錦眼鏡余話3:No96
クロマグロ 


ニホンウナギと同じようにクロマグロも、
完全養殖ができないものかと、
大学や水産試験場などで模索が続けられていました。
インターネットで調べてみると、クロマグロのは、
1年以上前に完全養殖に成功していました。
 
近畿大学がクロマグロを卵から孵化させて大量に育てる
「完全養殖」に成功しました。
また、その商業化も始まっていました。
世界で初めて完全養殖に成功した近畿大学とT商事が
手を組み、世界市場へと売り込みを始めたのです。

昨年11月、長崎県・五島列島の西端・福江島で
約1万4千匹のクロマグロの幼魚の出荷が始まりました。
沖合に浮かぶ直径30メートルの養殖用いけすには、
生後半年、体長30pほどの幼魚が泳いでいます。

作業員が、この幼魚を傷つけないように竿で1匹ずつ
釣り上げていきます。
2か月かけて3つのいけすを空にし、長崎県や鹿児島県の
養殖業者に販売していきます。
養殖業者は更に体長1m(30キロ超)になるまで、3年間いけすで育てから
市場へ出荷するそうです。

クロマグロの稚魚は従来は海で捕っていましたが、
現在では、近畿大学が育てたクロマグロの卵から孵化させた
ものを育て幼魚として売り込んでいるのだそうです。

クロマグロは衝突に極端に弱いため、
それを防ぐためにいけすを円くすることでぶつからないようにしています。
クロマグロが高速で回遊してもいけすが壁にならないようにしました。

また、稚魚はストレスに弱く、密集状態では育たないことも分っていました。
大量養殖では、大型いけすが幾つも必要になります。
近畿大学は、資金力のある企業との提携が不可欠でした。

クロマグロの漁獲量の世界的な減少が
クロマグロの完全養殖化を後押ししたともいえます。
「海のダイヤ」とも呼ばれたクロマグロが
大西洋や太平洋で資源を守るために漁獲枠に制限が設けられました。
クロマグロの完全養殖が是非とも必要になってきました。

長崎県北部の玄界灘に浮かぶ鷹島沖に直径20mのいけすが並んでいます。
いけすから1m超に育ったクロマグロがクレーンで船に引き上げられています。
大手商社のNがようやく今年から黒字になり、事業が軌道に乗ってきたそうです。
販売先は、デパート内の鮮魚店やすしチェーンです。
鷹島沖のいけすの本マグロ(クロマグロ)は、
高値がつく本マグロ(クロマグロ)のトロや赤身になるそうです。
今年2013年の出荷は、約6千匹、300トンを見込んでいます。

クロマグロの完全養殖が実現すると、大手の会社が一斉に参入し始めました。
T商事、M商事、K極洋、食品のNハムなどが相次いで乗り出しました。
昨年の養殖量は、9600トンになり、
クロマグロ(本マグロ)の刺身や握りが食卓や寿司屋で身近になってきました。

ここで、農林水産省が養殖に使う幼魚(ヨコワ)の保護に乗り出しました。
近畿大学が成功させた卵から孵化させて育てたクロマグロに、
ますます熱い視線が注がれてきています。

「完全養殖」と呼ばれる循環の輪がしっかり確立されると、
資源が守られるだけでなく、日本食が世界的なブームの中で、
日本の養殖業も世界を相手に活路を見いだせるのではないでしょうか。