錦眼鏡余話3:No104
新聞から学ぶ:5 

超深海調査
 

海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」が
世界一周の調査の旅を続けています。
 
海域調査といえば資源争奪のイメージがありますが、
今回の旅は、アメリカやイギリスなどの海外研究者と共同で、
深海の極限環境に生息する生物の謎を追うと言う
知的探求の旅だそうです。
 
その成果をお伝えします。
 
「しんかい6500」は、
研究者1人とパイロット2人の計3人が定員だそうです。
毎分40メートルのペースで潜っていきます。
「しんかい6500」が潜航を始めると、
海の色はどんどん濃くなり、やがて漆黒の世界になります。
 
今回の旅は、熱水噴出孔や超深海など、
極限の環境に住む生物を観察し、
生命の限界と起源に迫るのが目的だと言われています。
 
「海洋・極限環境生物圏領域」のK領域長は、
「2500mより深い海や南半球の海の大半が未調査のまま
残っている。それを埋めるため、今回は南半球の深海を
中心に、4か所の海域を調べる」と述べています。
 
「しんかい6500」は、支援母船「よこすか」に積み込まれて、
今年1月5日に神奈川県横須賀市の母港を出港しました。
1月末から3月にかけてマダガスカル島沖のインド洋での
調査に入りました。
 
この場所は、2001年、アメリカのチームが硫化鉄で覆われた
殻や鱗を持つ黒色の巻貝「スケーリーフット」を発見したところです。
その後、「しんかい6500」も、2009年に同じ海域で調査をし、
硫化鉄でコーティングされていない白色の「スケーリーフット」を
採取するのに成功しました。
 
今回の調査でも、白色と黒色の巻貝「スケーリーフット」を採取し、
「よこすか」の船上で飼育しており、硫化鉄コーティングの形成過程や
目的の解明が進むものと思われます。
 
この海域の海底から噴き出す熱水は、高濃度の水素を
含んでいるそうです。
太古の地球時代、誕生したばかりの生命のエネルギー源は、
水素とされることから、この熱水噴出孔付近の生物を調べて
初期の生命の進化を探ろうと云う訳です。
 
「しんかい6500」は4月〜5月にかけて、
マダガスカルの次にブラジル沖の大西洋に潜航しました。
本格的な科学調査は初となる海域だそうです。
そこは、高さ5000mを超える海山がそびえ、
南極と北太西洋からの海流が流れ込む複雑な環境だそうです。
 
ここでは、海底の地質の調査もしました。
大陸の痕跡とみられる花崗岩が見つかり、
「アトランティス大陸を発見か」と世界のメディアに
取り上げられたそうです。
海に沈んだ年代が大きく違ったそうですが、
知的なロマンに満ちた調査をアピールできました。
 
8月に帰国して充電作業を行い、
10月からは、世界で2番目に深いトンガ海溝での調査を
行う予定だそうです。
 
6500mより深い海は、地球上でたった2%しかないそうです。
「しんかい6500」なら、ほとんどの海域を調査できるので、
今後の活躍に大いに期待したいところです。