錦眼鏡余話2:No79
ピョンピョン虫
 
まだ、妻の母親が健在だったころ、
茨城の久隆(くりゅう)から野菜などを小包にして
よく送ってくれたのもでした。
私の給料がまだ安かったころ、我が家の家計は
送られてきた小包に助けられたものでした。
宅急便を運んできたおじさんが、軽そうに持ってきたので、
そのつもりで受け取ろうとすると、
おじさんが「重たいですから、どこにおけばいいですか?」と
言うほどでした。
腰を痛めそうに重たい小包でした。

たくさんの野菜の中に、よくカボチャが入っていました。
妻が半分に切ろうとしても切れないほど、
硬いカボチャもありました。
包丁がカボチャに食い込んで、
妻の力では、抜くことも切ることもできず
困ってしまったことも何回かありました。

母の小包の中のカボチャに、時々ですが、
ピョンピョン虫が入っていました。
「ピョンピョン虫」とは、妻と私が勝手に付けた
虫の幼虫の名前です。
幼虫のくせに、まるでコメツキムシ(米搗き虫)のように
ピョンピョンと飛び跳ねるのです。
妻はもうパニック状態になって、大声で私を呼びます。
私もあまりいい気持ちがしないので、
その虫の幼虫をろくろく見もしないで始末していました。

今日(2013年4月5日)、買い物へ行った妻が、
立派なカボチャを買ってきました。
カボチャは半分の大きさで、
全体にラップがかけられていました。

まな板の上でカボチャを切ろうとした妻が、
そばに突っ立って見ていた私に
「売っているカボチャには入っていないけれど、
ピョンピョン虫って何だろうね。
キイ子さん(妻の母親の名前)からのカボチャには、
ときどきピョンピョン虫が入っていたね。
いったいあの虫は、何だったんだろうね。」
と聞いてきました。

私はすぐにパソコンに向かい、インターネットで調べてみました。
「カボチャ」「実の中の虫」「ぴょんぴょん跳ねる」で検索すると、
たくさんヒットしました。

丸ごとのカボチャを切ったときに、
ぴょんぴょん跳ねる虫についての問い合わせがたくさん出ていました。
この虫の幼虫は、「カボチャミバエ」の幼虫なんだと解りました。

ミバエと言えば、
「チチュウカイミバエ」と「ウリミバエ」、「ミカンコミバエ」が有名です。
この3種は、農業害虫の代表的なミバエです。
世界的な大害虫といってもいいくらいです。
ミバエといういからハエの仲間です。

カボチャミバエの幼虫は、1p〜1.3cmほどです。
成虫のカボチャミバエは、1pほどの大きさで、
ミバエ特有の透き通ったきれいな翅をもっています。

8月頃、カボチャの実が出来たての小さい頃に
カボチャミバエの雌が卵を産み付けます。
小さいカボチャは、外側がまだ固くなっていません。

卵は大きくなるカボチャの中で孵化し幼虫(蛆)になります。
幼虫は、カボチャの中心部を食べて育ちます。

自然の中なら、
食べられたカボチャは腐って地面に落ちます。
幼虫(ピョンピョン虫)は跳び出して土に潜ります。
土の中で蛹になり、そのまま冬を越すそうです。
次の年、
夏になると、羽化した成虫:カボチャミバエ(ピョンピョン虫)は、
またカボチャに卵を産み付けると言うサイクルになるわけです。

7月中に、カボチャの実がしっかりと出来上がっていると、
カボチャミバエも羽化していないので食害されないそうです。
また、早くカボチャが大きくなると、カボチャの実が硬くなり、
カボチャミバエも産卵できなくなるそうです。

勝手な推測ですが、カボチャミバエを退治する農薬もある
ちがいないと思っています。

インターネットでは、カボチャミバエの幼虫が
どうやって跳ねるかをビデオに撮って流しているサイトもありました。
幼虫は、
蛆(ハエの仲間だから蛆ですね)は、体をまん丸くしたかと思うと、
次に一気にそれを伸ばします。
まるで、発条(ばね)・ゼンマイがはじけたように跳びます。
台所の流しや床へパラパラと落ちます。

これでは、どこの奥さんもパニック状態になるのが当たりまですね。