錦眼鏡余話3:No109
炭素繊維 

日曜日、のんびりと新聞に目を通していると、
炭素繊維の需要が急速に広がりつつあるという記事が
載っていました。
タイトルは、「軽く、強く、さびない夢の素材」です。

炭素繊維は、
1970年代にゴルフクラブ、釣竿、テニスラケットなどの
スポーツ用品に採用されています。
今では、
飛行機や自動車などの乗り物、さらに風力発電の翼までと、
様々な用途に使われるようになってきました。
また、パソコンの筐体(外側の箱のような部分)などにも
炭素繊維が使われるようになってきました。

炭素繊維は、
軽くて強く、錆びないという特徴をもった材料として
注目をされています。
炭素繊維とは、ほぼ炭素だけで出来た材料です。

一番に挙げられる長所は、「軽くて強い」ことです。
鉄と比べると、比重は約4分1だそうです。
強さは、なんと約10倍もあります
また、変形のしにくさも、鉄の約7倍だそうです。

次に挙げられる長所は、
熱に強く、錆びず、化学的に安定していることです。

炭素繊維は、アクリル繊維を原料とする「PAN系」と、
石油精製時の副産物などから作られる「ピッチ系」が
あります。
市場では「PAN系」が多くを占めているそうです。

白色のアクリル繊維の糸を、酸素を断った環境で
1,000度以上まで蒸し焼きにして、炭素以外の元素を
吹き飛ばします。
出来上がった繊維は、炭素が六角形の網目状に
つながっています。
太さは、髪の毛の10分の1ほどの細さです。
これらを束ねて織物にしたり、
樹脂に浸してシート状にしたりして製品化します。

「ボーイング787」では機体の約半分に、
炭素繊維と樹脂からなる複合材料(CFRP)が使われています。
航空機では軽いため燃費が良くなるだけでなく、
錆びの心配が減るので、機内の湿度を高められたり、
強度を生かして窓を大きくしたりとメリットが生まれてきました。

三菱航空機が開発中の国産初のジョット旅客機の尾翼に
複合材料(CFRP)が使われる予定だそうです。

全世界の炭素繊維の需要は、2013年現在の4万8千トンから
2020年には14万トンまで増えると予想されています。

今後、利用が大きく伸びると見られているのは、
自動車への応用です。
炭素繊維協会の試算によると、
約1.4トンの乗用車の車体に複合材料(CFRP)を使って3割軽くできれば、
大幅に燃費が改善されるそうです。

炭素繊維の利用が拡大していくと、課題になるのが廃材のリサイクルです。
世界的に研究が進められているそうです。
日本でも経済産業省の補助事業として、
廃材から粉末状の炭素繊維を再生する試みが進められています。
今後、廃材の分別や再生品の使い道など
循環サイクルの確立が今後の課題と言えます。

炭素繊維の今後の研究・開発は、日本に期待が寄せられているそうです。
炭素繊維の工夫は、日本のお家芸だと言われています。
(すぐに技術が真似されてしまうのが心配)
 
競争の激しい国際社会の中、世界シェアトップの日本が
今後も世界をリードしていく分野でありたいものだと願っています。