錦眼鏡余話3:No101
新聞から学ぶ:2 

「浜松ホトニクス」

宇宙の謎に迫る最先端の観測を支えているのが
浜松市にある電子機器メーカー「浜松ホトニクス」です。

肉眼で見える最も遠い天体のひとつに「アンドロメダ星雲」があります。
数年前、私は小笠原で仕事をしていたとき、
秋の夜空を飾るアンドロメダ星雲(銀河)を肉眼で見つけ
心の癒しを覚えたものです。

アンドロメダ星雲のほぼ全体を一度の撮影でとらえた画像が
今年の7月末に公開されました。
230万光年(光速でも、230万年かかる距離にある)もの彼方に
ある巨大な銀河が一枚の画像に収まりました。
画像を拡大しても、銀河内の星々が鮮明に見えたそうです。

ハワイにある国立天文台の「すばる望遠鏡」に搭載した高性能カメラは、
従来のカメラの7倍の広さを写しだせると言われています。
これは世界最大の広さだそうです。

この大幅な性能アップに貢献したのが、
カメラの「目」にあたる電荷結素子(CCD)です。
この電荷結素子(CCD)をつくったのが「浜松ホトニクス」です。
ライターほどの大きさのCCDを従来の10倍以上の116個取りつけ、
カメラの画素数をなんと「8億7千万」にまで高めたと言われています。

「浜松ホトニクス」の光をとらえる最先端技術は、
宇宙の謎に迫る世界中の巨大望遠鏡の観測を支えています。

宇宙の至るところにありながら、
いまだ観測されていない正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」があります。
暗黒物質を追う国際研究チームの観測でも、
浜松ホトニクスの光センサーが重要な役割を果たしています。
今年の4月、国際研究チームは、とうとう暗黒物質の存在の可能性を示す新しい
物理現象を観測することに成功したそうです。
国際宇宙ステーションの観測装置に据えられた5種類の光センサーのうち
3種類が浜松ホトニクスの特注品だそうです。

もう一つ、
物質などのもとになる「素粒子」があります。
「ヒッグス粒子」は、万物に重さ(質量)を与えたとされているものです。
物質の大もとになる12種類の「素粒子」のうち唯一見つかっていない
素粒子がヒッグス粒子です。

理論的には存在するとされながら確認ができなかった素粒子「ヒッグス粒子」を、
今年3月、スイスの欧州合同原子核研究機関(CERN)がついに存在を
突き止めました。
この実験装置に使われた光センサーも、浜松ホトニクス製です。

「浜松ホトニクス」は、「光は我々の仕事」を「社是」として、
光に狙いをさだめて技術を磨いてきた会社です。
1953年に創業された会社です。
創業したのは、世界で初めてブラウン管テレビを写しだして
「テレビの父」と呼ばれた高柳健次郎氏の門下生でした。

それから60年、浜松ホトニクスは国内外で一千億円を売り上げ、
3000人を雇う企業に成長しています。

浜松ホトニクスは、宇宙観測などの最先端機器だけでなく、
医療器具にも応用され、陽電子放射断層撮影(PET)や
コンピューター断層撮影(CT)用の光センサーの
世界シェアの7〜8割を占めると言われています。

この会社を支えているのは、
儲けの半分以上を研究開発につぎ込むというこです。
「必ず技術は真似される」との考えから、
世界最先端の技術を追い続けるためにです。

《未知の「光」が秘めた可能性は、新興国などにおされ気味の
日本のものづくりに差し込む光明に見える》と、記者は結んでいます。