錦眼鏡余話4:No128
データの寿命:No2 

そのうち、パソコンの容量が大きくなりだしました。
同時に、映画などの大容量のものを録画保存するために
外付けハードディスクが出回るようになりました。
 
最初のうち、最大が500ギガバイト(GB)ぐらいだったのが
どんどん大きくなって、今ではテラバイト(TB)の時代になっています。
私も1テラバイトの外付けHDD2台、持っています。
 
量販店などに行くと、
3テラバイトや4テラバイトが主流になりつつあるようです。
 
この先、HDDの大容量化がもっと進むのでしょうか?
それとも、新しい記憶媒体が発明されるのでしょうか。
 
かなり前の新聞記事に「延ばせデータの寿命」というタイトルで、
消えない記録媒体への新技術が紹介されていました。
 
今、地球上に残っている記録で古いものは、
スペイン北部の「アルタミラの洞窟」に残る壁画が有名です。
これは、一万年以上も消えない記憶媒体と言えます。
「アルタミラの洞窟」は、中学校や高校で習いました。
ユネスコの世界遺産に登録されているそうです。
 
有名なロゼッタストーンは、
1799年にナポレオン・ボナパルトがエジプト遠征に行った際、
フランス軍兵士によって発見されたと言われています。
場所は、ナイル川のデルタ地帯にあるロゼッタ(港湾都市)でした。
 
どういう経緯かは知りませんが、本物のロゼッタストーンは、
現在イギリスの大英博物館に所蔵・展示されています。
大きさは高さ1メートルちょっと、幅約72センチで、重さ760キロも
ある花崗閃緑岩で出来た石柱です。
 
ロゼッタストーンは、高校時代の世界史で勉強しました。
石の表面には、同じ文章が3つの言語で書かれているそうです。
古代エジプト語の神聖文字「ヒエログリフ」と民衆文字「デモティック」、
それにギリシャ文字です。
ロゼッタストーンにより、古代エジプトの「ヒエログリフ」が解読されたことは
大変有名です。
 
石にかかれた文字や絵は、保存状態がよいと、
万年以上の間、消えることなく今の世に伝えられています。
石は素晴らしい記憶媒体と言っていいでしょう。
 
さて、日本では、どうでしょうか。
 
正倉院の中に保管されているものには、
工芸品だけでなく、膨大な正倉院文書があります。
奈良時代を知ることを伝える貴重な文字情報もあります。
 
正倉院文書は、長い年月、歴史のなかで忘れ去られていました。
ところが、
江戸時代後期のひとりの国学者が、写経文書の裏側を利用した
文書の重要性に注目して、復元するために整理をしました。
 
写経文書の裏側に記録されていたのが
奈良時代の戸籍や正税帳などの記録だったのです。
正税帳(しょうぜいちょう)とは、
律令制のもとで国司が毎年太政官に対して提出する帳簿の1つです。
律令制国における正税の収支決算書です。
当時の地方政治・財政を把握するためのもっとも基本的な資料の1つです。
 
写経で使った紙の裏を使ったのですね。
紙が大変貴重な時代だったからです。
 
こうして偶然にも、
8世紀(約50年間)、奈良時代の戸籍や正税帳などの貴重な資料が
今日まで残ることになりました。
 
正倉院の御物や宝物は、
記憶媒体として一千年以上と長く保存されています。
 
こうしてみると、
科学技術が格段に進歩した現代社会において、
記憶媒体の保存年数はそれほど進歩していないようです。
ちょっと、不思議に思われます。
 
こんにち、ようやく消えない記憶媒体の新技術の開発が進み始めています。
そのいくつかを紹介したいと思います。
 
まず、慶応大学のK教授らによる
「デジタルロゼッタストーン」と名づけられた新技術です。
多数の半導体メモリーをシリコン酸化膜の中に閉じ込め、
腐食を防ぎます。
データを鉄道やバスのICカードのように無線で読み取り、
摩耗を避けるそうです。
理論的には、1千年ほどの寿命だそうです。
2020年には、DVD約60枚分の容量が、
千円程度で実現できると言われています。
 
こうした技術の開発で、気をつけないといけないのが、
データの再生機械が一千年後もあるかということです。
 
「データの寿命◇その1」で述べたように、
私は自分の子ども達の幼い時の8ミリを見たくても
再生機械(映写機)がないために見ることが出来なくなってしまいました。
 
◇データの寿命◇その3へ続く