錦眼鏡余話2:No46
宇宙ごみ 

「衛星脅かす宇宙ごみ」
ー開発・実験の「置き土産」2万2千個ー

上の2行は、科学記事のタイトルです。

旧ソ連の人工衛星「スプートニク」以来、
人類による宇宙開発が始まって半世紀ほどが経っています。

ここにきて、宇宙空間に浮かぶ「宇宙ごみ」が爆発的に増え、
宇宙空間はごみ問題の解決が急務となっているそうです。

「置き土産」2万2千個と書きましたが、
この数字は、大きさが10cm以上のものを指している数字です。
10cm以下のものを入れたら、この数字はもっと大きな数字になります。

10cm以下の「置き土産」でも、何とかしないと大変なことになります。
それは、わずか1pのアルミ球でも、軌道上を秒速10キロ程度で
地球上を周回しているので、拳銃の弾丸よりはるかに大きい
破壊力をもつと言われているからです。

これら「宇宙ごみ」は、2つの方法で観測されているそうです。
1つは、低い軌道を周回している「宇宙ごみ」の場合。。。
地上からレーダーを使って追跡しているそうです。

もう1つは、高度3万6千キロの静止軌道の「宇宙ごみ」です。
これは地球の自転と速度が同じため、地上から止まって見えます。
そこで、天体観測のように望遠鏡で観測するそうです。

2つの観測でも、地球の裏側は見えないので、
追跡・観測するには世界的な観測網が必要になってきます。
現在のところ、地球全体の観測網を持っているのは、
アメリカとロシアだけだそうです。
それも、10cm以上の物体に限られています。

日本の衛星は、
アメリカの情報に頼って「宇宙ごみ」との衝突を回避しているそうです。

宇宙空間は、軍事実験場でもあります。
かって、アメリカと旧ソ連が人工衛星を使った軍事実験を繰り返しました。

2007年には、中国が高度約865キロにあった自国の衛星を
地上から弾道ミサイルで撃ち落とす軍事実験をしました。
このときに出た10cm以上の「宇宙ごみ」は、2600個を超えたと言われています。

事故も起きています。
ロシアの通信衛星(運用停止)とアメリカのイリジウム衛星が2009年に衝突し、
10cm以上の破片約1300個が新たに「宇宙ごみ」となりました。

このまま、「宇宙ごみ問題」を放置し続けていくと、
破壊の連鎖によって爆発的に「宇宙ごみ」が増え、
大量の宇宙ごみで宇宙が使えなくなる日が来ると言われています。

宇宙ごみは誰が掃除すべきなのか。。。
国連に「宇宙空間平和利用委員会」があり、宇宙に関する決まり事を決めています。
その承認は全会一致が基本だそうです。
宇宙空間は軍事競争・軍拡の場でもあります。
世界の先進国が宇宙でも、このまま自国の利益優先をしていると、
「ケスラー・シンドローム」(宇宙が使えなくなること)も現実味を帯びてきます。

今年6月に始まった「宇宙空間平和利用委員会」(国連)の議長国に
日本が初めてなりました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の堀川技術参与が議長になりました。
日本が「宇宙ごみ」問題の解決に大きな役割を果たして欲しいです。

「いつか宇宙開発の障害になると分かっていながら、
宇宙ごみを放置すれば、ある日突然宇宙開発が限界に突き当たるだろう」
JAXA未踏技術研究センターの特任担当者の重い言葉です。

自国の利益優先に走ることなく、
世界各国が、宇宙は人類の共通の財産であるという認識に立ち、
責任を持ってきれいな宇宙空間を後世に残すよう努力してほしいです。

(2012・7・16)