突然死


2006年9月9日、(有)カーサービスに行くため、スカちんに火を入れた。目的はファンカップリング交換、ミッション/デフのオイル交換等。1週間の入院になるな。アイドリングしながら、ボディカバーをトランクへ入れてると、

ボンッ!

怪しい音を立てて、突然エンスト!運転席に戻りセルを回すと、

キュルキュル.... ヴヴッ.....プスン!

一瞬火が入ったが、その後全くエンジンがかからなくなってしまった。

またか.....

実は、突然エンストしてエンジンがかからなくなる症状(以降、突然死と称す)は、今に始まったことではない。ここ3〜4年間、半年に一度の頻度で現れていた(苦笑)。なぜ完治しないか?それは突然死しても、そのまま放っておいたら、何事も無かったかのようにエンジンがかかってしまうから。その後、修理工場(カーサービス)に入れても入れても、突然死の症状は再現しないため、どこが悪いのか特定できない状態が続いていた。これが電装系トラブルのいやらしいところ。もちろん、突然死する度に怪しい箇所に手を入れてるのだが、半年経つと再び死んでしまう。そして1時間くらい放っておくと復活、カーサービスに入院、怪しい箇所を改修(部品交換)、半年後に再び突然死、これを何年も繰り返していた。

もちろん、あっくんも手をこまねいてたわけではない。突然死の症状を体験しているのはあっくんだけ。オレが原因を突き止めなければ、カーサービスには(症状が出ないから)分からない。そこで、我流で突然死の原因を探っていた。

突然死の症状:

(1) 走行中、アイドリング中を問わず、エンジンが突然ストップする。
(2) エンスト後の症状は、セルを何回回してもエンジンに火が入らない。
(3) 尚、セルを何回も回し続けていると、ガソリン臭くなる。
(4) その他の電装系は全て正常。ライトも点くしラジオも入る。IGNオン状態で、各種計器類、警告灯群も正常。
(5) しばらく放っておいてセルを回すと、何事も無かったようにエンジンがかかる。

さて、どうでしょう、あなたなら、どこを疑いますか?

まず(5)から、電装系であることは間違いないですよね。さらに(4)から、キーシリンダではないことが分かります(キーシリンダが死んでたら、計器類やラジオも死ぬし、セルも回らない)。また、(3)からインジェクタが混合気を吹いてるようなので、それを制御するECUは(この限りでは)正常と考えられます。さらにインジェクタが混合気を吹いてるということは、フューエルリレー/フューエルポンプ/エアフロまで正常。さらに考えると、6発全てが一瞬に死ぬってことは、プラグやEGIレジスタでもありません。

これはEGIレジスタ。ECUからの信号を増幅してインジェクタを制御する。2つあるので3発ずつ制御すると思いきや、4発、2発ずつ担当している。おそらく4発エンジンには、レジスタ1個でいいんやろうね。仮にEGIレジスタが死んでも、6発全部即死することはない。

こうやって考えると、点火系が怪しいのは明白です。さらに点火系における一発即死部品も限られてきます。それで、具体的に何に手を入れてきたか、ここ3〜4年の対処をダイジェストで報告しておきましょう。

・カーサービスに診てもらったところ、デスビが死にかけてたので交換。が、半年後突然死。
・今度は点火コイルを交換。ハイテンションコードの接触も入念に確認。が、半年後突然死。
・ECUも疑って点検(ECUは絶品なので入手不可)。腕のいい電装屋さんに診てもらって、ECU内の抵抗を2つ交換。が、半年後突然死。

ここまで来ると、犯人はかなり絞られますね。そう、ここまで来た以上、犯人はイグナイタしか考えられない!

ところが、このイグナイタってのが曲者なんだ。ケンメリまではポイント式、点火タイミングがフルトラ化されたのはジャパンから。しかもC210ジャパンは、デスビとイグナイタが独立してて、イグナイタは運転席右隅に組み込まれてるんです。つまり、C211ジャパンとは全く互換性が無いわけ。

 

これがC210イグナイタ。5本のピンが見えますね。それぞれ、デスビ×2、IGNリレー、コイル、ECUと繋がっている。
余談だけど、皆さんはS52年型車(=S51排ガス対策車)だけは手を出さない方がいい。互換性の無いオンリーワンの部品が多すぎるし、そのほとんどが絶版部品。維持管理に苦労するし、その苦労が報われる保証はどこにも無い。

 

デスビから2本のコード(緑、赤)が出てるのが分かります?
あれがイグナイタと繋がってるわけ。デスビは、ここから点火時期をイグナイタに送る。イグナイタはその信号を基に、点火タイミングを指示する。
尚、C211ジャパン以降は、イグナイタとデスビは一体化されてるので、このコードは無い。

 

デスビから伸びている緑、赤の2本のコードは、カプラーを介して運転席右隅のイグナイタに繋がっている。このカプラーが接触不良を起こしただけで一発即死!C210は弱点だらけや。
どーでもいいけど突然死だの、即死だの、今回はぶっそうなコラムやなあ。

で、イグナイタだけど、いろいろ探し回って、仙台のレッドGTさんの倉庫に1つだけ眠ってたのを譲って頂いた。さらにEGNリレー、EGRリレーを新品に交換、エアフロもOH。これで、一発即死部品には全て手を入れたことになる。これにて一件落着!

と思ってたら、半年後に突然死。_| ̄|○

もう接触不良を疑うしかない。そこでC210の配線図を入手、点火系のコネクタ類全てにワコーズの接点復活剤を吹いて磨いた。そして本日2006年9月9日、再び死んだわけです。

これだけ突然死に出会うと、どこが怪しいか、症状でわかるようになってきた(苦笑)。こいつは今までの突然死とは突然死が違う。

(1) 死ぬ直前、ボンッ!という破裂音がした。
(2) エンストした後、一瞬だけ火が入った。
(3) セルを回してもガソリン臭くならない。

特に(2)から、点火系ではないと思われる。(1)の症状から、混合気に乱れが生じたと考えられ、さらに(3)からインジェクタが混合気を吹かなくなった気がする。ということは.....

嫌な予感がするなあ....

とにかくカーサービスに電話、ローダーのお世話になることにした。それにしても、突然死したのが駐車場で助かった。これが路上だったらと思うとゾッとする。

カーサービスからローダーが到着、スカちんを引き上げる前に、症状を確認する。カーサービスの担当者にハイテンションコードを外してもらいセルを回す。

キュルキュル.....バチバチッ!

やっぱり火は飛んでいる。そりゃそうだ、これまでさんざんチェックしたんだもんね。ともかくスカちんをカーサービスに引き取ってもらって、しばらく様子を見ることにした。

1週間後、カーサービスに電話してみた。

「もしもし、KAZですけど、どうでした?」
「あれから工場に運んで、次の日エンジンかけたら、かかっちゃったんだよね」
「えっ、またかかっちまった?」
「うん、最初は黒煙噴いたようなんだけど、すぐに正常に戻ってねえ」
「てことは、不完全燃焼起こしてたけど、すぐに治ったってことですね。今度はエアフロかECUだなあ」
「うん、どうやらECUのようだね」

この後カーサービスに行って、担当者に直接確認してみた。キャニスター、エアフロ等を診てみたけど、やっぱりECUが怪しいとのこと。嫌な予感が的中してしまった。

前述の通りECUは、一度点検している。が、そもそもECUってのはブラックBOXであって、OHなんざ不可能。仮に再点検したとしても、症状が出ないので、どこが悪いのか特定できない。実はECUは、何年も前から探してるんだが、どうしても見つからない。これまたS51年排ガス対策用なので、C211とは互換性が無い。さらに、L20 MT用じゃなければダメ。オートマ用のECUとも異なるってんだから、困るんだよなあ。

しかしながら、ECUが無いとジ・エンド。こんな心臓部品も出ないとわ泣けるぜ。日本には旧車をめでる文化が無い。これが欧米車だったら、心臓部品の絶版に悩むことは無いんだが、日本の自動車メーカーは、新車を買わせることしか頭にないからなあ。自分たちが造ってきた財産を疎かにするようじゃ、新車も魂の無い工業製品になっちまって、売れるものも売れないですぜ、ゴーンさん。

しゃーない、ダメ元で仙台のレッドGTさんに電話。

「もしもし、レッドGTさん?ご無沙汰してます、KAZです。実はかくかくじかじかで、ECU出ないですかね?」

以前レッドGTさんからECUを譲って頂いたのだが、キャブ車用のそれで使えなかったことがある。レッドGTさんは再びC210用ECUを探してくださったが、やっぱり出ない。

「ケンメリのECUなら手元にあるんだけどねえ」
「えっ、ケンメリって後期型の?」
「うん、ジャパンと同じS51年排ガス対策車のECU。流用できないかな?」

レッドGTさんは、さらに調べて下さった。

「ケンメリのECUは、S52年の9月まで生産されてるねえ」
「ジャパンはS52年の9月から発売されてますよ。近いっちゃあ近いな。で、品番は分かりますか?」
「A11-000 023って打ってあるね」
「惜しい!ジャパンはA11-000 025なんですよ」
「ケンメリは助手席シート下にECUが取り付けられてるからねえ。ジャパンは助手席足元でしょ。ブラケットが違うだけでも、品番は違いますよ。コネクタの平ピンの配列はどうなってます?ケンメリは2列になってて片方が18ピン、もう片方が6ピンあって、そこから2ピン分がダミー、さらに2ピン出てて、あとは全部ダミー」
「ええと、ジャパンは.... ECUを横から見てコネクタを上段/下段の2列に分けると、下段は18ピン全て平ピンが出てます。上段は右から6ピン出てて、2ピン分無くて、次の2ピンが出てて....... それで全部ですね」
「全く同じだね。それじゃ、平ピンを受けるカプラー側の配線はどうなってる?」

C210ジャパンECU。

 

こっちがC111ケンメリECU。

こんなかんじでレッドGTさんと、電話やメールで確認した結果がこれ。

ケンメリとの照合結果、一つだけ違いがあった。ジャパンは、35番ピンは未使用だが、ケンメリは配線が来ている。その他は全く同じ。配線図と照らし合わせながらチェックしたので、どのピンがどこに繋がってて、どんな働きをしているのかも全て把握済み。但し、ケンメリの配線図が無いので、35番ピンの機能は不明。

「何とか使えそうだね」
「ええ、ここまで確認できたら、後は試してみるしかないですね。ケンメリECU、こっちに送って頂けますか?」

レッドGTさんからカーサービスに、ケンメリECUを郵送して頂いた。

「もしもし、カーサービスさん?ケンメリのECU届きました?」
「うん、届いてる。これからケンメリ/ジャパン双方のECUを開けて、違いが無いか確認してみるよ」

あっくんにできることはここまで。後はプロの腕に任せよう。

1週間後、カーサービスに電話してみた。

「もしもし、KAZですけど、どうなりましたか?」
「できてるから明日取りに来て」

あっさり!

できたってことはケンメリECU、使えたのかな?まあいい、明日確認しよう。

翌日、カーサービスに行くと、修理を終えたスカちんがお日さまに照らされていた。車内を覗くとあれあれっ?ケンメリECUが助手席に置いてあった。

「こんちわ、ケンメリのECU、結局使わなかったんですか?」
「いや、使ったよ。ブラケットが合わないから、ジャパンの箱(ブラックBOX)にケンメリECUを入れたんだよ」
「てことは、ECUは同じだったんですか!?」

ケンメリとジャパンのECUを比較した結果、両者は(2、3の違いを除いて)全く同じだったらしい。基本的に当時のECUは、個々のピンの働きには互換性を持たせているとのこと。つまり、ケンメリ(C111)、ジャパン(C210)、そしておそらくローレル(C230)のECUは、共通と考えられる。ただ、それぞれの車重の違い等から、インジェクタ制御(混合気の噴出量)が、びみょーに異なるかもしれないとのことだった。が、どっちにしろL20Eを制御していることに変わりは無い。

「高速にも乗ってみたんですが、調子は良かったですよ」

試運転まで行ってくださって、ほんと感謝!

「どうも、いろいろありがとうございました。また11月によろしく!」

カーサービスにお礼を述べて出発。

クラッチが重い!ブレーキが甘い!!

実はスカちんのいない3週間、代車のマーチに乗っていた。マーチのそれとは全然違う感覚に、しばし戸惑う。徐々にスカちんの感触を取り戻しながら、港北ニュータウンを走る。

うん、完ペキだ!

エンジンの調子は、これまでと全く変わらない。いや、ファンカップリングを新品に交換したんで、これまで以上にスムーズに吹け上がる!

生き延びたぁ〜〜!!

後で分かったことだが、レッドGTさんとこのC111ケンメリは、何とL28改のキャブ車だったそうな。つまり、EGIパーツ群は完全に取り外されてたわけ。で、助手席シート下のECUだけは、そのまま眠ってた。これがジャパンだったら、助手席足元にあるから、ECUは捨てられてた可能性が高い。こう考えると、ケンメリECUが入手できたのは奇跡に近い!

さて、この後なんだが、今度は足回りのパーツを交換しなければならない。長年205タイヤを履いてるが、フロントのハブが徐々に磨耗していた。205タイヤは、じわりじわりとフロント足回りに負担をかけていた。このため、11月目途にブッシュ類も含めて足回りを交換、その後フロントタイヤを195に戻す。さらに来年は、ラジエータ、ヒータコア、コンプレッサーのOHも待っている。まあ、ぼちぼちと貯金して、がんがりますわ。

今度突然死しても、もう疑うとこ無いぞ!?


戻る