錦眼鏡余話6:No215
水が飲みたい:その2 

ミーヤのお風呂場通いは、段々多くなってきました。
夜中、一緒に寝ている妻は、寝ることができません。
 

5時ごろになると、私が交代します。
ミーヤの横で寝ていると、ごそごそとミーヤが起き上がります。
立ったときに大きくふらつきます。
居間を出ると、座って私を待ちます。
ミーヤの先へ行って、洗面所で待ちます。
 

妻は、
お風呂場は寒いからと、
敷物を延べ、その上に座蒲団を敷いてあげました。
座蒲団と敷物の間にホッカロンを2つほど入れました。
座蒲団にのって、ミーヤが洗面器のぬるま湯を
飲もうとしますが、
飲むことができません。
私は座蒲団の上に胡坐をかき、ミーヤを斜めに抱いて、
ぬるま湯を脱脂綿にしみこませ、口を湿らせてあげます。
 

朝、起きてきた妻がミーヤの身体を撫でて、
「こんなに身体が硬くなってしまったよ。骨がごつごつしている。
脱水が進んでいるよ、可哀想に。」
と、肩を震わせて泣いています。
 
妻が電話で、I先生に相談をしました。
電話を終わった妻に、
「もっと、はっきりと先生に言わないと。。。」
と言うと、
「じゃあ、あなたが言って。。。私には言えない」
今度は私が言うことになりました。
動物病院へ電話をすると、
先生は、
「明日6日、午後会議が終わったら4時までに帰ってきているので、
電話をください。」
と言うことになりました。
 

午後4時に電話をしました。
 

我が家でのミーヤの生活をのべました。
「ここ9月からずっと、ミ
ーヤに苦しみだけを与えているだけの私達。
辛くて辛くて。。。ミーヤを泣き泣き世話をしています。
早く楽にさせることは出来ないのでしょうか。
やせ衰えても、
水を飲みたいと喉の渇きをいやそうとお風呂場へ通います。
こんなミーヤを見ているのは、辛くて辛くて。。。」
私も電話口で泣きました。
 

先生は、静かな声で。。。ゆっくりと話しました。
「安楽死も一つの選択です。
ミーヤちゃんは、もう十分に生きてきましたね。
よく頑張ってきました。
楽にしてあげましょう。
それも、大事な選択肢の一つですよ。
明日、12時の午前中の診察時間が過ぎたら
いらしてください。」
 

私たちが呼ばれ診察室に入ると、
ミーヤは
全身麻酔されたようです。
数分で心臓が止まると説明を受けていましたが。。。
20分ほど時間が過ぎても、
ミーヤの心臓は止まりません。
 

「ミーヤちゃんは、心臓が強い子なんですね。
食事も摂らないで、水も飲まないで、頑張ることができたんだ。」
聴診器を外しながら、先生は呟きました。
 
12時45分、ようやくミーヤは安眠しました。
しばらくの間、先生と今までのミーヤについて
話をしました。
ジローとミーヤの2匹の猫が、
先生に本当にお世話になってきたことを実感しました。
夫婦で、先生に改めてお礼を言うと、先生が
「今日は、私の好意からしたことですからね。。。」
と言って、会計をしてくれませんでした。
私達は先生の好意を強く感じました。
 

妻と帰りの車の中で話しました。
「ミーヤの弔いが終わったら、
ミーヤのお礼をしにI動物病院へくるようだね」

 



 
ミーヤは、21年もの長い間、私達のペットとして、我々を癒してくれました。
2人の娘たちが独立してから、
夫婦の会話はミーヤのことばかりでした。
 

動物病院から戻って、今度は動物霊園で火葬をしなければなりません。
幸い、車で
15分ほどのところに動物霊園があります。
 

箱の中にペットシートを敷きました。
その上に、
大好きだったピンクのバスタオルでミーヤをくるんであげました。
生前、好きだったペットフードをタオルの周りに入れてあげました。
妻は庭へ行って、ミーヤが食べていた麦の葉を積んできました。
それも、箱の中へ入れてあげました。
 

 

妻が車が動き出すときに話しかけてきました。
「あなた、落ち着いて運転してね」
「大丈夫だよ。」
「でも、気持ちが高ぶっているから。。。心配。。。」
 

動物病院へ無事着きました。
 

動物霊園で、最後のお別れです。
 

「ミーヤ、長い間、本当にありがとう!」
お焼香をしながら、
私は声に出して、ミーヤへ感謝の気持ちを伝えました。
 

(出窓で、お昼寝のミーヤ・平成26年5月)
 

<余話:6-21:水が飲みたい:終わり>