くなるのは寂しいねえ。 |
時刻は夕暮れどき、閉園の時刻が迫ってきた。最後の記念に、もう一度観覧車に乗る。この光景も見納めやね。緑豊かな遊園、実は乗り物やアトラクションがある敷地は、遊園地の半分程度しかない。残りはバラ園をはじめとする緑地になっている。タヌキやコウモリも生息する生田まで続く緑地、あっくんお気に入りの地元なんよね。
観覧車から見た西側の光景。生田緑地が延々と続く。雨上がりの夕日がとてもきれい。 |
さて、帰るかあ。楽焼きの店で、焼き上がった皿を受け取り家路につく。昭和2年(1927年)4月1日、小田急線開通時にオープンした遊園、時は流れ時代は変わった。役目を終えた遊園地、今までほんとにご苦労さんでした。寂しいけど仕方のないことやね。
桜吹雪舞い散る園内を家路につくあっくん。
時の移ろいはぁ〜 悲しみをぉ〜♪ 忘却のぉ〜 彼方へとぉ〜♪ (↑浸るな!) |
くしくもあっくんは、今の仕事に3月でケリをつけ、来月からは新しい仕事に就く。まさに3月は別れの季節、向ヶ丘遊園地にも別れを告げたことやし、4月からは心機一転、頑張ってみるかあ。