巨大ウイルス
新聞の科学欄の「ウイルスは生物か」という大きな活字が
目に飛び込んできました。
読み始めると、少々難しい記事でした。
分かり易く説明してみたいと思います。
この夏の米科学誌「サイエンス」の表紙をウイルスの写真が
飾ったそうです。
写真は、フランスのマルセイユ大学のクラブリ教授らが見つけた
巨大ウイルス「パンドラ」だそうです。
このウイルスは、ウイルスとしては桁外れに大きく、
従来の生物の常識を揺るがす発見だと騒がれたそうです。
ウイルスとは何か?
生物とは何か?
これまでの常識を揺るがしかねない巨大ウイルス「パンドラ」。
クラブリ教授らが命名した巨大ウイルスの名前です。
このウイルスは、どんなパンドラの箱を開けようとしているのでしょうか。
今まで、生物は大きく以下の3つに分類されていました。
★原核生物〜細菌・らん藻など(明確な核を持たない単細胞生物)
★古細菌 〜メタン生成細菌・超好熱菌など
(高温、高圧、高塩分濃度といった極限環境を好む)
★真核生物〜核膜に包まれた核を持ち、人間やほとんどの
動植物が属する
そして、
「ウイルス」は生物ではないと分類されていました。
<ウイルスと細菌のこれまでの常識は>
細胞がある(細菌)
細胞がない(ウイルス)
エネルギーを作れる(細菌)
エネルギーが作れない(ウイルス)
増殖は、
自己分裂(細菌)
寄生しないとできない(ウイルス)
光学顕微鏡で見える(細菌)
電子顕微鏡が必要((ウイルス)
従来、
ウイルスは細菌よりはるかに小さくて濾紙(ろし)も通り抜ける、
だからこそ人類は正体をつかまえることができず、
長らくインフルエンザや天然痘などのウイルス感染症に
苦しめられてきました。
ところが、そんな常識を覆したウイルスの発見が相次ぎました。
最初に発見されたウイルスに、細菌によく似たと言う意味で
ミミ(mimic)ウイルスと命名されました。
クラブリ教授らが他の巨大ウイルスの追跡に乗り出し、
ついに巨大ウイルス「パンドラ」を発見しました。
「パンドラウイルス」は、チリ中部の河口と、
豪州メルボルン近郊の浅い池の底で見つかりました。
とちらも、単細胞生物のアメーバーに感染し、
人間には害はないらしいです。
楕円形で、長径が1マイクロメートル(マイクロは千分の1ミリ)、
遺伝子の数が2500個以上ありました。
最も小さい細菌「マイコプラズマ」より10倍も大きく、
遺伝子の数は5倍になるそうです。
上記のミミウイルスは、電子顕微鏡で見ると、
生物に似つかわしくない正多面体をしていたそうです。
ウイルスは、自らたんぱく質を作れず、
他の細胞に寄生しないと増殖出来ないことから、
細胞などの生物とは異なる存在と考えられてきました。
ところが、クラブリ教授らがミミウイルスを調べていると、
わずかだがたんぱく質を作る遺伝子が確認できたそうです。
巨大ウイルスの発見をきっかけとした「生物か、無生物か」の論争は、
生物起源への問いかけに繋がっていきます。
東京理科大のT准教授は、2001年に、
「上記の真核生物の細胞核の起源は、
はるか昔にウイルスが持ち込んだとする」論文を発表しました。
これは、
ウイルスのおかげで今日の人類があるといいうことになります。
生物が今まで大きく3つに分類されてきましたが、
4つ目に「巨大ウイルス」が仲間入りする現実味を帯びてきたと言うのです。
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