錦眼鏡余話4:No159
猫3匹:その2
 
娘が連れてきた2匹の猫は、性格がまるっきり違います。
 
「さくら」は、メス猫です。
大変気まぐれな猫です。
また、人懐っこい猫です。
ときには、頭を撫でろと、手を伸ばして催促をします。
 
「さくら」は、時に五月蠅いほど鳴くときがあります。
そんなときは、かまって欲しいときです。
そうかと思うと、ぐっすり寝込んで、
掃除機をかけても、少々音を立てても眠りから覚めません。
 
ベッドに腰をおろすと、「さくら」が頭を撫ぜてとやってきます。
私の顔を見上げて、お猿さんのように鳴きます。
「さくら」は、犬歯が抜け落ちているようです。
イルカのような細かな歯が数本見えるだけです。
眼の上瞼が真っ直ぐなためか、歌舞伎役者の顔立ちです。
 
 
引き寄せて抱っこをすると嫌がって、すり抜けます。
 
最近寒くなってきたためか、「さくら」は私の膝の上に乗ってきて
前足を折りたたみます。
時どき、見上げて鳴きますが、声は聞こえません。
口パクをしているようです。
 
歯がないせいか、
「レトルト」(固形ではなく、缶詰のように柔らかい)が大好きです。
年寄り猫のミーの「レトルト」を分けてあげると、お皿を舐めたように食べます。
 
反対に、「ルー」は、おとなしい猫です。
我が家へ来た当時は、私が娘の部屋へ入ると、
急いで物陰に隠れたものです。
隠れる場所は、ベッドの下や出窓のカーテンの陰、部屋のカーテンの陰、
猫ハウスの中などです。
私がいる間は、絶対に出てきません。
 
娘には良くなついて、寝るときは枕元へもぐりこむそうです。
 
娘が勤めへ行っている間、トイレをきれいにしたり、水を取り換えたり、
部屋を掃除したりと、猫の世話をしていても慣れてはくれません。
よほど、人間に対して、怖い思いをしてきたに違いありません。
いじめられたか、痛い思いをしてきたかのどちらかでしょう。
娘に聞いても、「さあー」と首を傾げるだけです。
 
2匹の猫が我が家へ来たのが、昨年の12月末。
それから、娘が引っ越していったのが、今年の8月終わり。
 
娘がいなくなった頃から、「ルー」の気持ちに変化が出てきました。
 
妻には、からだをなぜてと催促をしているそうです。
 
朝、部屋のカーテンを開け、雨戸をくくりに行くと、
「ルー」が出てきて机の上へ乗って、私にすり寄ってくるではありませんか。
 
 
トイレ掃除をしている私の後ろへ回り、からだをすり寄せてきます。
 
人前では絶対に食事も、水も飲まなかったのに、
朝1番にくんだ水を、「早く飲みたいよ。」というように鳴きながら
私の足元へとんでくるようになりました。
 
ベッドに腰をおろした私のもとへ来て、犬のようにクンクンと匂いを
嗅いでいます。
頭をなぜて、ひょと持ち上げてベッドの上へのせてあげると、
私の腕やからだに自分のからだをすり寄せるようになりました。
 
「さくら」が9月20日(土曜日)、娘に引き取られていきました。
猫駕籠の中で、もの悲しく鳴き続けました。
 
私が近くの駅まで娘と「さくら」を車で送りました。
「さくら」は、ずっと鳴き続けました。
「そのうち、草臥れて静かになるわよ。」
娘は今までの経験からでしょうか、心配していないようです。
川崎市までは、1時間半くらい電車に乗るそうです。
 
娘を送って、帰ってきた家は、急に静かになった気がしました。
 
「ルー」は、10月中旬に引き取りに来るそうです。
「ルー」までいなくなると、もっと寂しい気持ちになりそうです。
残されたミーは、いよいよ介護や介助が必要になっていきます。
 
「さくら」がいなくなって、1週間が過ぎました。
 
妻とお茶を飲みながら。。。会話を交わしました。
「家の中が静かになったね。」
「ミーもルーも静かだから、孫(さくら)が帰ったような感じね。」
「さくらは元気にしているかな?」